児童買春、児童搾取、児童ポルノに関する特別報告者の日本訪問を踏まえての報告書[Advance Edited Version]

注意:バッシング目的、特に第三者への邪推や誹謗中傷のための利用はおやめ下さい。

事務局注

事務局は児童買春、児童搾取、児童ポルノに関する特別報告者の日本訪問を踏まえての報告書を人権理事会に渡す名誉を得た。

本レポートでは、特別報告者は国際人権規範の観点から日本における児童買春、児童の性搾取に関連する問題を調査した。

基礎となる情報は彼女の訪問前、訪問中、訪問後に集められた。特別報告者は被害児童のケア、回復と社会復帰のために取られた児童買春と児童ポルノと戦いかつ防止する立法と児童保護政策を強調しています。

最後に、特別法後者は児童の売買と性的搾取を防止し根絶するための努力を強化する観点から提言を行います。

I.はじめに

A.訪問プログラム

1.児童買春、児童搾取、児童ポルノの特別報告者は政府の招きに応じて2015/10/19〜26日本を訪問した。訪問の目的はあらゆる形の児童搾取と児童買春を防ぎ根絶するための提言を行えるよう、児童買春、児童搾取、児童ポルノの規模および児童保護システムを評価することである。

2.特別報告者は東京、大阪、川西、那覇を訪れた国レベルでは内閣府厚生労働省文部科学省総務省法務省、外務省、警察庁の代表者と会談した。また、最高裁判所の代表と国会議員と会談した。都道府県レベルでは、川西市の子どもの権利のためのオンブズパーソンの事務所、沖縄県青少年児童家庭指導課、沖縄県警察と会談した。

3.また、特別報告者はインターネットサービスプロバイダや日本旅行代理店協会の代表を含むビジネス部門の代表者と会談した。インターネット・ホットラインセンターを訪問し、インターネットコンテンツセーフティ協会とセーファーインターネット協会の代表者と会談した。

4.特別報告者はまた、児童保護の問題に取り組んでいる市民社会NGOの代表者、女性団体や子どもの権利の専門家と会談した。最後に、報告者は日本ユニセフ協会と会談した。
5.特別報告者は女子高校生のためのサポートセンター、性暴力危機治癒介入センター、里親家庭、児童相談所や成年の家を訪問した。彼女はまた、東京および那覇でセックスエンターテイメント業界を観察するために訪問した。

6.特別報告者は中央や県レベルの当局との会合を支援した日本政府に感謝する。また、訪問前後に彼女を支援した市民社会NGO日本ユニセフ協会、国連広報センター(東京)、日本記者クラブ、国連人権弁務官事務所のメンバーに感謝する。

B.背景

7.政府が提供したデータによると、日本の人口は1億2700万、うち2000万が18歳未満の児童で5400万人が5歳未満の児童である。2008年の世界的な金融危機、2011年3月の地震津波は日本に景気後退をもたらした。日本は世界第三位のGDPがある。現在、子どもの貧困率は16%である。沖縄では全体の貧困率が増加しており、ほぼ全国平均の倍である。2012年の沖縄の貧困率は34.8%、子どもの貧困率は37.5%である。

II 状況分析

A 児童の性搾取および児童買春の範囲

8.公的な統計によると、児童買春が減少する一方で児童虐待物に関連する搾取が増加している。児童買春が減少した原因を説明する公の分析や研究は存在しないが、児童性虐待物の普及、売買の増加はインターネットと新技術の発展によるものである。性的虐待や搾取の被害児童を扱う様々な関係者から収集した情報によると、女の子は犠牲者の大多数を占め続けている。*1しかし、特別報告者は、恐怖や偏見およびジェンダーセンシティブな苦情受付機関や紹介メカニズムへのアクセス方法が不足していることにより、虐待を報告し支援を求めるには消極的な男の子がいることも理解している。

