第4回 ポルノ被害と女性・子どもの人権シンポジウム 「国際的に広がる性売買被害 〜オーストラリア・韓国・日本の現状から〜」パネルディスカッション

以下、敬称略でノーマ、キム、大森と表記します。

大森

ノーマさんは人身売買、キムさんは人身売買、私はポルノといろいろな問題を多角的に分析し、事は一国の中で収まらないことがわかった。ノーマ氏はアジアの女性が日本のイメージで人身売買されている現状を、キム氏は日本と類似した問題点を話した。私の児童ポルノも海外の子どもが使われている現実がある。まずは昨夜、秋葉原の着エロ専門店の感想をお聞きしたい。

ノーマ

オーストラリアから来た者としてショックだった。オーストラリア人男性もポルノを消費している。根本的に社会の状況がオーストラリアと日本で違うと感じた。産業基盤が日本にできあがっている。擬似的な子どもポルノに関する事業者のネットワーク、店を立ち上げる資金、流通。着エロ商品は日本独自かどうかは不明だが、オーストラリアで目にしたことはない。商品として世界が消費している着エロは日本発祥だと感じた。これだけ発展しているということはグルーミング産業が発展している。女の子たちを着エロに養成する産業もあると感じる。成人ポルノと子どもポルノを区別することに意味がないと感じた。日本は成人がロリータ的服装で登場するAVが多い。また主流派アニメでポルノが存在していることもあり大人ポルノOK、子どもポルノNGとはできないと感じた。

大森

紐のようなものをつけて性的なポーズをさせることもある。11歳から18歳になるまで毎年水着を着てアングルが成人ポルノのアングルと変わらない。性器を強調している。

キム

自分の目で確認できたいい機会だった。とても衝撃的だった。着エロから始まってポルノまで見ましたが気持ち悪くなりました。一番おどろいたことはポルノが店で公然と売られている事実。韓国ではポルノショップは存在しない。韓国でポルノを作るのは違法行為で、ソフトなエロ映画のみが存在する。エロは女性の胸が露出されていて性的関係を少し描くが、実際に行うものではなく演技。19歳以上に限定して流通している。インターネット上のポルノショップももちろん違法だ。
韓国におけるポルノの流通経路は2つある。1つは業者、1つは個人。業者は日本やアメリカのポルノを違法に複製して流通させる。もしくは海外でインターネットサイトを開設する。個人は、アングラで流通しているポルノを買い求めたり海外サイトに接続してダウンロードする。ですので韓国の男性がポルノを見るためにはとても多くの努力が必要です(笑)韓国のドラマでは男性が共にポルノを見る場面がある。ポルノを供給してくれる男性は人気がある。
韓国は儒教文化の影響力が大きく体裁や対面を重要視する、道徳的に良くないことを隠す文化だ・更に1960年〜1980年の軍事政権の元で検閲が普通のものとなった。政治的な検閲は弱くなったが性に対する検閲は残っている。自由主義にも関わらず性的検閲に反対理由の一つだ。ポルノをアングラで見ることは一つの文化になっている。もし韓国でポルノ制作ができるようになったとしても、ポルノに女性が顔を出さないように出演するだろうし、公共の場所で男性がポルノを買うまでには大奥の時間が必要になるだろう。韓国と日本とで児童ポルノに関する文化的差が大きい。10代女性後半を性的に見る文化が日本では流行っている。しかしながら、児童を性的に見ることに対しては反感を持っている人が多いと考えられます。

大森

日本とはこうも違うのかなと感じた。日本のコンビニですと「成人向け雑誌」のポルノが手に入る。性器が露出したものが普通の雑誌と白い看板で区切られただけで販売されている(注:まずありません。性器が露出していた場合は猥褻罪で逮捕されます)。

ノーマ

オーストラリアでもガソリンスタンドや新聞スタンドでポルノが販売されている。クマのぬいぐるみを抱いていたりポニーテール姿の擬似児童ポルノも販売されている(!)。フェミニストグループが反対運動を行って一部の店ではなくなったがメジャーな石油チェーン店では変わらず売られている。法では違法となるが現実に目にすることがあります。

キム

韓国では肌を露出した女性の雑誌はあるが乳首が出ることはない。性器の露出は考えられません。映画では表現の自由・芸術性といった理由では可能だが。男性俳優の性器が露出したときは検閲対象となり、映画館ではそのまま上映されましたがテレビ放送では消された。

大森

ガソリンスタンドは大人が行く場所です。コンビニは生活から切り離せない場所。(ノーマ氏が口を滑らせたので素早くフォロー)日本の特殊性に気付かなければならないと感じます。互いのパネルの感想を述べると韓国では自発的行為者の問題があり、オーストラリアでは合法化の問題があり、日本では韓国の2004年以前の法律に近い状況。韓国はこれからの日本の輝くべき未来と思っていたが法執行ではこれまで通りとわかり大変示唆に富んでいた。

