第7回 平成28年度児童ポルノ排除対策公開シンポジウム

山本恒雄氏(性暴力救援センターSACHICO理事)*1

子どもへの性暴力とは加害者の優位性を確認させる行為。体罰の性的表現。
親権者・監護責任者が加害者の場合、DVや身体的虐待との相関が有意に高い。性暴力を受けた子どもは親密さと性的アプローチの区別ができず、自分のどこが悪いのか分からず無力感に陥る。
親権者・監護責任者以外からの加害行為は児童福祉法の対象外で、より外に出づらい。ネグレクトや放任の家庭環境下である可能性が高い。子どもは年齢が高くなるほどアイデンティティにかかわる侵害事件であると気付くようになり、結婚や出産できないというトラウマに陥る。
「平気、みんなしていること」という洗脳に被害者が疑問を抱いたり拒否すると、加害者からの抑圧が増す。
女子の非行は、非行の発生以前に性暴力を経験している者が多い。学校内・施設内の性暴力が見えていない。
柴田守「犯罪被害者を巡る諸問題」では、面識ありの性に関する法犯罪が40%、一方で異性から無理矢理に性交された経験のある女性は面識なしが20%。面識なしの加害者が暗数になっている。
性的搾取とは対人場面で生じる出来事の対価として性的行為をさせること。
再被害の防止と、大人になってからも含めた長期的な支援が必要

Q.悪意を持った加害者について
A.子どものすぐそばにいる人で、その人以外に子どもの面倒をみる人がいないとき、子どもがその人に頼った結果、最初はノーマークでも親密な関係のなかで子どもの性的成熟などが理由となって性加害が進行する。ネグレクトの対価としての性。
 性的プロセスとして性的表現や性的アプローチを行う子どもは出てくることは必然。それがネットになって、効率がよいからと悪意を持つ加害者が次々と対象を変えるかたちで被害が増える。加害者を事前に見つけ出すことが必要だ。ネットは人の最良の面と最悪の面を引き出している。

小西康弘氏(警察庁生活安全局少年課長)

児童の性的搾取等とは(平成28年3月29日付け閣議決定)児童に対する自己の性的好奇心を満たす目的又は自己又は第三者の利益を図る目的で、児童買春・児童ポルノの製造など、児童の性に着目した営業による児童福祉法違反(援デリなど)、これらに類する行為(場所提供、Webサイト開設も視野に入れていこうという趣旨)
第三次児童ポルノ排除総合対策(平成28年7月犯罪対策閣僚会議決定)
児童ポルノ事犯の送致件数、送致人員、被害児童数は年々増加している。コミュニティサイト起因の事犯が伸びている。児童買春はH24年を底に増加傾向
予防としてH25からサイバー補導を開始、去年は600名を保護した。警察官が子どもらしい会話になれてなくて、年齢を執拗に聞かれるなどしてバレるなどもある
いわゆる「JKビジネス」は風適法をならないように比較的ソフトな業態でH22,H23年から大都市圏で行われている。今年六月時点で全国300件のうち8割が東京・大阪・神奈川・愛知に集中している。無店舗型は実態を把握できていない。健全育成に支障があるのではないかという観点で労基法児童福祉法の対象にしている。業者は性行為を容認していないが、従業員が勝手に性行為を行うケースや従業員が性行為を強いられるケースがある。
女子高生を補導した方が将来に宜しいのではないかという観点でH27愛知県条例が成立、警視庁でも18日から条例案パブコメ中。
「東南アジアにおける児童の商業的・性的搾取犯罪捜査官会議」は来年には東南アジア以外も含めた民間、関連省庁を招いて性的搾取被害のセミナーへと展開する。
国家公安委員会警察庁)が調整する「児童の性的搾取等に係る対策の基本計画の策定」を年度末目処に策定予定。パブコメも予定。犯罪取締りよりも国民に全般の意識醸成を重視