1.児童買春
9.特別報告者は性的搾取を容易にするまたは性的搾取につながる動向や活動への懸念に留意した。特に懸念されるのは学齢期の女子によって行われる様々な商業活動を指す「女子高生ビジネス」(もしくは「JKビジネス」)という現象である。*2「JKビジネス」はさまざまな形態を取り必ずしも性的な接触に繋がるものではない。しかし、「JKビジネス」を取り締まろうとする警察の努力にも関わらず、少女が買春のような性搾取の被害者となるケースがあることを学んだ。女子高生お散歩もしくは「JKお散歩」は高校生が金銭と引き替えに成人男性と旅行することを容易にする商業活動の一つである。「JKビジネス」は「JK撮影会」「JKリフレ」店といった様々な施設により運営される。ある施設では男性が少女と二人っきりになることでしばしば性行為に繋がる。「JKビジネス」は様々な形態を含む一方で、援助交際は仲介者なしに、男性自身が見つけた若い女性や少女に交際の見返りとして金銭や贈り物を提供する。援助交際は性行動を必ずしも含む者ではないけれど、デートはしばしば性行為につながる。

10.「JKビジネス」を評判の高いバイトと考える12歳から17歳までの少女の間では、「JKビジネス」はまれなことではない。少女たちは求人広告や採用担当者を通じて雇われる。一度「JKビジネス」に参加すると、雇用者や顧客がしばしば性的サービスを提供することを強制することがわかる。「JKビジネス」はグレーゾーンで行われるため、現象を完全に把握することは困難である。特別報告者は「JKビジネス」と児童買春の被害者と会った。彼女たちは家庭における児童虐待から逃げ出した末に生き残りのため買春にたどり着いた。彼女たちは皆「JKビジネス」がなくなることを望み、児童と若者が「JKビジネス」の被害に遭わないように「JKビジネス」がもたらすものを警告すべきだと強調した。

11.特別報告者は日本における「JKビジネス」の対象領域となる公的統計を受け取れなかった。この傾向、富をもたらすビジネスがたやすく児童、特に少女の制作種につながるのではないかと気がかりである。結果的に、特別報告者は市民社会、事業部門とNGOと協力して現象の対象範囲を特定するために総合的で実証的な研究を行うことを政府に呼びかけることにした。研究には正確かつ最新の統計、プッシュ&プルファクター、児童被害の影響度が含まれ、需要側の原因(すなわち犯罪者)に対処するための効果的な予防と保護戦略を提供することが最終的な目的である。

2.児童虐待

12.近年、国レベルでは児童虐待物(すなわち児童ポルノ)の製造、頒布、販売の制御が強化されている。にもかかわらず、2014年の統計は過去最大値を更新した。新技術により、日本で生産された児童虐待物が世界中の視聴者に届けられている。特に日本は仮想の児童が登場する性搾取的な表現物の主な生産国であるとやり玉に挙げられている。マンガ、アニメ、コンピューターグラフィックスやビデオゲーム、オンラインゲームの一ジャンルであるこれら性搾取的な表現物は、極端な児童ポルノ描写を含んでいる。*3

13.法律を強化したにも関わらず、秋葉原のような娯楽産業地区の店舗で児童虐待物は未だにアクセスし購入することができる。エンターメント&セックス産業で容易にアクセスできる児童虐待物のカテゴリーの一つは着エロもしくは児童エロチカであり、写真など小学生が性的に挑発的なポーズを取る写真などで構成されている。性的な箇所にはっきりと焦点が当てられているにも関わらず、児童は裸ではないため合法である。これらは未成年者に性的な感情を呼び起こすこともありうる。

14.インターネット上で児童ポルノはビデオストリーミングサイトから利用可能である。サイトは視聴者に児童虐待物のストリーミング映像の視聴は法律により罰されることはないと請け合っている(ダウンロードしたデータのみ罰せられる)。公私のパートナーシップによるブロッキングと削除措置により(パラグラフ42を参照)児童虐待物へのアクセスが難しくなったにも関わらず、サーチエンジンに「小学生アイドル」や「ジュニアアイドル」と検索キーワードを指定するだけで簡単に児童ポルノにアクセスできる。

15.もう一つの懸念材料は17歳から20歳までの少女や女性に対するAVへの強制出演である。捕食者は簡単に騙されやすい18歳未満の少女に近づく;未成年が成人に達するや、詐欺、脅迫、または強要の下で、AVの撮影を義務づける契約書に署名することを余儀なくされている。ポルノ産業に閉じ込められると、契約を破ろうとした被害者は不均衡な補償請求に脅かされる。契約の存在が調査を阻害し、起訴が困難になる。

