セックスワーカーの安全、健康、権利 ―― オーストラリアとアメリカの運動から ――

Mish Pony

Scarlet Alliance

全職員がsex worker(過去そうだった、を含む)*1 個々の州の活動を国レベルへとつなげる活動を行っている。オーストラリアは売春が非犯罪化されている州もあれば刑罰が課される州もある。

Criminalization / Licensing / Decriminalization

Criminalization。sex workに関連すること、たとえばsex workで稼いだ金で生活することや、sex workが行われる場所に立ち入ること、コンドーム所持なども禁止される。
Licensing。合法/違法が細かく設定される。コンドームを付けない性行為は違法であるとか、手袋を使わないマスタベーションは違法であるとか、住宅街の売春宿はNGとか。三ヶ月ごとに性感染症の検査を行っているが、頻繁に検査することが感染率を下げることにはならない
Decriminalization。上二つで警察の腐敗が起こっていることもあり、非犯罪化を求める。"Kirby Institute - Law and Sex wroker Health Study" 3モデル(Criminalization, Licensing, Decriminalization)の比較。非犯罪化した地域はsex workerの健康・権利を向上させるプログラムに対するsex workerの警戒心が和らぐ。非犯罪化したからといって性産業が増えるわけではない。*2 アジア系などの移住者を含め、sex workerの性感染症の感染率は一般女性より少ない。売春宿が住宅街にあっても影響はない。2015年〜2016年に規制すべきかを再検討したが、非犯罪化を据え置いた。

Trafficking

政府の物差しで「人身売買」をサポートした人が逮捕される。反人身売買キャンペーンは人身売買を過大に扱っている。実際の人身売買の規模は小さい。オーストラリアで人身売買の裁判は13件、その中で騙されて働かされた人は1〜2件。対処としては(売春の)非犯罪化がよい、警察に駆け込みやすい。"TO STOP TRAFFICKING -DECRIMINALIZSTION-" 英語が話せないため違法な環境で働いていると思われているが、移住者に対するアンケート結果では生活に満足しており、非移住者と変わらない結果が出ている。*3 自分でVISAを取った人が1/4、誰かに間に入ってもらった1/4の人は第三者に借金している。英語を話せないため、必要とするサービスを受けにくい

LGBTQ workers

レズと表明して働くとはどういうことか――差別、解雇――カムアウトは難しい。数は少ないが積極的に運動に参加している。

Peer Education Training

仲間内で性的に健康であるためにはどうすればいいか、税金の支払い方、性産業から出て行くにはetcを教える。UNや政府からもbest practiceだと言われている。12ヶ月以上の経験を持つ者をEducatorとして認定、表彰する仕組み。

Carol Queen

私たち一人一人が個人の快感を持つ権利と責任を持つと思っている。自分が許容できる範囲のものを、共感できるパートナーと、合意のもとで、何をしたいかしたくないかを明確に、どのような選択肢があるか調べる権利を持ち、性的な情報を知る権利がある。*4

sex positive

アメリカだと"Oh! Yeah! Love Sex!!"という人が多いが、そういうことではなくsexに関する多様性、Normalはないということ。自分と違う性的好奇心の人を批判・評価することではなくその逆、自分がどう考えるかに気づき自分でコントロールできる状態。私たちが住む文化についてcriticする力を持つ。sex negativeな社会では性的好奇心を持つことできず、クィアな人が自分らしく生きられず周りの人から尊重されることができなくなる

sex work, agency, porn

sex workとは、物やお金の代償としてsexやsex entertainmentを提供すること。自らが決断し、決断したことを実際に行うことができる状態をagencyと定義する。Pornは批判され議論されることが多いテーマ。セックスを見れること自体がショッキングな人もいれば、自分のセックスのやり方・自分が好むやり方でない時に不快感を覚える人、sex/genderの見え方が好ましくない/親密さが欠けている、ステレオタイプだと言う人、ポルノを見ている人が性的興奮を覚えること自体がいやな人も。ヘテロセックスがほとんど。昔は金のために作っていたが最近は変化が見られる。ポルノの定義を一つにまとめることは難しい。性的ファンタジーをサポートする方法の一つとしてのポルノもあれば、社会的教育的課題に向き合うものも。ポルノのほとんどがジェンダーステレオタイプを使っているが、すべてのポルノがそうではない。ポルノ産業に関わる人もいろいろ。露出したい人、金のための人、性的な冒険をしたい人、パートナーを喜ばせたい人。主流のポルノでは無理矢理やらさせる人は少なくなったがスマートフォンで誰でもポルノを作れるようになった。

