ねこねこソフトとの歴史を振り返って
思えば、どこぞの掲示板で『銀色』が良いと聞いたのがねこねこソフトとの出会いでした。評判通りの出来に感心した瞬間を見計らったかのように『みずいろ』の発売。ちまたでは見え見えなシナリオだとか言われてますが、ねこねこのキャラクターで一番好きなのはなんといっても日和です。回想と幻像の繰り返しによる盛り上がりは、見る物=私を泣かさずにはいられません。そして、今考えると不思議なほど沢山出たドラマCD&キャラクターソング。特に、キャラクターソングが3巻も出るなんて、他の作品にはありません。コミケ会場のSBPブースで、ねこねこソフトさんブースがあるのに、SBPブースでも別のCDが売っているのはどうしてよとぼやいたこともいい思い出です。
そして、ファンへの感謝というかファンが感謝しても足りない、『ねこねこファンディスク』。PS2版の音楽も収録した音楽DISC、戯画というメーカーを知ることも出来たバルドバレねこ、今ではお約束ともなったえちぃモード、ボリューム満点の作品でした。
そして『銀色-完全版-』の発売。こいつにも高音質の楽曲を納めたCDが付いてきています。イスナという新キャラクターを加えて、従来伝聞として知らされていた銀糸の誕生秘話が開かされました。
これ以降は正直言わせていただくと、ねこねこさんの作品は微妙な出来でした。日常に拘りすぎて物語の幅を狭めてしまったように思います。『みずいろ』と同じテーマを追求した『ラムネ』は『みずいろ』以上のものを出すことが出来ず、私には『みずいろ』の紛い物としか受け取れませんでした。アニメ版『ラムネ』はそこそこ楽しめたので、『みずいろ』を忘れることが出来ればちゃんとした作品ではあると思うのですけどね。
麻雀はルール知らないので飛ばして、『120円』は引っ越しの都合でおかえしCDを受け取れなくなったので、PS2でプレイさせて頂きました。『サナララ』も含めてねこねこが”ちょっといいお話”の方向に微妙に転換して、これからを期待したところにねこねこ解散の知らせです。
他社がコミケで出すOSTやドラマCDは2500〜3000円。対して、ねこねこは毎回ドラマCDを1000円で出してきました。懐具合が厳しくなるのは当然です。公式掲示板でもねこねこの懐具合の寂しさを聞いていましたが、このときが来るとはこれっぽっちも思っていませんでした。
解散にあたって、自らに貸した”ふつう”の枷を外して、やりたい作品を作ると宣言したねこねこソフトの最終作『Scarlett』、始まります。
Scarlett
シナリオ
序章では”日常”の側から”非日常”の世界に憧れる人間・明人が”非日常”への切符―物語のヒロインでもあるしずか―を通じて、憧れが実体化したような人物・九郎へと出会うまでが、第一章と第二章では”非日常”に属する九朗たちの活躍が描かれます。30分〜一時間ごとに物語をまとめていることが物語のスピーディさをうまく印象づけています。ここでは九郎やしずかは”非日常”の世界に存在する完璧な存在であり、悩みなど一つも持たないかのように描かれています。
第三章は”日常”から”非日常”への憧れを描いた第二章までと逆さに、病気という”非日常”に生きた人間の”日常”への憧れを描いています。「サンドイッチと熱い紅茶、フルーツと菓子を少しだけ入れて……そして、手を繋いで帰ろうね」 そんな”日常”を目指していたはずなのに、一歩間違えてしまったがために”日常”を手にいられなかった人間たちの物語をゆっくりとした筆跡で描いています。
第四章では序章〜第二章のテンポの良さを生かしながらも、第三章のテーマの延長線上に、高級諜報員という”非日常”に生きる九郎とエレナの”日常”への憧れが描かれます。
”非日常”と”日常”。人はそのどちらかを選ぶしかなく、二つの世界に存在する境界線―障壁―にとどまることはできません。最後には”日常”を選んだ明人と”非日常”を選んだ九郎。二人が接触することは不可能な行為。しかし、互いへの世界への郷愁が、僅かながらも二人を繋いでいることを示して、物語は終わります。
『みずいろ』以降、一貫して”日常”にこだわってきたねこねこソフト。あえて”非日常”へとシナリオを踏みながらも、その奥には”日常”が息づいていた、ねこねこソフトらしい作品でした。ちょっとボリューム不足かなと感じますが、スピーディさを出すにはこのくらいでいいのかもしれません。
音楽
ねこねこソフトと言えば、Keyに劣らない音質を誇るメーカーです。今作ではElements Gardenさん、I'veさん、ebiさん、Barbarian On The Grooveさん、SENTIVEさん、Dreaming Rabbitさん、猫野こめっとさん、Blasterheadさんが参加、期待を裏切らない品質に出来上がっています。無圧縮の特典のサントラ盤は更に高音質で、これだけでも5000円の価値があるといっても過言ではないでしょう。ただ一点、Before dawnがOST含めノイズ入っているのがマイナス点です。
おまけモード・FINAL
久しぶりのみずいろメンバーが出てくるショート、おかえしCDから始まりようやく完結した新ぽんショートも見所ですが、やはり、ねこねこ信者ならば逃せないのは『みずいろ』に乗せてファンへのメッセージを伝えている「ちょっとしんみり」編と、涙無くしては聞くことが出来ない声優陣からのコメントでしょう。離れ得ぬよう、流されぬよう……この想いが消えないように、ぎゅっと手を繋いで。ねこまたソフトの設立を待ってますよぅ!
ねこねこ解散に思うこと
Scarlettのプレイ中、ねこねこソフトとつきあった7年弱の歴史を振り返ったりもしました。そりゃあ、私が26歳になっているわけですよ。elfとAliceSoftから入って、Leafのビジュアルノベルシリーズから生まれた、ONE〜AIRと連なる”泣けるシナリオ”の流行。その流れに位置するねこねこソフトが遂に解散の時期を迎えました。”泣けるシナリオ”の名の下に業界が統治されていた時代の終わりでしょう。
美少女ゲームという一つの宇宙も島宇宙に分離していて、キャラクターの魅力で力ずくで押し通るAugustが人気になってたりとか、『つよきす』のように次から次へと新ジャンルが出てくるわ、去年は言葉様による首ちょんぱやマリア様の劣化亜種であるおとぼくとか、一瞬だけ盛り上がるだけのネタ作品しか出てこなかったりして、でも話題になっているからにはなんとかついていこうとしたんだけど、まあこんなこと言ってる時点で「おじさんもうついていけませんよ」状態ですな。正直、このままエロゲ趣味引退とか思うこともぼちぼちあったりします。今回の解散で、一つの時代が終わってしまったと、そう感じています。けどまあ、今年は既に豊作状態だし、ケロQもとい枕の『H2O』『サクラの詩』もあるみたいだし、しばらくはこの趣味を続けるのです。