16.新技術に関連するリスクの結果として生じた「リベンジポルノ」と「性的脅迫」もまた日本における憂慮すべき傾向である。「リベンジポルノ」は主に性的に露骨な画像を対象となる個人に送信することで、被害者に嫌がらせしたり傷つける方法として用いられる。「性的脅迫」の場合は、ライブチャットで出会った児童に裸の絵やビデオを共有するよう求め、もっと寄越さないと裸の画像をばらまくぞと恐喝する。

3.性的搾取や児童買春の他の形態

17.1996年にストックホルムで開催された第一回CSEC世界会議以来、日本は特に東南アジア諸国における児童買春ツアーとの戦いにおいてかなりの進歩を遂げている。*4日本人男性はそれでもなお児童買春ツアーの重要な需要を創出し続けてきた。専門の委員会は旅行・観光における性的搾取から児童を保護するための行動規範の採択を推進してきた。日本はまた人身売買の被害者の受け入れ国である。*5人身売買業者による結婚詐欺や雇用詐欺によって被害者が日本へ送られ、性的搾取を強制している。*6

B.根本原因とリスク要因

18.性役割と性差別、児童の性的商品化、および社会的寛容、不処罰と貧困は日本における様々な形の性的搾取の根本的な原因である。消費行動は児童を性搾取に引き込む要因であり、例えば「JKビジネス」が挙げられる。雇用機会の欠如を含む、厳しい競争社会と貧しい人間関係と乏しい児童の社会的スキルが児童を性搾取へ送り込む要因である。これらの多角的要因は児童や若者を脆弱にして性搾取へと送り込む。例えば沖縄県は特に貧困の影響を受け、高い失業率・離婚率・十代の妊娠率を有している。経済的困難への耐乏と結果としての家族の弱体化は特に児童を脆弱にし性搾取へと送り込む。

19.特別報告官は「ジュニアアイドル」現象に見られるようなエンターテイメント産業で児童を性的な商品として取り扱うことを懸念する。モデルに進むための経歴であるとして写真集やイメージDVDで性的な服装で登場する子どもたちがいる。このタイプの商業活動への社会的寛容が性搾取の主な要因である。特別報告者は児童の性搾取の需要側が見落とされていること、および、よかれと思ってなされた公共防止キャンペーンでさえ被害児童とその家族に焦点が当てられることを残念に思う。*7特別報告者は児童の性的商品化で利益を上げる民間企業に焦点を移すよう関係当局に促す。

III 児童買春、児童搾取、児童ポルノに対抗し防止するための措置

A.法的枠組み

20.日本は児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書、ILO条約第182号、EUサイバー犯罪禁止条約などの子どもの権利に関する諸条約を批准している。人身売買、特に女性や児童のそれを防止し、抑制し処罰するための国際的な組織犯罪の防止に関する国際条約に署名しているが批准していない。通信手順に関する児童の権利条約選択議定書は未署名である。

21.児童買春・児童ポルノ禁止法(1999)は児童の性搾取を犯罪化することに焦点を当てた国内法である。特別報告者は2014年の同法改正を歓迎する。とりわけ、児童ポルノの単純所持を犯罪化したことは国内法を国際人権規範へと近づけることとなった。改正案は10年近く市民社会NGO、教師、保護者、日本ユニセフ協会、民間セクター、特定の政党への政策提言活動を継続した末の困難な交渉の結果であった。国際圧力も改正に重要な役割を果たした。(CRC/C/OPSC/JPN/CO/1を参照。訳注:2010/5/25国連子どもの権利委員会)