feminist pornography

「ポルノに現れる人がagencyとしてポルノに出ているか」自分がしたくないsexに対して嫌と言えるか。安全な、自分が選ぶ手段で撮影が行われるか。このような関心に基づいて作られているのがfeminist porn。feministとpornが切り離されて使われてきた歴史から注意して使われる言葉。feminist pornの制作者はfair tradeにかぶせてこの言葉を使っている。女性がポルノを楽しむことについて重きを置いている。他のポルノと比べてperformerがどのような交渉を行ってポルノに出演したのかが撮影される。
ポルノに出演する人だけでなく、ポルノを見る人にもステレオタイプがある。ポルノはマスタベーションを連想させる、これがポルノに対して不快感を覚える要素の一つである。ポルノは主流社会ではメジャーでない、たとえばゲイがサポートを受ける場所でもある。ポルノが性教育になりうる――あたかもポルノがsex documentaryであるかのように語られることもあるが、もちろんポルノはメディアの産物。performerはアスリートみたいなもので、休みの日にはカメラに映るものとは全く違うsexをパートナーとしている。メディアリテラシーが必要だ。ポルノを性教育として扱うことは、カーレースを教習所の教材として使うようなものだ。

trafficking

人身売買はすべてsex workという見方をしてしまっている。異なるものとして扱うことが必要。強制されたsex work=>traffickingではない。性売買ではないtraffickingもある。国際レベルのanti-traffickingを訴える人の中にはtraffickingをより広くとらえて、ある地域から別の地域に移って働くことをtraffickingとする人もいる。もちろん誘拐や騙されて移動した人もいるが、移住を自分で選んだ人もいる。その区別をすることが必要。元々住んでいた地域ではsex workが認められないため、白い目で見られない場所に移住してお金を稼ぎ、出身地に戻って家を買うようなケースもある。sex workはworkである、というのは大事だ。

Q&A

Mish Pony

非犯罪化が取るべき第一のステップ。そのためには世間を教育しなければならない。そのためにメディアを使う、メディア業界の中にサポーターを作る、NGO特に党派がない所にサポーターを作る、リサーチと証拠に基づいたことを話す、相手の興味を引く話をする。
スウェーデン・モデルはsex workerの周囲に犯罪化が起こり、たとえば買春者を捕まえるために警察がsex workerを監視するようになる、果てはアングラ化。sex workerは被害者という考え方が根幹にある。sex workをやめても他の経済活動に移れるわけでもないので意味がない。
sex workやりたくない人を助けたい人は就労斡旋をするべきだ。

Carol Queen

同意を実証するのは難しい。Noと言っていなければOKと勘違いされている。ポルノが合意に取り組もうとしているのは「performerは同意していないだろう」と思われてきたから。
従軍慰安婦は世界中のsex workerが関心をもつ問題。個人がどれだけagencyを持っていたのか、様々な要素が絡んだなかで考えるべきで、拉致の有無のみに注目することに意味はない。経済的問題がなければsex workはなくなるという人もいるが、白黒を付ける考え方は有効でない。実際に経験した人に聞いて、どうすれば(agencyがない状況を)解決できるか考える。
アメリカでは児童ポルノを防ぐためIDや契約書へのサインが必要。業界としては、仮名や匿名でやりたい人もいる。日本のAV出演強要の話は同意がなかった場合のシチュエーションが法を変えるために使われている。
小児性愛に対して、どうやって子供への害を防ぐのかが主流の考え。セクソロシストとしては医療的介入は効果がなく、行動療法が有効なのではないか。欲望をファンタジーで解消させ実際の行動を防止する。たとえばペルソナ*5、大人が子供のふりをするポルノの分野もある。

*1:オーナーがいると労働条件向上など言いづらいし、オーナーのための運動と思われるから断っている

*2:何故かはよくわからない。人が増えすぎると一人あたりの稼ぎが減るため離れる人も出てくる、などが考えられる

*3:アンケートの7割は移住者、残り3割は比較のために非移住者

*4:ここらへん早すぎてメモが追いつかなかった

*5:カッ