HRN報告書がスルーしたパンダリング罪(2252(A)(3)(B))について

HRN報告書『日本・児童ポルノ規制の実情と課題』に関して、HRNが挙げた「児童ポルノ」として挙げたビデオは表見児童ポルノであり児童ポルノではないと批判されている。また、HRNが「児童ポルノ」であるとした理由が小児科医の専門的な判定であったことに対してタナー法がCGポルノ裁判で否定的に扱われたことからこれも批判の対象となっている。

思うに、HRNはもっとも悪質とした作品について「仮にこれらの作品が児童ポルノではなかったとしても、米国法のパンダリング罪を考えればこれらの作品は児童ポルノ法で処罰すべきである」と主張すればこのような批判は受けなかったとは言えないまでも和げることができたのではないだろうか。*1

パンダリング罪(2252(A)(3)(B))は以下のように定義されている。

故意に、性的にあからさまな行為に関与する児童のわいせつな視覚的描写、若しくは、性的にあからさまな行為に関与する実在する児童の視覚的描写が、当該物に含まれていると信じていることを示すような様態、または、他人がそのように信じるよう意図した様態で、州際若しくは国際取引において、コンピュータなどの手段によって、宣伝、頒布、懇願する行為等を行った者

本規定についてはWilliams判決で合憲判決が出されている(ただし学説上は違憲説が強いようである。たとえば加藤隆之氏は「他人がそのように信じるよう意図した様態」については違憲としている)*2

なお、提言のなかにはパンダリング規制を想起される内容(出演者を小学生、中学生として宣伝したり、18歳未満の年齢を宣伝・記載した作品)が含まれている(P54)。

*1:論理的に隙はなくなるけれどもパンチが弱くなるので採用するかというとしないなと思う

*2:アメリカ合衆国における児童ポルノ規制の新たな取組み : パンダリング規制の合憲性に関するWilliams判決を素材として