22.改正はいわゆる「仮想の」児童虐待物、すなわち写実的な未成年が性的に露骨な行為に従事するポルノ(たとえばマンガ、アニメ、ゲームなど極端な児童虐待物を含む)を犯罪化しなかった。反対派はこのような表現物の犯罪化は憲法21条の表現の自由を侵害すると主張した。彼らは仮想の児童虐待物(もしくは「非実在の人物」)が実在する児童を傷つけず(訳注:実際の犯罪との)因果関係が確立されていないと主張した。反対派はまた「疑わしい」とラベル付けされることで芸術表現の自由に対して過度に警察が介入するリスクがあると警告し、既に刑法175条により「わいせつ」が犯罪化されていることを想起せよと主張した。彼らはまた、法律の目的は実在する児童を守ることであり、実在する児童への性搾取との戦いに焦点を当てるべきであると主張した。反対派はまた日本で独自に発展したマンガやアニメ文化への特に影響を与えるであろう視覚メディアへの強力な規制の試みを批判した。

23.仮想児童虐待物の製造、提供、頒布、取得や所持の犯罪化を支持するステークホルダーは、国際人権法によればそれらは児童ポルノであり児童の権利の侵害であると主張した。彼らは特定のマンガ、アニメやゲームに含まれている暴力的な性虐待の表現によって児童が被害を受けており、児童性虐待に寛容な文化を反映していると主張した。もしなんら実害がない場合でも、仮想児童虐待物は児童の性的商品化に貢献することで描かれている搾取行為への社会的寛容を促進する。

24.特別報告者は表現の自由と子どもの権利との間の適切なバランスを取ることの重要性を認識している。しかし後者は強力かつ収益性の高い事業の犠牲とすべきではない。国際人権規範によれば、任意のポルノ表現は描写された児童が実在であれ仮想であれ児童ポルノである。*8目的は児童を保護することであり、児童を描写することは必ずしも害を及ぼさないけれども、児童がそのような行動に参加することを奨励もしくは誘惑するために使われ、それゆえ児童虐待を好む層のサブカルチャーの一部を形成する。*9このような場合には、表現の自由とプライバシーの権利の制限は道徳に基づく他者への危害の防止の根拠となる。*10究極の目標は児童を、性的な望みの対象とする子どもの権利の侵害となる行為に寛容でない社会を実現することだ。にもかかわらず、特定の場合には、特別報告者は仮想児童虐待物の禁止と芸術表現の権利に及ぼす影響との間で困難で繊細なバランスを達成しなければならないということを認める。

25.法律改正案では議論は仮想児童虐待物が潜在的に被害者と加害者に与える影響についての科学的研究の要求が含まれていた。反対派はその要求は法律の範囲外であり、個人のプライバシー権に影響を与える可能性があり、たとえ因果関係を実証したとしても児童虐待物の犯罪化が犯罪を減少させることは証明されていないと主張した。加えて彼らはそのような条項を含めることが研究の結果に法的地位を与えることを恐れていました。このような強い反対があり、単純所持を禁止する改正案の合意に達するため、科学的研究の支持者は提案を断念した。

26.2014年改正は第七条第1項で単純所持を犯罪化した。本規定は2015年7月の適用前に1年間の廃棄のための猶予期間が与えられた。改正案はまた第二条第3項の定義を変更した。第二条第3項1号及び2号は変更なし、3号は「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」と定義を拡張した。3号に該当するであろうたとえば児童エロチカは合法であると考えらるため、修正されたにも関わらず3号はあいまいである。更には2号および3号の「性欲を興奮させ又は刺激するもの」は限定的に解釈され、極端な場合にのみ適用される。特別報告者は本定義は選択議定書第2条(c)よりも狭いと指摘する。

27.改正されたにも関わらず児童ポルノの他の様態、たとえばオンライン上の児童虐待物の閲覧やアクセスは犯罪化されていない。「JKビジネス」もまた規制されるべきである。愛知県は条例で「JKサービス」を禁止した唯一の県であり、「JKサービス」を提供する店舗のオーナーやマネージャーに罰金を科す。地方レベルでの規制措置は国家の児童ポルノ保護枠組みの抜け穴に対処するためには重要であるが、特別報告者は国レベルの包括的な法律と同様のインパクトを与えるものではないと指摘する。

