落ちこんでいたってどうしようもない、映画を見にいこうと、三國志を見てきました。レッド・クリフPartIを観に行った人なら分かるでしょう、上映前の予告編で流れていた作品です。
夜19時のマイナー映画、マイナー劇場とあって、席はガラガラ。私を含めて10名もいないという燦々たる状況です。真ん中の特等席に座ることができたのは嬉しいことですが、新宿トーアの経営状態は大丈夫でしょうか。
余事はさておき、感想に入ります。
これぞ映画
この作品は伏線の仕掛け方が絶妙です。例えば冒頭のシーンに、若い女性の敵将が老境の趙雲に目を向けて「今日こそ趙雲を捕らえてみせる」と決意を語るシーンがあります。この女性は誰だ? まだ若いの彼女が「今日こそ」と何故表現できるのか? 幾つも疑問がわいてきます。このような一見何気ないシーンや台詞が後々になって意味を持ってきます。なるほど、あのときの台詞はここで生きてくるのか!と思うことしばしばです。冒頭から終劇まで無駄と思われるシーンがありません。シーンの一つ一つが伏線となっていて、なおかつ複雑ではなく、綺麗に着地する。実に見事です。
停止-躍動のダイナミズムはレッド・クリフには遠く及びませんが、圧縮したストーリーの中で繰り広げられる殺陣も見ものの一つ。ほら、レッド・クリフって自軍が優勢なときは味方が強くなって、敗勢のときには味方が弱くなるじゃないですか。しかも、名だたる将軍連が相手するのは雑魚ばっかり。その点、この作品で趙雲の相手となるのは敵の将軍で、常に殺るか殺られるかの緊張感が楽しめます。敵を斬れば血しぶきが飛び、棒で殴られれば内出血する。映画のリアルってのはこういうものではないですか?
三國志に対する愛もこちらが遥かに上です。いえ、レッドクリフに愛がないとは言いませんが、無理くりだったり行き当たりばったりじゃないですか。その点、本作はよく練り込まれていて、三國志ファンなら誰でも知っている台詞が伏線になっているところがうまいところです。なにより、趙雲の副官が訒芝で、唯一に近い名前のある敵将が韓徳というのが素晴らしい。彼らのシナリオへの織り込み方も文句なしです。
もちろん、難もあります。オリジナルキャラが鬱陶しいこと、東西南北が異次元で繋がっていること(北伐に向かった先と、新野の前線基地が同一地点ってどんだけ〜)、時代が10年単位で飛ぶこと(長坂の次は漢中王、その次は北伐)などがあります。これらの欠点はありますが、104分の上映時間の間、全く飽きさせることのなかった力強い作品です。
レッド、クリフなんかレンタルする暇があったらこいつを見ろ!