美少女ゲームの物語構造について・2
過去のエントリで説明したように、水平型は共通ルートで主人公と各ヒロインの関係を描いたのちに各ヒロインの個別ルートへと分岐する。水平型において共通ルートの割合は4割〜6割であるが、ほぼ全編が共通ルートの作品も存在する。そのような作品群をここでは単一型と呼ぶことにする(図1と図2を参照)。
単一型の作品の特徴は上で述べたようにシナリオがエンディング直前までほぼ一本道で進むことだ。ヒロインと主人公は同一の運命に絡め取られ、物語の最後まで行動をともにする。各ヒロインの個別ルートもあるにはあるが、プロローグからエピローグまでの流れはほぼ同じである。主人公を待ち受ける運命が過酷である場合、実質的にヒロインが一人しかない場合など主人公が選択肢を選べる状況にない場合には単一型の物語構造になる。戦闘アクションもの、あるいはミステリものが多い。代表的な作品としては『Phantom of Inferno』『カルタグラ』『車輪の国、向日葵の少女』などがある。
「この個別ルートが駄目なら他のヒロインの個別ルートが」ということができないため絶対にプレイヤーに矛盾を感じさせてはいけない。構造的に一つの物語に登場するヒロインの数が最大となり、複数ヒロインの書き分けが必要となる。技法として『プリンセスうぃっちぃず』や『世界ノ全テ完全版』のようにメインヒロイン以外の描写をばっさりと切り捨てることも有効であるように思える。物語の舞台を幾つか用意してプレイヤーに飽きさせない工夫も必要だろう。
以上、今回のエントリでは水平型の特殊型である単一型について解説を行った。