28.刑法のような児童性虐待や児童性搾取に関連する法律もある(たとえば刑法175条わいせつ物、177条強姦、176条暴行、178条準強制わいせつ及び準強姦)。児童福祉法は児童を18歳未満と定義している。性交同意年齢が13歳であることは児童に対する性犯罪の訴追を困難にする主要な一つである。民法は成人を20歳とし、児童福祉法で守られない18歳、19歳との間で社会保護上の隙間を作っている。法律が禁止している事項であるにも関わらず(パラグラフ34のように)児童は児童エロチカ、「JKサービス」や「ジュニアアイドル」のような児童に害のある商業活動から守られていないないため、上記を含む形で改正されるべきである。同様に、児童虐待防止法第二条二と第三条における児童虐待の狭い定義は改正されるべきである。

29.特に情報通信技術についての児童性虐待および児童性搾取を規制する法律としては、青少年インターネット環境整備法、出会い系サイト禁止法、風営法がある。「JKビジネス」の全てが風営法の対象であるとは限らないため風営法第二十二条第三項(風俗営業を営む者は十八歳未満の者に客の接待をさせてはならない)は「JKビジネス」には適用されない。

B.制度的枠組み

30.内閣府児童ポルノ排除総合対策を策定し、省庁間の政策の設計と調整を担当している。厚生労働省は児童を含め労働法の実施を監視し、たとえば労働検査を担当している。2009年に総務省児童ポルノ防止プログラムを実施しオンライン上の児童虐待物を報告し削除するビジネス部門の努力を支える日本インターネットセーフティ協会の設立を支援した。文部科学省児童虐待の早期発見と専門医の紹介を容易にするためスクールカウンセラーソーシャルワーカーの意識啓発や研修活動を行っている。特別報告者はすべての市民の動的な取り組みを促進するための評議会の創設に注意を払い児童虐待と児童搾取と闘うための予防および保護活動への関与を奨励する。情報共有と能力開発に限定される政府と県の間の政策調整は事態の改善のために必要である。

31.人身取引の被害者へのより包括的な支援をもたらした、2004年に設立された人身取引に対する制度的協調を通じて人身取引に対する制度的連携が確保されている。法務省は数カ国語に対応した外国人を支援するための人権相談所を設置している。厚生労働省は警察や他の機関と連携して婦人相談所人身取引の被害者を支援するためのマニュアルを公開している。2007年には入国管理局は人身取引データベースを作成した。

32.都道府県および主要都市で208カ所の児童相談所が存在する。育児拒否、虐待、暴力の被害児童は通常児童相談所に送られる。性虐待や性搾取の被害児童に特化した施設はない。児童相談所は法執行機関、医療機関や学校と連携している。児童相談所を出た子どもは家に戻るか地域社会や社会福祉法人が運営する施設(例えば子どもの家)に行く。児童相談所は設備や専門スタッフが足りないと批判されている。児童相談所のための管理ガイドラインが存在するにもかかわらず児童の参加措置を組み込めていないとも批判されている。

C.児童買春、児童搾取、児童ポルノに対処するための政策とプログラム

1.児童保護政策

33.2013年5月、新技術による児童ポルノの増大に効率的に対処するため犯罪対策閣僚会議が第二次児童ポルノ排除総合対策を採用した。対策は児童虐待物の頒布およびアクセスへの防止、被害児童の保護改善、国際強力の強化を目的とした。2014年12月には日本は児童買春および児童ポルノに対して断固たる措置を取る、人身取引と闘うための新しい行動計画を採択した。計画はまた日本が人身取引と闘うための取り組みと統計を年次報告することを想定した。(最初のレポートは2015年5月に公表)

34.2010年、内閣府は女性と児童を性的な対象として描くようなメディアにおける男女性別役割分担を払拭するための措置を含む第三次男女共同参画基本計画を採択した。2008年に内閣府が採択した青少年育成方針は学校での意識啓発、被害児童の適切な治療の促進、情報通信エンターテイメント産業の関与により児童の性搾取と闘うための対策が含まれている。特別報告者は若者がコメントし政策を提案するため招待されたことを歓迎する。しかし、内閣府が2010年に採択した「子ども・若者ビジョン」は児童の性搾取について問題が盛んに研究されるだろうとのみ限定的に言及していることを残念に思う。

