表現規制13のウソ その3 暴力的ポルノは性暴力を発生させる!

表現規制派は時として発言の文脈やその合理性を無視してポルノは害悪であると主張します。その一つがこれです。

確かに、暴力的ポルノは性暴力を発生させるという結論をアメリカのミース委員会(1986年)が導いています。しかし、ミース委員会には前段としてポルノと性犯罪の間には因果関係がないとするジョンソン委員会(1968年)の結論があり、ジョンソン委員会の結論が気に入らない保守派、レーガン大統領がポルノを規制するために組織した結論ありきの委員会がミース委員会です。

また、ミース委員会の研究には多くの批判がなされていおり、委員会自らが"requires assumptions not found exclusively in the experimental evidence,"(実験結果から必要な証拠は発見できなかった) "We see no reason, however, not to make these assumptions…that are plainly justified by our own common sense"(理由はないが、しかし、前提がなくとも……常識から明らかに正当化できる)と自白するような内容です。ポルノグラフィと女性の客体化(リンク先PDF)では「近年中里見(2004, 2005) がミスリーディングな紹介をした」という扱いです(笑)

discaたんがFBIがポルノと性犯罪の間にリンクがあることを指摘したと言っていますが、何年の指摘なのかポインタがないので何とも言いがたいです。私が知っている範囲ではFBIは2002年もしくは2003年に疑似児童ポルノと児童への危害とのリンクについて証言していますが、証言内容の正当性については次のように否定されています。

Free Speech Coalition判決後にアメリカ議会下院がCrime Against Children部署の主任を召喚し(中略)その出版(※擬似児童ポルノ)がどのように実在する児童に危害をもたらすかについて証言させた。しかし、これらの主張は、Free Speech Coalition判決で政府が主張したものと特段異なったところはなく、上記のような因果関係は否定せざるをえない。(加藤隆之『性表現規制の限界 「わいせつ」概念とその規制根拠』 ミネルヴァ書房, 2008年 P310)

NEWSポストセブンによると"アメリカではFBIの調査でポルノと犯罪の因果関係が明確に否定されたことを受け、モザイクなしが解禁になりました"とありますが、togetterでこの発言を引いているのが主にエアトスたんだから信用ならないこれおそらくジョンソン委員会の話で前述のとおりミース委員会を否定しないと反論として使えないと思います。