「ゲームと暴力事件発生率の関係性」の記事について

元記事 論文(PDF)

論文の前提事項

ARIMAモデル

時系列において平均値が時間的に変動する場合に変動値を取り除いて相関関係を調べる手法

SARIMAモデル

時系列において平均値が時間的に変動し、かつ季節的な変動が見られる場合に変動値を取り除いて相関関係を調べる手法

Ljung-Box

モデルへの適合度を判定する方法

分析の内容

分析その1 1978年から2011年までのビデオゲームの売上と暴力事件の経年変化

相関関係は認められず

分析その2 2007年から2011年までのビデオゲームの売上と暴力事件の月次変化

1年のなかで売上が最高となる12月について、加重暴行の減少と有意な相関関係が見られる。

分析その3 2004年から2011年までの暴力的なゲーム(GTAシリーズおよびCoD)に関する検索数(Googleトレンド)と暴力事件の月次変化

発売の二ヶ月後に加重暴行および殺人の減少と有意な相関関係が見られる

分析その4 暴力的なゲーム(GTAシリーズおよびCoD)の発売と暴力事件の月次変化

発売から三ヶ月後および四ヶ月後に殺人の減少と有意な相関関係が見られる

解説

分析その1とその2については、暴力的なゲームも暴力的でないゲーム(テトリスなど)も含めた分析、その3とその4については暴力的なゲームに絞った分析となっています。分析その2については売上が最高となる12月はサンクスギビングであることを考えると疑似相関である疑いがあります。

分析3は飛ばして分析4です。元記事では「発売後には最大三ヶ月ほど犯罪率が低下する傾向にあることも伝えられています」とあります。もしかして誤訳なのではないかと英文の記事を確認したところ、同様の記述(In fact, "aggravated assault... and homicide showed a decrease after the release of these games," and the effect last for up to three months.)がありました。しかし、先に記したとおり発売から「三ヶ月後および四ヶ月後」に「殺人のみ」有意ですので、記者が誤解したか著者が先走ったものだと考えられます。

元記事にある「ビッグタイトルが発売することにより犯罪率が減少しているのではと言った推察」は論文で確かめられたものではありません。ただし、ゲームにより犯罪が増えるという相関関係が見られなかった点については論文で確かめられています。