35.児童への暴力および児童への性虐待と性搾取に関連する問題に対処するための幾つもの計画や政策が採択され更新されたにも関わらず、報告者は現象との闘いにおける包括的アプローチが欠如していることを懸念する。また、児童虐待物の増殖に取り組むことに焦点が置かれ、買春などの児童の性搾取を防止するための取り組みが犠牲になっているようだ。この点で、特別報告者は2001年の児童の商業的性搾取に反対する国家国道計画がアップデートも更新もされていないと意見を述べている。また、計画や政策官の調整と相補性の欠如および影響および進展の評価基準がないようだ。

2.捜査、起訴と制裁措置

36.都道府県警察が実施した児童買春と児童搾取と闘い防止する方法を警察庁が採用し統合する担当である。警察庁は児童買春と児童虐待物に関連するデータを集め公表し、犯罪捜査のための予算を割り当て、人材を養成する。

37.都道府県警察が性搾取の被害防止と被害児童の保護の役割を担っている。児童相談所に関与する人にとって、被害児童の識別プロセスは不可欠な要素である。児童の犯罪被害者とその家族は少年サポートセンターや警察署で経験豊富な指導関係者やカウンセリングの専門家によるアドバイスを受けることができる。被害児童の支援は児童心理学者に依存している。加えて、都道府県レベルでは児童虐待や児童搾取を報告するため児童にとって使いやすいヘルプラインが利用可能だ。例えば、警察はスタッフが児童からの相談依頼を受ける「若者電話コーナー」を設けている。無料電話かe-mailで相談可能だ。特別報告者は、法執行機関を越えて、子どもにとって使いやすい苦情のメカニズムを通じ、被害児童が虐待を報告し助けを求めることのできる取り組みの確保は重要であると協調する。

38.警察の統計によると2010年から2014年にかけて児童ポルノの被害児童は614名から746名に増加する一方、児童買春の被害児童は741名から466名に減少した。性的搾取の被害児童の大半は女子である。(2014年では1130人中82人が男子)*11。児童買春が減少したことに関する公式な説明はない。しかし、児童ポルノの増加はインターネットと新技術の影響に起因する。また国際的な圧力が児童虐待物との闘いに注目を向ける役割を果たし、児童買春を減少させたと考えられている。

39.近年では法執行機関はオンライン上の児童性搾取、特にオンライン上の児童虐待物に対抗するために努力を傾けている。警察庁はサイバー犯罪に対処する方法を県警に指導する。2002年以来児童ポルノの児童検索システムが運営され、児童ポルノの調査を支援している。県警が需要を識別し被害児童を発見するためサイバートロールを行っている。愛知県警と警視庁は関係者からこの点で特に成功したと言及されている。警察によると知らない人と連絡してオンライン上で性的な画像等を共有する児童をどうするかが主な課題の一つである。

40.児童性虐待物に取り組むもう一つの朝鮮は被害児童の識別に関わる。被害者の年齢がいつも分かっているわけではなく年齢を鑑定することが困難であることから研究者や検察が児童ポルノに取り組みたがらないと批判を受けている。報告者はこれらの困難を克服するため積極的な捜査と訴追を行うことを法執行機関や検察官に呼びかける。児童ポルノの取引者はしばしば児童虐待物を「児童ポルノ」(もしくは「児童エロチカ」)と宣伝しているので、適切に起訴すべきだ。児童買春罪に関して特別報告者は被害者の同意を得ずに犯罪者に対する刑事訴訟は開始できることを指摘している。彼女は被害者が司法システムにアクセスできるようにする検察庁の努力を賞賛している。例えば、被害者の保護と支援に関するマニュアルの出版である。特別報告者はまた、人身取引や性搾取の被害となった児童や若者にとって使いやすいバージョンを製造することを奨励する。

41.検察の統計によると2013年に児童買春・児童ポルノ禁止法違反は2331件である。1391件が起訴され、567件が不起訴となった。司法統計の年次報告書によると、児童買春および児童ポルノの容疑で第一審で有罪判決を受けた犯罪者は2010年の324件から2014年の143件に減少した。法改正の影響は将来の統計に表れるだろう。最高裁判所のデータのよると2014年、141件の有罪判決があり、うち30件は起訴猶予なしの3年間の有罪判決だった。13件の執行猶予を含む106件は懲役刑が執行されない(訳注:原文はsuspend。どう訳せばいいのか)。特別報告者は児童の性搾取に関連する犯罪のおいて懲役刑が執行されない率が高いことにつじて懸念を表明する。彼女は犯罪の不処罰を避けるために有罪判決の完全な実施を確保することを司法および関係当局に要請する。

