2016/7/2 シンポジウム『ポルノグラフィーと性暴力被害』メモ

直接界隈の話はなかったのでレポ的なものを上げる必要もないと思っていたのですが、年末なので上げときます。ほぼ半年前のことなので正確性は期待しないでくだしあ。

金尻カズナ氏*1

マークスジャパンを契機に*2更に電話相談が増えた。2016年は70件、6月は20件の相談
膣性交という究極のプライバシーを晒された。
SODクリエイトとCAのAV出演同意書を入手している*3。妊娠や性感染症は女優の自己責任という文言

伊藤和子

相談者は18歳〜22歳が多い。違約金というtermがよく使われる。メーカーとプロダクション間の契約―何本を何千万で―について女優が介在していない。プロダクションと対等な形で交渉できない。契約書にプロダクションが取ってきた仕事に従う義務、違反した場合は損害賠償。仮に労働契約とすれば雇用関係にあるが、しかし派遣のような契約になっている。どんな形の性行為を何回行うか事前に説明がない。著作権は―映画の場合と同様に―ワンチャンス主義で、一度印鑑を押すと効力は永遠で変更できない。比較的(過激でない)着エロから女優業をやらせて慣れさせることがある。出演を拒んだ女優の家まで(プロダクションが)連れ戻しにきたので警察に介入を求めたらなんと「あと2本出演したらどうだ」と言われた。2400万円の損害賠償を求められるとはいかないまでもうん百万のケースで払った人もいる。判決では*4委託契約となっていたが実体は雇用類似のケースであると認められた。契約だからといって意に反する性行為は許されない。民法ではやむをえない事情があれば契約を解除できる。中にはモザイクなしの無修正動画がカルフォルニアネバダ州から配信されるケースも。国民契約センターと話してきたが、契約書があるため強姦罪などでの立件は難しいと。内閣府には女性に対する暴力の一環として取り扱い公的なシェルターを使えるスキームを構築して欲しい。
マークスジャパンは罰金刑となったがどの範囲が問題とされたのか不明で残念。プロダクションとメーカーの関係をたどっていけばDMM,Amazon,TSUTAYA、そういうところこそ末端で人権侵害が起きないようスクリーニングや防止のプロセスを

森田成也氏

(AV違約金訴訟は)レイプした奴が金払えと言うようなもの。*5(PAPSは)わずか5名の男女で出発、はじめは取り上げられず孤独な闘い
twitterなどでは(相談件数)わずか100件でしょといった呟きが業界関係者から。被害者が相談するのは一部にすぎない。何十倍、何百倍もあるだろうというのが普通の発想ですね。*6ひどい被害さえなくせば「健全化」するのか。AVが発するメッセージ、人気があるジャンルはレイプ、痴漢、様々なセクハラ、排泄物だとか天井から吊す、強姦ものがかなりを占めている。実際に行われる性暴力が「演技」として行われるのが続くとすれば「健全」とは何か疑問
重要な内容があったと思うんですけど・・・・・・(長い沈黙)・・・・・生命身体を危害にさらし(以下省略)重要な視点だと思う。たとえば避妊せずに挿入するのはリプロダクティブヘルス・リプロダクティブライフを侵害する。
無理矢理潮吹きさせる、性器に手をつっこむ。怪しげな(撮影に対する)「同意」はおいといたとしても当事者の性的人格権を侵害する。同意があったとしても人権侵害であると考えている。ポルノは性暴力として断罪されるべき厚意が描かれている。やたらめったら激しく(ペニスを)出し入れする暴力的な性行為がほとんど。AVから発せられているメッセージは「女性は男性のオモチャにすぎない」。それによって男性は自信の性癖を形作る。性癖は社会的に形成される。AVがささやかでない影響を与えるのは常識的に考えて当然
更に、ポルノを繰り返し見ることでファンタジー(が生成されることだけ)で解決するのか。ポルノを見ることで(犯罪を冒す奴が出るとかネットで批判されることがあるが)誰もそんな単純なこと言ってない。日常の性的パートナーにとってポルノの影響がないと言えるか。(男性が)激しくピストンして(女性が)痛いと(訴えて)やめるようなシーンは描かれない。影響力皆無とはいえない。更に、弛緩、セクハラ、レイプものなどがかなりの割合のポルノを毎年何万本も見ている社会が女性にとって安全な社会か。ある民族や人種を奴隷として扱うことを是とする本やアニメが何万本も好んで楽しまれているとしたら従属的な民族は安心して暮らせますか。単純な人はポルノ多くても被害等系少ないというがレイプのカウントが少ないという問題、暗数(の多さ)、起訴される割合が低いことを考えれば単純には言えない。さておいたとしても、レイプ発生件数が少ないとして特定の人種や民族を非人間として扱うプロパガンダをわざわざ漫画、アニメで何万本も(作られるとして)一件でも従属的人種がレイプや殺されたとしたらプロパガンダの性だと思いますよね。人種問題だと人は反応するのにポルノは関係ないとされる。ちょっと考えてくださいと言い続けている。このことこそが問題。なぜ人種では正しい(判断をする)人がポルノでは違うのか。レイプは女性に対するプロパガンダと認識される社会がポルノを許すわけがないと考える。性暴力を娯楽としているものは許されるべきでない。
ポルノ禁止法作れという立場ではない。ポルノ被害防止法作れという立場でHRNと近い立場である。ポルノ禁止法作れといわないのは被害アプローチであるから。ポルノが道徳的によくないものだから(禁止しろ)という立場ではない。筆頭は強要、製作被害*7、盗撮、流通被害。ポルノが流通し続ける。たとえ完全に同意していたとしても流通させて欲しくないと思えば流通させないべきである。少なくとも性的な尊厳だから、この場合はストップされるべき。社会的被害は女性の地位、尊厳に対する侵害。もう一つは消費被害、日常生活においてポルノを一定の頻度で見ることで性的パートナーに被害が及ぶ。そのほかに存在被害がある。たとえ配布されなくとも、ビデオが誰かの手元にあって見られ続けると思うだけで苦痛、廃棄処分するべきである。子どもポルノは取り入れられていますね。

