第4回 ポルノ被害と女性・子どもの人権シンポジウム 「国際的に広がる性売買被害 〜オーストラリア・韓国・日本の現状から〜」 大森佐和氏(日本)

おおまかな問題意識

後半部分(民主党案への反論)は私個人の見解であることを申し述べさせて頂きます。児童ポルノ法の検挙は過去最悪の数字。被害者の低年齢化、半数が小学生以下(この数字には疑問がある。詳しくはクリエーター支援&思想・表現・オタク趣味の自由を守護するページを参照)、共有ファイルソフトによる頒布の急増。現実に被害に遭っている人は100倍、1000倍はいる。

2004年に児童ポルノ禁止法が改正され単純製造とインターネットへのアップロードが禁止された。しかし単純所持は合法のままであり閲覧も禁じられていない。インターネットのめざましい発達により、一度出回ると複製、取り込みが可能であり、世界中の誰でもが眺める可能性がある。いつ誰にアップロードされるかも分からない。子どもポルノ(※発言ママ)は性的虐待の記録であるという本質から、その後誰に見られるか分からないという恐怖感と一生戦わなければならない。日弁連も供給を絶てば問題ないと言っているがダウンロードして保存する奴も禁止しなければならない。

着エロが放置されている。秋葉原の専門店(いつものおいもや本舗?)に今回の講師を昨日お連れした。小学生がお店で握手・サイン・写真を撮られるなどの”サービス”があり、この前のNHKの番組にあったように児童はまさに深く傷ついているし、画像が残ったことに苦しみ続けている。何の気に服をたくしあげた身体検査の画像や水着遊びの画像がマニアのなかで流通している。2011年4月に世帯の8割をカバーするブロッキングが開始されたが、残り2割とP2Pには対応できない。IPアドレス直打ちにも対応できない。合法だった頃の多くのタイの子どもの画像が動画投稿サイトにアップロードされ性的なコメントを付与されている。

ICMECの調査では世界194カ国のうち74カ国で単純所持が禁じられている。欧州評議会条約では単純所持の禁止のみならずアクセスの禁止も含まれている。オーストラリアの法律ではグルーミング(動画配信サイトなどを通じて児童ポルノ画像を放送”させる”こと)についてISPに対する通報義務があり、性犯罪者の情報が開示されている。シンプソンズ子どもポルノ(くどいようだが発言ママ)として処罰もしている。韓国では2012年に初めて単純所持で起訴が行われた。2012/6/19の国会で自民・阿部俊子氏の質問に対して中川大臣は国際基準に近づけるよう努力すると発言した。

民主党案への反論

1.マニア内の無償の交換規制が難しい
2.盗撮処罰・禁止のために「複製して製造する場合を除く」を追加している。自己所有目的であれば子どもポルノの複製は合法であると宣言している。こんなことを世界中に宣言する先進民主主義諸国などどこにある?
3.例外規定の拡大。「専ら医学その他の学術研究の用に供するものを除く」の追加は児童の権利に優越しない
4.附則で自治体の先進的な法律の制定を禁じている
5.アニメ・マンガ・コンピュータを規制から外している。なぜ調査しようともしないのか。日本のアニメに影響を受けて韓国で性暴力犯罪を起こした人間もいる。マンガがゲートなんだ、実在の児童ポルノを引き起こしているという事例だ。

民主党案への反論への反論(※大森佐和氏の講演内容ではありません)

