批評と感想の狭間

借りぐらしのアリエッティ

「借りぐらし」は日本人から見たら窃盗にしか見えないんだけど、ヨーロッパだと金持ちが貧乏人を救うのは当然だという考えがあって「借りぐらし」で通る、ということなのだろうか?「借りぐらし」という言葉に関するこの疑問は、わざと家政婦にどろぼう呼ば…

サマーウォーズ その2

―現在の、ひょっとしたら問題大ありかもしれない日本の家族というものを、なかなか肯定する気になれないような世の中で、どうエンターテイメントとして肯定するか。―サマーウォーズ公式ガイドブック P131 細田守監督のインタビューより 上図は、サマーウォー…

サマーウォーズ

来来来来来とサマーウォーズ 昨日今日と田舎を題材にした作品を続けて鑑賞する機会に恵まれた。来来来来来とサマーウォーズである。同じく田舎を題材にした作品ではあるが、両者の田舎に対するまなざしは正反対の位置にあった。来来来来来において田舎は泥臭…

三国志

落ちこんでいたってどうしようもない、映画を見にいこうと、三國志を見てきました。レッド・クリフPartIを観に行った人なら分かるでしょう、上映前の予告編で流れていた作品です。 夜19時のマイナー映画、マイナー劇場とあって、席はガラガラ。私を含めて1…

ef - the latter tale

美少女ゲームの4類型 かつて、ONEという永遠の作品があった。かつて、Kanonという奇跡の作品があった。かつて、みずいろという普通の作品があった。かつて、かつて、かつて……。そして現在の私は美少女ゲームというジャンルに食傷している。自分の好物を一週…

プレイヤーの経験値について

メタ物語の作品には、メタ物語中の物語から脱出するためにはメタ物語の構造を理解しなければならない。その手助けとして本来はリセットされるべきキャラクターの記憶を消さないでおく、という法則が見て取れる。これはつまり、(ゲーム)プレイヤーの経験を…

メタ物語と物語

東浩紀(以下、東)はもっぱらメタ物語志向>物語志向的な面ばかりに目を向けているが、これらにも物語志向>メタ物語志向の構造が取り入れられていることを指摘したい。 そもそも、何故「シナリオ分岐型アドベンチャーゲームの形式を採用しつつ、同時に恋愛…

秒速5センチメートル

少女との別れ、あの日の偶像だけを追いかけてかつての少年は生きてきた――いつもの新海誠作品のテーマは健在だ。前作との違いは「ある朝、僕は新鮮な気持ちが消えてしまっていることに気づいた」という台詞に全て表されているだろう。作品を重ねるにつれて、…

ef - the first tale of the two.〜美少女ゲームのテレビ化・ビデオ化〜

去年あたりから従来のエロゲの表現枠を飛び出した作品が出始めた。一つの志向はアニメーション手法の導入だ。Nitro+『デモンベイン』とage『マヴラブ』に顕著なロボット・アニメーションへのオマージュから始まり、Overflow『School Days』やLeaf『フルアニ…

ef -a fairy tale of the two. 〜第一章〜

エロゲ、その中でも泣きゲーと呼ばれるジャンルの基本的構造は単純です。まず、欠落を抱えているヒロインがいます。第一段階―共通シナリオ―で描かれる日常生活の中でヒロインと仲良くなり、お話程度のコミュニケーションができるようになります。ほのぼのと…

リフ=ラフについての考察(ピアニッシモ ネタばれ)

pianissimoでキーとなるのが人を狂わせる装置『リフ=ラフ』である。リフ=ラフとは「繰り返し苛立たせる」という意味を持ち、また、「つまらないもの」という意味も持つ。ここでは劇中におけるリフ=ラフについて考察を加える。 pianissimoのシナリオはヒロ…

美少女ゲームの物語構造について・2

過去のエントリで説明したように、水平型は共通ルートで主人公と各ヒロインの関係を描いたのちに各ヒロインの個別ルートへと分岐する。水平型において共通ルートの割合は4割〜6割であるが、ほぼ全編が共通ルートの作品も存在する。そのような作品群をここ…

美少女ゲームの物語構造について

今回は、美少女ゲーム*1の物語構造を各ヒロインごとに用意されているシナリオの関係性に注目して二種類に大別してみようと思う。一つは各ヒロインごとのシナリオが物語世界に対して等価である水平型(図1)、もう一つはシナリオ間に上下構造が存在する垂直…

Scarlett感想に添えて 〜ねこねこソフトの時代〜

ねこねこソフトとの歴史を振り返って 思えば、どこぞの掲示板で『銀色』が良いと聞いたのがねこねこソフトとの出会いでした。評判通りの出来に感心した瞬間を見計らったかのように『みずいろ』の発売。ちまたでは見え見えなシナリオだとか言われてますが、ね…

智代アフターにおける家族像、ジェンダー像

はじめに 以下の文章はネタバレになっているので未プレイの人は読まないことをお奨めする。 智代アフターは前作CLANNADで結ばれた朋也と智代の同棲生活を描く第一幕、智代の弟・鷹文、捨て子のとも、鷹文のかつての恋人河南子が加わった五人の疑似家族的生活…

リアライズ 批評と感想のはざま

水無月徹&高橋龍也という往年の名コンビが久しぶりに美少女ゲーム業界に投下したソフト。大作(デモンベインだっけ?)にぶつかっていたので回避したが、今年PS2で発売された移植版を購入した。世間の評価は決して高くないが、「プレイヤーが意中の女性…

CODE AGE COMMANDERS 批評と感想のはざま

ラジアータ・ストーリーズその他に絶望してもうRPGなんてしないと思った。その一方で、そんな決意は一ヶ月もたないんだろうなあとも思っていた。結局のところ後者の欲望の発言が理性を駆逐した。先週買ってきて昨日終わらせた『CODE AGE COMMANDERS』はARPG…