Q.サイバー補導に関して子どもに警察であることがばれてしまったそうだが、どんな対策があるか A.子ども達の日常のやり取りを学ぶしかない。どこで警察官とわかった/わからなかったを集めていくしかない。進んでいる他県へ研修するなど
Q.児童をどうやって誘い出すのか A.警察官からの誘い出しは基本的に行わない。あくまで相手側の申出を受けるかたち
Q.買春事業者側への対処が必要だと思う A.出会い系サイトであれば書き込み=違法行為。それ以外は違法行為ではない。捜査の限界

藤原志帆子氏(ライトハウス代表)

設立12年目の団体。子どもに限らず性ビジネスの相談窓口を開いている。本日は「児童相談所における児童買春、児童ポルノ被害児童への対応状況に関する研究」をライトハウスなりに解釈して提案したい。
重い家庭環境の子どもが被害に遭っている現状。家庭環境、性教育が問題。
児童相談所のアンケートでは児童のためのカウンセリングやガイドラインなどが求められていることがわかる。性暴力被害の支援まで児童相談所で行うことは難しい。支援機関が求められている。韓国や欧米では専門の回復プログラムが生まれている。
この部屋(会場)から一歩外に出ると性暴力を許容する文化――AVが簡単に見れる環境、大学におけるレイプシーンなど、ある種の間違った情報――が浸透している。負けないような活動が必要。
秋田県では命の大切さや性感染症などの性教育を行うことで妊娠中絶を減少に至った取組がある。エビデンスベースの調査を行い効果のある政策を
「To Catch a Predator」により子どもを搾取するのは許せない!こんなに身近に罠があるなんて!という意識が高まった。先進国で日本は一番児童ポルノ禁止法の成立が遅かった。(児童ポルノ廃絶の)気運を高めて行けたらと思う。
社会で子どもの性を傷つけてはならない、JKビジネスとかなくしていくという国家の姿勢が必要であり、そのためには(世界一厳しい性的搾取を撲滅するための)法律が必要

Q.本音を言わないこともからどのように聞くのか
A.とても難しい。ネットを含め安心、安全な場所を作らなければならない。学校で性教育・予防教育をさせてもらうときは自分が性的な、もしくは虐待に関する言葉を恥ずかしがらずに言う。信頼されるためには何ヶ月もかかる。相談先も少ない

山口 修平氏社会福祉法人 児童愛護会 児童養護施設 一宮学園 副施設長)

児童保護システムを知ったのは大学になってから、子どもが知らないのは問題。
私、家族、親戚親友、知人……と関係が広がってゆく。虐待とは、私の体・時間・場所・物への侵入。ネグレクトとは私を取り巻く保護膜を親が作らないこと
「No」といえる練習が必要。

Q.性虐待を発見するためにどんなポイントに気をつければいいか。
A.小さい子どもは性被害の認知がなく、遊びのなかで再現したり性器を出したり、AVに出てくる言葉を使ったりする。高学年になると性被害であるとの認知が起きる。安全な施設生活、職員に対する信頼が必要。感染症という症状や、人との距離が極端に近かったり遠かったりする。特に女の子は第二次性徴が早い。性教育や子どもの権利を学ぶことがきっかけになる

有木 節二 氏 (インターネットコンテンツセーフティ協会 代表理事

ICSAの中心業務はアドレスリストの作成・管理。児童ポルノ流通防止対策専門委員会のガイドラインに従っていることを第三者検証委員会が検証している。違法有害情報には薬物・著作権侵害などもあるがブロッキングは限られた場合のみ認められるべきであることから児童ポルノのみを対象としている。今年7年目。昨年12月からハイブリッド方式のブロッキングを開始した。

Q.どうやってアドレスリストを更新するのか A.毎月来るリストに基づいて更新する。(サイトが移転した場合)報告が上がってこない限り更新されない。追いかけっこ。

*1:公式では愛育研究所 客員研究員となっていますが、こっちの肩書きの方が何故呼ばれたか分かりやすいと思うので