ノーマ

オーストラリアのフェミニストとして自国政府に批判的だが、一方でオーストラリアと日本の状況には差があり、日本の状況は悪い。私自身性買春問題に力をいれているため韓国の話はよくわかる。オーストラリアでの活動を通じて国際的に性売買を禁止したいと思っている私にとって韓国はモデルとしていくべきだと感じた。問題はあるようだが、オーストラリアよりは進んでいる。韓国に六ヶ月滞在したこともあり、ある意味目指すべきところであると感じる。公的な場で性売春を人権侵害であると表現した。自国でも強く押し進めるモデルである。このような法律を制定した韓国の方々に敬意を表したい。政策の面で影響を与えることを考えるのが重要で、公共政策で反対していくのが活動家として重要だと感じた。

キム

他の国に比べて進んでいるとは言えると思う。しかしながら韓国に住んでいるとまだまだ不足しているのが現実。成人女性と青少年が区分されることが問題。韓国では成人の性売買について研究すると大きな批判を受けるが青少年性売買はそれほど強くない。二重的な態度を見ることができる。年齢主義の根拠は10代女性の判断が不足しているため、この考えに同意しない人も多くいる。年齢主義が問題なのは青少年売買のみを被害者とし、成人は被害者であると見なさないことだ。性売買問題を話すときいつも問題になるのは性を購買する男性、業者、国が見えないことだ。3者の組織的関係を批判すべきだ。特に自発的性売買は国家が介入しなければありえない。今日の席のように学者、市民が集まって話すことは重要だ。新自由主義とも関係しているが割と金のある国へ、韓国のように経済的に進んでいない国の女性が行くことと関連している。個人、個別の国家で解決できる問題ではない。非常に意味のある席だった。

大森

日本の場合、買春男性が全く見えない。大量の需要があるにも関わらず女性だけが対象として扱われる。ありとあらゆる多量の性産業が存在し、異常さを認識できない。現実に気付くことから現実を捉え直すことが必要だ。売買春合法化をサポートする議論への反論として労働組合ができていないという話があったが、合法化により人身売買の流れの変化はあるのか。

ノーマ

影響はあった。性産業がアジア化しオーストラリアに浸透した。特に韓国と中国、東南アジアもある。性産業の女性の50%はアジア、非英語圏。売買春が行われている現地で性産業の許容度があがった。合法化の二つめの影響はセックス産業擁護派=セックスワーク派が政府からの助成金を得るようになったことだ。性売買に反対する我々には助成金は入らない。助成金を用いた活動によりセックスワーカーのビザ受入など彼らの影響が増している。2009年にオーストラリア政府はセックスワーカーを移民として受け入れるようになった。影響の3つ目としてセックスワークの権利擁護派がオーストラリアで力を持ち海外での合法化へ向けて活動していることが挙げられる。特にアジア、ソロモン諸島パプアニューギニアでも活動している。最も貧しい国へ行き、リンクを作っているという現状がある。

大森

人身売買の流れの合法化という指摘であった。違う国で体を売らざるをえない合法化に影の副作用であると指摘を頂いた。

キム

小売り外に先払い金を返すために性産業へ入る人がいる。性売買禁止主義が人身売買を増やす懸念もある。高利貸しは家族に知らせるぞなどと脅迫を行う。連帯保証によって一つの借金が他の女性に及ぶこともある。海外まで行って人身売買せざるを得なくなる。形式的に見るとしかしながら、自ら旅券で飛行機に乗って自発的に性行為を行いに行くと見える。韓国でもそれほど積極的に捜査を行っているわけではない。摘発されても家族に報復を恐れて高利貸しを隠すケースが多い。性売買女性が海外に出たときはブローカーにパスポートを取り上げられたりといった不利益がある。そのような状況で女性たちは誰にも助けを求めることができない。お互いの国通しの協力捜査が必要だ。しかし、そういう女性のことを国家的恥部であると考えているのでは。

大森

市民として私たちがどういう方向へ向かうべきか

ノーマ

市民として連帯して性産業に反対していくことが大事。売買春、ポルノが表現の自由の問題ではないこと、人権侵害であると訴える。たばこ産業に対して多くの人が立ち上がってここまで来ている。性産業はグローバルであり、私たちも性産業は人権侵害であることを伝えていくことが必要だ。

キム

売春防止法成立背景について、もう1つある。国際機関で人身売買賛成国に区分されたため、OECD加盟国として恥ずかしいと突然の努力をして一等級の成果が出た。国際的圧力がない限り国家は動かない。フェミニストも国際的連帯で国家に圧力をかけるべき。

大森

見えないものを見えるようにする感性、国際的協力が大事だと感じた。

締めの挨拶 宮本節子氏

この会場に集まった全ての皆様に感謝いたします。本シンポジウムのハイライトは日本の性を商品とする産業が巨大なインダストリイであると二人から指摘を受けました。その事実に私たちは大きな責任を背負っています。各国に大きな影響を及ぼすこの国で、色々な国と連携しながら、見て見ぬ振りをする人も巻き込んで歩んでいきたいと思います。皆様からカンパを14万1千飛んで70円のカンパを頂きました。これで来年もシンポジウムを基金ができました。ありがとうございます。