(AVを批判している時に)おおざっぱな話をして欲しくないと休憩時間に伊藤和子氏VS森田成也氏のバトル勃発。*8

Q&A

(金尻氏へ)
Q.30代〜50代のAV女優からの被害の声はあるか。また、相談はメール、電話どちらが多いか。本人からか、本人以外からが多いか。
A.やはり未成年者から成人になったばかりのラインが多いが30,40台の被害も深刻。是非とも相談して頂きたい。30,40台は初めからハードコアものが多い。熟女モノメーカーは応じてくれない。相談は8割以上本人から。初回は様子見として彼氏から相談しにくることもある。

Q.事前防止の対策は取られていないのか
A.本来あってしかるべきだが機能していない。自浄できなかった。全然クリーンでないことが裁判で分かった。早くやってください。支援団体はAV団体とは一線を引いて欲しい。社会福祉士などの第三者チェックなど。変なことを言うとプロ意識を持つほどうれなくなる「素人」を求めている。最初は300万だがどんどん下がっていく。


(伊藤氏へ)
Q.全てのAVは派遣法違反なのか
A.派遣先の行為が有害なら58条にひっかかる。メーカーが直接雇えばそうではない。プロダクションで交わした話がメーカーで尊重されていない。派遣自体を見直してはどうかと提案した。契約書のタイトルが労働契約でない場合、警察が踏み込まない。マークスジャパンでは踏み込んだ。判断基準はグレー。

Q.女優がメーカーの指揮監督下にないとされるために必要な条件
A.強い立場の女優もいらっしゃる。アメリカのエージェント制に習うなど

Q.川奈まり子氏の労働組合について
A.(金尻氏)判例的には警察に言えば訴追される可能性がある、というのは是非運用されるべき。ゲイビデオにはプロダクションがない。もともとはメーカーが(女優の)リクルートもしていた。何らかの事情でプロダクションが存在しないと成り立たないことが問題。川奈まり子さんが作っている女性の権利を守る団体、今のところは何ともいえない。被害なくなればいいが、それだけでは防げない構造的な問題がある。労働組合で救済される人もいるが、こぼれ落ちる人もいる。

Q.ジェンダー差を超えた提言を求めたい。
A.相談来たのは女性だけ。男女問わない問題で男性には光が当たっていない。男優の労働組合結成はうまくいかなかった。

Q.金銭が発生したら免罪されるというパワポ、金銭もらっても被害を訴えられるのでは
A.理論的に考えて金銭を渡していようがいまいが変わらないが、実務家としてみると警察はそう考えない。そういうことを突破するためにどうすればいいか一緒に考えて頂きたい。
(金尻氏)性行為の契約は日本では無効。ある意味、運用上の被害者救済。何故か日本では対価が発生すると無効化される。
(伊藤氏)AVすべて無効でもなくて、公序良俗無効判例もあるが、そうではない判例も。ケースバイケース。私は公序良俗違反をよく主張する弁護士だが、なかなか認められないケースが多い。一般条項であるのに変なこと言う弁護士だな、勝てる要素がないから言っているんでしょうと(判事に)受け入れられない。若手もなかなか民法90条違反と言わない。なかなか国際人権基準を民法に乗せない、そういった議論をしない風潮をなくして行きたい。

Q.派遣法違反は風俗や芸能プロにも波及するのか
A.風俗の研究はしてないので、派遣になっているのであれば波及するだろう。芸能界は派遣要素が強い。毎回別の現場でイレギュラー的。芸能プロは派遣法届を出していない。搾取的な問題が起こりやすい業務。若い女優ほど性搾取的になっていると思う。

(森田氏へ)
Q1.参考文献をあげてください
A.APP研本を2冊、PAPS本を1冊持ってきているのでお買い上げ下さい。もしもっと理論的に学びたいのであれば私が翻訳したマッキノン『女の生、男の法』を
(戒能氏)あと中里見さんの『ポルノグラフィと性暴力』

