第3回 ポルノ被害と女性・子どもの人権シンポジウム『子どもの日常を取り巻く性被害〜学校・ストリート・施設〜』 速記録 その3

このあたりで始まってから2時間くらい? 腕が疲れていて、何を書いているのか分からない部分が多くなってきます(汗)

橘ジュン氏

私はVOICEマガジンというフリーペーパーをやっています。なぜ作ろうかと思ったのかというと、アウトローだった10代の頃に雑誌の編集長が話を聞いてくれて、私を180度変えてくれました。世界から悪いとされていることでも一人一人に丁寧に話を聞いてくれました。私もこんなふうに生きたい――その思いで取材される側から取材する側になりました。

20年前は夢がない若者はいなかった気がします。親から暴力をふるわれていても自分は家庭を持ちたいんだと目標を考えている子が多くて、その子たちは1年あれば変わることができた。私が今会っている少女は生きづらさを抱える子どもたちです。漠然と生きづらさを抱えている子もいれば、親から暴力・性虐待を受けている子もいる。その子たちから「なんで私は生まれてきたの?私は透明人間みたい」という声が寄せられます。誰にも、どこにも声をあげられない子ども、社会からこぼれ落ちた子どもと出会っているのかなと思います。

フリーペーパー片手に繁華街へ行って「こういう人間だから話を聞かせてくれない?」と尋ねると興味を持った子は話を聞かせてくれます。フン、と拒否する子もいますが私は話したいことがある子の話を聞くことにしています。最初は路上で話をしますが周りが聞いていると危険な話もあるので喫茶店でお茶しながら話を聞くこともあります。

たとえば。夜11時の繁華街の路地裏で大きな荷物を抱えてメイク中の子どもの二人組に声をかけました。一人には「ハァ?あっち行ってよ」と断られましたがもう一人が「面白そうじゃん」と言ってくれて話を聞くことになりました。「いくつ?」と聞くとはっきりと答えてくれないので私から「16歳?」と話を促すと「ああうん、16歳16歳」と答えます。あとから分かったことですが、16歳ということはないだろうと思ったその子は実際には中2でした。

「なんでここにいるの?」という質問に「ナンパされるため」と答えてくれたのは私に楽しく話を聞いてもらうためで実際は親から暴力を振るわれるため家に帰れないということでした。一ヶ月も家出していて疲れないのかな。毎日ごはんを食べるためにナンパして疲れないのかな、つまらなくないのかな。彼女はこう答えます。「つまらなくないよ。一人じゃないもん、街にいれば」そして「ごはん食べさせてもらって、”お礼に”お金ないからセックスするんだ」と。困っているときに助けてくれたお礼だよと。

「それ、援助交際だよね?」「違うよ。お金もらってないもん」「お礼にセックスするのって援助交際だよ?」「やばい、うちらやってるの援助交際じゃん?」「じゃあ、避妊してる?」「お腹の上で出しているから(大丈夫)」「いや〜それ避妊じゃないしコンドームとか使わないと」

うわあ、危ないなあと。相手はいいですよ。その子が妊娠しても連絡してくることがないんだから。この女の子には見守ってくれる大人が、話を聞いて一緒に考えてくる大人の存在が必要です。彼女は家、学校から見捨てられ制度からこぼれ落ちています。放り出す学校も悪い。そしてら街の中で自分を求めてくれる人を必死に探すしかない。

そんな子たちを一緒にいることくらいはできると思って、生きづらさを抱えている子どもたちのためのNPOを作りました。好き勝手に漂流しているように彼女らは見られていますが、人に言えない事情や理由があります。一ヶ月あたり2000件のメールが私のもとに送られてきます。メールで出会った子に会うこともあります。その子は普通の子で、宿題もするし門限を守るいい子です。家族も友達もいる。けれど、寂しくて消えたくて私たちに声を寄せてきます。こうした普通の、いい子が悩みを抱えていると知った私はどの子に声をかけたらいいかが分からなくなってしまいました。それでも困ったときにその子のために一緒に考えていこうよという気持ちで街に出て子どもに声をかけ続けています。

漂流する少女たちは自分がしていることが援助交際であることを分かっていない。きちんとした情報が必要です。これまで、施設の子は幸せだと思っていましたが、やっぱりどこにでも生きづらい理由はあるのだなと思いました。会場の皆様と一緒に変えていきたいと思います。

司会コメント

声をかけてくるのは性的搾取をする男たちにも関わらず「街に出れば一人じゃない」。話をしてくれる人が周りにどれだけいないのだろう。これだけ、自分達の声を聞いて欲しいと思っている子どもがいるのに、私たちはそんな子たちに声をかけられているのか、と思いました。では次に性被害にあった子どもに対する対応について金子さんにお話をお聞きしたいと思います。