ef - the first tale of the two.〜美少女ゲームのテレビ化・ビデオ化〜


去年あたりから従来のエロゲの表現枠を飛び出した作品が出始めた。一つの志向はアニメーション手法の導入だ。Nitro+デモンベイン』とage『マヴラブ』に顕著なロボット・アニメーションへのオマージュから始まり、Overflow『School Days』やLeaf『フルアニ』のような本編がアニメーションそのものの作品も生み出されている(ソニア『VIPER』シリーズは萌えの系列に繋がらないのでここでは除く)。このような変化を促した要因は二つある。第一に声優の起用、第二にオートモードの搭載だ。結果、美少女ゲームは「読む」メディアから「見る」メディアに変化を遂げた。この変化を美少女ゲームのテレビ化と呼ぼう。


アニメーションが美少女ゲームに影響を与えたことはよく指摘されている。美少女ゲームのテレビ化の一形態としてアニメーション手法が導入されたのは一種の先祖返りと言えるかもしれない。しかし、美少女ゲームはアニメーションだけに止まらず、他の手法も取り入れてきている。アニメーション手法よりも早くから見られるその手法とは、ドラマ(あるいは映画)の手法だ。C's ware『EVE burst error』、Nitro+Phantom of Inferno』、KID『Ever17』。これらはそれぞれ探偵もの、スパイもの、パニック映画の手法を取り入れている。


今回取り上げる『ef -a fairy tale of the two.』は恋愛ドラマだ。美少女ゲームで物語の駆動機関としてよく使われる「奇跡」「願い」を排除し、人々が交わる際に生まれる「思い」だけで物語を組み上げている。『ef -a fairy tale of the two.』のテーマ、若者の成長、幸せと生きること、を表現する上で、美少女ゲームの定石の一つを捨てて人間関係の描写に特化したことは評価すべきだろう。例えば、自分の彼女が泣いていたことを友人から聞いた主人公は「いいんだよ」「泣かせた分だけ、後で優しくして、許してもらうんだから」と答える。ここには泣きゲーが引き起こす激しい感情の起伏はない。だが、それゆえに、人が生きていること、繋がっていくこと、を表せているのではないだろうか。


『ef -a fairy tale of the two.』は恋愛ドラマとしてよく出来た作品だが、本作の革新性はそこにはない。美少女ゲームのビデオ化、これこそが本作で明らかになった美少女ゲームの進化の先にある一つの答えだ。


美少女ゲームバックログ機能が搭載されて久しい。当初は文字だけを回想できたバックログはやがて、任意に音声も再生できるようになった。それでも、バックログはあくまでバックログだった。文章xと画像iを表示する場面Aから文章yと画像jを表示する場面Bへ移ったとしよう。これまでの美少女ゲームではバックログから文章xを表示した際に表示される画像は画像i、もしくは、バックログ専用の画像kだった。ところが、『ef -a fairy tale of the two.』においてはバックログから文章xを表示したときの画像は画像iである! 素晴らしいことに、セーブから場面Bを呼び出した場合でも場面Aに遡ると文章xと画像iが表示される! これはまさに、ビデオデッキに搭載されている巻き戻り機能だ。


かくも素晴らしい巻き戻し機能だが、CG枚数が1ヒロインあたりギャラリー画面数にして19という非常識な数を誇る本作だからこそ光る機能だ。そこが残念ではある。通常の作品では予算と期間の関係で小さな表情差分を作るのが精一杯のため、巻き戻し機能でプレイヤーを魅せることは難しい。


まとめ。声優の起用、オートモードの搭載により美少女ゲームのテレビ化が促進された。また、バックログ機能が本作において巻き戻し機能に進化し、美少女ゲームのビデオ化を実現した。