Q2.AVの種類として近親姦ものの存在が重要か
A2.ポルノが視聴者に与える影響は、自分の支配下にいる女性に対する親密感が重要。近親姦を(例に)入れなかったのは私の落ち度

Q3.森田氏はAV不要論?理想のポルノ製作があるとすれば?
A3.大部分はレイプetcを娯楽としているもの。不要というか人権上問題のものとそうではないものがあるのかもしれない。性的平等の観点から判断できるか。理想のポルノは難しい。文脈的に出演者がストーリー上その人の人格権が尊重され、相方の性的欲求により行われているのであればよろしかろう。
(金尻氏)理想のAV製作を審判する立場でもないが。主観によるものでお答えできない。森田さんの言うように性的侵害のないAVを見る権利がある。AVを全否定するわけでなく、そこで行われる人権侵害を問題としている。理想のAV製作は私たちとして考えられていない。

(全員に対する質問)
Q.家の中でのポルノ所持について法的規制はできるか。子ども時代に性的被害を受けた人が……
A.(伊藤氏)考えたことなかった。
(森田氏)私たちは消費被害と呼んでいる。子どもに見せることは意図的な虐待行為である。そういうことが一切無いのであれば規制は難しい。制作被害があるのであれば廃棄処分をさせることができるべき。京都の条例ありましたよね、児童ポルノ

Q.沖縄の地位協定のようなものではないから法整備はできるだろう。ネックは?
A.(森田氏)どういう法を作るかでネックが変わる。これまでのネックは事実が知られなかったこと。
(伊藤氏)被害事例が知られていなかった。女性に対する暴力として認識してなかった。AV被害と言うとビックリして話が続かないということ多い。報道されてきているのでやる気になって頂ける。表現内容については自主規制、殺人罪や傷害罪に該当するものに限定して社会的にディスカッションすることで次に進めていきたい。子どもポルノ*9には審査がない。映像倫は対象にしていない。事実ベースを元にした対策を。取り調べ可視化のようにメイキング動画を、最初から最後までカメラを入れるなど。その前(契約段階)の強要有無とプラスとして審査団体が審査するなど。昨日行った映像倫は小○生という表現はダメだと。18歳未満についても違法という前提があるので審査しない。18歳未満に見えるAVはメーカーが18歳以下であることを確認していると信じています、とのこと。以前は住民票で確認するなどしていたがコンプライアンス高まったのでしていないと。
(金尻氏)ネット社会に法律が追いついてない。ネット社会でヘイトスピーチがなされるというすごい時代にいきている。今日の日本においてAVだからと公序良俗に違反するとは言えない。(森田氏)公序良俗だけでAV全体に網をかけるのは難しい。性暴力を肯定したりするものは補足できる。(金尻氏)結局裁判官が判断するので……。伊藤さんは表現の自由を大事にする方なので巻き込まれて頂いてありがたい。(伊藤氏)刑事的規制と民事的な規制、表現規制のメカニズム。女性によるディスカッションをふまえなければならない。extremeなものは刑事、その前に人権救済が必要。人権を迅速に救済する政府から独立した機関がない。

まとめ

(戒能氏)日本全体の問題と感じた。性教育のみすぼらしさ。今回のような問題は絶対あってはならない。ただ、AV業界が頑張っただけでは社会が変わらない。最後に私たちができることを一言ずつメッセージを。

(金尻氏)まず立ち上がること。当事者、女優はもっと立ち上がって欲しい。被害について直視して欲しい。(伊藤氏)この一年世論ができてよかった。かなり変わってきた。引き続き法律できるまで(森田氏)まず事例を知って広げて頂きたい。あらゆる人権テーマの一つとして取り上げられるべき。

感想

改めてメモを見ましたが、やはり森田氏が激アツですね。激アツすぎて会場ついてこれてなかったですね。せめて製作被害、流通被害、消費被害の表をレジュメに載せておけば理解度も違ったと思うんですが。「何十倍、何百倍」だの「何万本」だの無造作に使ってそれをまくし立てるような早口で行うのは逆に信頼性を損ねるのではないかと常識的に考えて当然なことが私、気になります! 

*1:金尻氏だけとても短いのですが、発表資料に書かれていたことはメモしていないためです

*2:労働者派遣法違反容疑 http://www.sankei.com/affairs/news/160612/afr1606120006-n1.html

*3:プロダクションと交わすモデル契約書とは別

*4:AV違約金訴訟 http://bylines.news.yahoo.co.jp/itokazuko/20151001-00049989/

*5:イスラム原理主義うんたらかんたら長い話が続き、前列の人が寝始める

*6:ここいらで毎度の話だからか金尻氏が飽き飽きした顔をしていたように見えた

*7:ここらで金尻氏がもういいよという顔をしているように見えた

*8:なお、名刺交換の数は伊藤氏、金尻氏>>(越えられない壁)>>森田氏

*9:着エロのことだと思われる