第3回 ポルノ被害と女性・子どもの人権シンポジウム『子どもの日常を取り巻く性被害〜学校・ストリート・施設〜』 速記録 その5

橘ジュン氏へのQ&A

Q.少女たちの親族と関わる機会はありますか。親と関係機関を繋げることはありますか。
A.子どもから親に会って欲しいと言われる場合は子どもたちの親と会うこともあります。母親も悩んでいて誰かに話を聞いて欲しいと思っています。そういうときは友人の福祉司がやっているカフェに案内することがあります。問題を一緒に考えてくれそうな方なら連携したいと思っています。

Q.二十年前は夢のない子はいなかったのに何故生まれてきたのだと思いますか。
A.身近に格好いい大人がいないからだと思います。その子にとってこれは、と思える大人がいない。親の敷いたレールに沿って歩ける子は苦しまなければ、それはそれでそのまま行けば目標に繋がるかなあ。本当にしたいことがない、死ぬために生きているこが増えています。街頭アンケートなど、友達が横にいて答えづらいなかで死にたいと感じていると書いてくる子が多いという印象です。経済的に問題があるのかもしれませんが、枠からはみ出した人と出会い、そこで楽しそうにサラリーマンではない生き方もあるんだと、自分のしたいことホンネで向き合える時間が少ないのかな。社会人になりたくないのは社会、身近にいる大人のせいなのかな。と思います。

Q.家庭が崩壊したと言われる今、子どもの居場所は誰が作れるのか、その財源はどこから出すことになると思いますか。
A.子どもが行きやすい、子ども自身が上げた声を大人が一緒に作っていくことだと思います。居場所が必要だと思う子どもと一緒に作って行けたらと思います。財源は行政の社会資源を有効に使えたらなと思います。

金子由美子氏へのQ&A

Q.児童相談所養護教諭になりたいと思っています。子どもを守るためにどのようなスタンスでいるのでしょうか。
A.性教育に関しても昔は私も未熟で、子どもを傷つけてしまいました。脅しの教育といいますか、子宮を広げて赤ちゃんを掻き出す絵を見せられた子どもたちが真っ赤になって――というところからスタートしました。

子どもたちの人権・自立を一緒に考えていく。そんななかでセクシャル・マイノリティと出会ったりして一生学習しなきゃ、と思います。更年期障害だって更年期になってみないと分からない。まだまだです。生理が始まってから死ぬまで学習を続けていこう。そんな気持ちで卒業した生徒と川口こどもネットワークをやっています。


Q.子どもたちに性教育を行うことも大切ですが個人では限界があるのではないでしょうか。性知識を教える際にどのような配慮をしていますか。むやみやたらに教えると虐待に遭っている子が嫌に思うのではないでしょうか。
A.性教育をすぐに始めるわけではなく、まずは身体の学習から始めます。ひじとひざがどこか分からない、そんなところから性教育へと繋げていきます。個別指導もしています。私たちの勉強会の宣伝になってしまいますが、人間と性に関してのセミナーをやっています。性同一性障害デートDV、七尾養護学校問題など色々な方々と一緒に学習することで様々な立場の子どもへとアクセスすることができます。

それと、保護者当人が性教育を受けていません。母親一人の家庭で子どもにマスタベーションをやめろと叱ったケースもあります。保護者に働きかける。心と体の仕組みの話にさりげなく性の話をすり込ませる。セックスだけでなく人権、自立の教育もやります。性教育のなかで、子どもたちにとって性がエッチなことではなくなっていく姿を体験しています。

早川悟司氏へのQ&A

Q.養護施設における構造問題。性教育について。潜在化している性被害をどう顕在化させるか。男性被害者への支援。性暴力への対応。スタッフへの支援
A.まとめて回答します。私も元々は性的な話は苦手でした。同年代はまともな性教育を受けておらず、男同士のポルノの回し読みやクチコミの情報ばかり。当然、私たちの性的認識は歪んでいます。私は自分を疑うところからはじめ、金子先生の性教育の二泊三日のセミナーに参加しました。私は本当に気持ち悪くなってへろへろになりましたが、終わったらだいぶそれまでと意識が変わっていました。子どもに教える、諭す前に自分のゆがみを感じて勉強することが必要です。

