そもそも、差別的言動を規制するためのできた国際的合意のパリ原則は、「警察や出入国管理当局などの行政機関による差別を規制する」ものだった。それが日本に持ち込まれたら、なぜか一般国民に規制対象を広げるヘイトスピーチ規制になり、言論弾圧法になってしまったと。
— 荒木俊三 (@toshizoaraki) 2015, 5月 21
本来のパリ原則は「公権力による人権侵害を迅速かつ簡易に救済する、公権力から独立した人権救済機関」を設置することだった。 http://t.co/JVkx5yvjXc 例えば警察の横暴から国民を守るとか。それがいつの間にか、一般人を取り締まる人権擁護法案やヘイトスピーチ規制に化けた
— 荒木俊三 (@toshizoaraki) 2015, 5月 21
というツイートを見たのですが、1990年代の国連における人権思想の基準からすると制限が厳しすぎるように思えます。そこで、国連開発計画(UNDP)と国連高等弁務官事務所(OHCHR)が2010年12月に発表したToolkitから国内人権機関(NHRIs)の定義について確認しようと思います。
Toolkitの内容
P2 1.2 国内人権機関とは? 国内人権機関の特徴
- 強力な国家内人権保護システムの中心要素
- 国際人権規範を国家に適用するための理想的な中継機構
- 中核的な人権の保護(core protection)に取り組むために極めて重要である
- 開発途上の民主政府を人権と紐付ける中継機構の中核
P7 1.2.7 国内人権機関と特定グループの保護
P32 3.国内人権機関の役割と責任 3.1 保護
- 人権状況の独自調査。
- (準管轄力を持つNHRIsの場合)個々の苦情の取扱い
- 裁判外紛争解決メカニズム
- 法廷助言者として裁判所に対処することを含め、裁判所または専門の裁判所を通じて救済や救済を求める
など、国家レベルでの人権の監視
P34 3.2 人権の促進
- 公式化と教育の取り組みの展開を支援
- 人権状況の公表
- メディアなどを通じて国民の意識を高める
P35 3.3 国家機関(政府、議会、司法)への助言
P37 3.4 国際人権法の国内への組み込み
P38 3.5 他のNHRIsおよび地域人権ネットワークとの連携
P39 3.6 国際人権システムとの連携
P39 3.9 経済社会文化に関する権利に関する司法判断
- 強制立ち退き
- 原因なき解雇
- 医療、仕事、住宅、教育など
- 十分な食料と水のアクセスにおける児童差別
- 任意の一次レベルの教育の提供失敗
- 基本的な医療施設の提供失敗
- 貧困状態における住居は、安全性へのリスクであること
P55 4.3 Core Protection
OHCHRは特に次についてNHRIsをサポートします。
- 拷問、要約処刑や恣意的拘束の防止に関連する一般的な活動
- 拘留者からの苦情
- 拘留の監視
- 人権擁護者の保護に関する一般的な活動
Toolkitから見た荒木俊三氏のツイートについて
「公権力による人権侵害を迅速かつ簡易に救済する、公権力から独立した人権救済機関」「警察や出入国管理当局などの行政機関による差別を規制する」はToolkitにおけるCore Protectionに対応します。一方で、ヘイトスピーチ禁止法は国内人権機関が関与する特定グループのうち「国籍、民族、宗教的、言語的少数派」を保護するためのものであると考えられています。また、国内人権機関が既にあると仮定した場合には、国連人権委員会からはヘイトスピーチ禁止法を勧告されているためヘイトスピーチ禁止法の制定を目指すことになるでしょう。以上から、一般的にはヘイトスピーチ禁止法に国内人権機関が関わることは当然の成り行きと言えそうです。