1.「みだりに、児童ポルノを対償を供与し又はその供与の約束をして反復して取得した者」いわゆる反復取得罪の対象は金を渡すことのみに限らず、無償のやり取りも含まれます。マニア内の無償の交換はお互いに対償を供与しているためマニア内の無償の交換も規制されます。故意に民主党案をねじ曲げた解釈です。
2.「前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。」が「前項に規定するもののほか、みだりに、児童ポルノを製造(これを複製して製造する場合を除く。)を製造した者も、第一項と同様とする。」に変更されます。盗撮は「いずれかに掲げる姿態をとらせ」てはいないため、そして単純所持を定義から外すため(ブラウザで閲覧しただけでもローカルPCに複製される)にこのような文言修正を行ったものと思われます。そして日弁連と同じく供給を絶てば問題ない(=複製する元がない)という理屈です。”自己所有目的であれば子どもポルノの複製は合法”であるという言い方はやや強弁(今だって自己所有目的であれば合法だ)をしているといえるでしょう。
3.児童虐待製造物を単純所持している(とされている)ECPAT東京メンバーのいう台詞ではありません。学術除外規定がドイツと”スウェーデン”にあることを知らないとは言わせませんよ。日本国内で児童虐待製造物に関する研究(の一部)を禁じて諸外国がこう言うからこうなんだ、で押し通そうとする思惑でしょうか。
4.規制反対派界隈では諸手を挙げて迎えられている規定ではありますが、一般的には地方独自の条例が認められないという宣言は認めがたいものがあります。地方で独自の財源を作るとか特区を作るなら構いませんよね。ただし、刑罰法規に関しては慎重であるべきです。
5.キムさんはこの事件を挙げなかったんですよね、これが。ポルノの影響力についてはイギリスのウイリアムズ委員会およびアメリカのジョンソン委員会で「子供への保護は必要であるが、大人については、ポルノグラフィーを観たり読んだりするかの判断は個人の自由に任せるべきだ」という結論が出ています。よって、調査は不要です。

単純所持罪への反論

1.国家権力による恣意的濫用を防ぐためだというが、内閣を形成している=警察をコントロールしている与党の台詞ではない。過剰な市民への圧力を恐れて、多くの子どもたちが被害にあいつづけているのを放置するのか。また、麻薬や拳銃は単純所持を規制できるのになぜ子どもポルノはできないのか。ある女性議員は多すぎるからできないと言ったが、多いからこそやるべきだ。Taylorによれば単純所持とグルーミングに相関関係がある。
2.表現の自由について、権力への抵抗は守られるべきだが、子どもへの性的虐待より重いとは思わない。マンガなどについては内容が問われている。ゲートとしての役割を果たしている(Kendal and Funk 2012)。ゾーニングを徹底し調査して影響があれば規制すべきだ。

単純所持罪への反論の反論(※大森佐和氏の講演内容ではありません)

1.政府=行政府が警察=司法権力を個々の裁判レベルで完璧にコントロールする世界が理想ですか?まさか。麻薬や拳銃が単純所持できるのはブラウザで閲覧しただけでローカルPCにコピーされないからです。子供たちの被害を止めるために――というのであれば反復取得罪に合意してマンガ規制を諦めて下さい。
2.ECPAT東京といえば、表現の自由が存在しないかのように振る舞う御仁が多い団体ですが、なかにはきちんと比較原則を理解している方もいらっしゃるのですね。素晴らしいですが、比例原則と児童ポルノを組み合わせるとマンガ規制は論理的に厳しくなるので、児童虐待物という用語を使用して表現の自由埒外へ置くことをお奨めします。獣姦レベルのマンガを規制しやすくなりますよ。

背景要因

ポルノ=女性を従属的に描くありとあらゆる表現物という定義。ポルノにはありとあらゆる性暴力が描かれている。大人の女性のポルノはこんなにひどいから、着エロはそんなに悪くないと錯覚する。子どもが被害に遭っていることを訴えるように、女性ももっと声をあげるべきだ。日本は性売買者の受入国。貧困問題だから諦めろというが、貧困が原因ならサハラ砂漠からヨーロッパへ連れて行くはずだ。日本の警察では、韓国からの人身売買被害者がゼロとなっているが韓国の数字と一致しない。警察はもっと人身売買加害者を取り締まるべきだ。
日本では性風俗産業と売買春が高いレベルで許容されている。男性は処罰されず専ら女性側の問題とされる。援助交際=子どもの非行とされ、ポルノに出演した側が自責を覚えるのに対して買う側は見えにくい構造となっている。CSEC世界会議の第3回フォローアップ会議でシルビア王妃の言葉に"No Demands, No supply"という言葉があった。日本は子どもポルノ輸出国であり人身売買受け入れ国だ。