施設の中ではプライベート・パーツを絵本を使って触らせたり見せてはいけない、被害があったら訴えて良いんだよと教えています。被害の訴えがあった際は子どもの負担を考えて聞き取りが一発で終わるよう記録を取って残すようにしています。その後の対応は年齢に応じて個別プログラムを立てるのですが、まだまだうまくやれていないと感じています。

総合司会 横田千代子氏 閉会の挨拶

先程養護教諭の金子さんも一生と言っていましたが私たちも学び続けることが必要です。このたび、産婦人科医で作る女性医療ネットワークの皆様と繋がることができました。

盗撮などを総括できる法律、性暴力禁止法が求められています。実際にノルウェーでは人身売買が減少している報告もあります。子どもの発達過程に応じた性教育、財政的支援の強化、私たちができることはいくらでもあります。

改めて、子どもたちが子どもらしく生きる権利を守れていないのだなと感じました。子どもたちの力では逃げることも生活することもできない。スウェーデンでは表現の自由よりも子どもの人権を大切にすることを重んじています。それに比べて日本はどれだけ子どもを傷つけているんでしょう。少年サンデー、先程楽屋裏で私も見させて頂きました。かつてはこんな本ではなかった、まるでポルノ雑誌と同じで、性の感覚はどうなっているんだと思っております。

私たちも性教育が必要だと思っています。女性医療ネットワークの皆様は声をかけて頂ければどこにでも行くと言ってくださいました。横の手をつないで性の人権に基づいた教育が必要です。本日はそのための光を見た思いです。

ここで中里見先生からご挨拶させていただきます。さきほどのカンパのご報告もあると思います。

中里見教授による閉会の挨拶

屋上屋根を重ねる形となりますが、閉会の挨拶をさせて頂きます。本日は160名以上の方にご参加頂きました。また、カンパを16万強頂きました。ありがとうございます。

本日は子どもによりそう立場から現場の違うパネリストからお話を頂きました。子どもが置かれている現実は寒々とした状況でした。子どもに夢がなくなっている。子どもが将来こうなりたいと思うことができない社会にしてしまった大人世代の責任だと感じます。子どもが声を挙げられないまま色々な問題を抱えているのも私たちに返ってくる言葉です。3.11の震災以降、7万人が今も家を失ってさまよっています。日本政府は全力でこの問題に取り組んでいるのでしょうか。

性被害、多数は女性と子どもが被害を受けますが、この問題について啓発本は出ていますが、現場で語られるようになったのはごく最近です。加害者を含めいかにサポートがないか、そのサポートを作るのはこれからです。今ある組織を変えていくのは難しい。私たちの会はポルノ・買春の問題に取り組んでいます。やはりポルノの存在が性教育を阻害していることが今回のシンポジウムで証明されました。ポルノが性を語ることを難しくしています。ポルノから子どもたちが性を学んでいます。ストリートに出ざるをえない子どもを食うのは性産業ですね。研究、婦人保護から始まったこの会も女性医療ネットワークの皆様という新しい出会いを迎えることができました。これも被害者の視点に立っているからできたことです。

ポルノや売買春の問題は広く、DV、セクハラの問題に埋め戻したい。ポルノや売買春の問題を孤立させては解決しない。様々の分野の活動をされる方々と互いに学びあい、ポルノ売買春の問題と性加害の結びつきを理解して下さった。そういう国民的議論、現実を知り社会的合意ができた。犯罪化なんかない手前の青少年健全育成条例ですらああいう形の議論になりました。単純所持を禁止しようとすればどうなるか明らかです。被害者の立場から国民的議論ができるよう様々な団体との連携が必要です。これまでのシンポジウムはその基盤となりました。この3年間で教育、医療の方と協力関係を築くことができ、少しずつ私たちは全身しています。来年のシンポジウムも予定しています。また来年のシンポジムでお会いできますことを楽しみにしております。