3.オンライン上の児童の性搾取との闘い:ビジネス部門の役割

42.特別報告者はオンライン上の児童の性搾取との闘いで日本のビジネス部門が果たした重要な役割を表彰する。政府の支援を受けながらも自発的にビジネス部門は法執行機関やNGOと協力して児童虐待物をブロックし削除する2つの機構、インターネットコンテンツセーフティ協会とセーファーインターネット協会を構築した。特別報告者はオンライン上の児童虐待物と闘うための手段として世界中に移植する価値がある取り組みであると考えています。

43.インターネットコンテンツセーフティ協会はオンラインで増殖し普及する児童虐待物への対応として2011年に設立された。協会はインターネットサービスプロバイダ、モバイルネットワーク事業者、検索エンジンのオペレータとフィルタリングサービスプロバイダを含む93の企業で構成される。協会は警察庁及びインターネットホットラインセンターから児童性虐待物に関する情報を受信する。学識経験者、NGOUNICEF、ビジネス部門、および小児科医や弁護士の代表者からなる独立した監査委員会が基準に従ってブロックすべきか否かを決定する。その後、協会はブロックしたインターネットアドレスのリストをインターネットサービスプロバイダおよびモバイルネット事業者に提供する。協会はサービスプロバイダの75Tとネットワークオペレータのうち100%をカバーする。2015年に協会のブロッキングリストは201のドメインと1006インターネットアドレス(すなわち画像)を含む。協会の代表は基準を平準化し国境を越えたレベルでの協調を向上させるためにブラックリストを交換する必要性を強調した。

44.セーファーインターネット協会は日本の情報通信技術企業の自主的な努力によって2013年に設立された。オンライン上の違法・有害コンテンツを報告するためのホットラインを運営している。加えて違法なコンテンツを監視し、研究を行い、制作に関する提言を行い教育および意識啓発プログラムを策定する。協会は国内および海外のプロバイダに対して違法なコンテンツの削除依頼を行うことができる。独立した法律の専門家で構成される諮問委員会によって作成された一連のガイドラインに基づいて実施される。違法(児童虐待物、リベンジポルノ、オンライン上の買春の勧誘など)もしくは有害な(軽微ないじめ)コンテンツに関する報告は協会のウェブサイトにて公開することができる。それから協会は警察やインターネットホットラインセンターに問題のあるコンテンツを報告し、国内もしくは海外のプロバイダに削除を依頼する。

45.2015年7月現在、セーファーインターネット協会は24003件について受信・監視し、うち4079件が違法で3844件は日本国外のホストで運営されていた。違法・有害コンテンツの62%はわいせつ表現、30%は児童虐待物が、5%はリベンジポルノである。協会が受信または検出したうち86.8%の児童虐待物が外国のウェブサイトに掲載されていた。協会はサイトの管理者もしくはホスティングプロバイダーに合計4254件の削除依頼を送信した。意外なことに児童虐待物を掲載した海外サイトのうち96%から肯定的な応答があった。国ごとの違法物の定義の違いがあるため外国のプロバイダーに削除依頼を出すことは挑戦的である。国際協力はこの点で不可欠である。

46.インターネットホットラインセンターは一般の人々が潜在的に違法もしくは有害なコンテンツを報告できるように2006年に設立された。日本インターネット協会が運営する同センターは国際的なインターネットホットラインネットワークの一員であり、警察庁から資金を得ている。同センターは運用ガイドラインに基づいて報告を受け取り、犯罪(わいせつ物、児童性虐待物、買春の勧誘など)を構成する可能性があるケースについて警察当局へ転送する。また、国内のウェブサイト管理者やインターネットサービスプロバイダに違法・有害コンテンツの削除依頼を出すことができる。センターはまた、インターネットユーザーを違法・有害コンテンツから保護するため、フィルタリングソフトウェア企業に情報を提供する。

47.インターネットホットラインセンターは2014年に合計150352件の報告を受けた。合計1806件は一般から、778件は国際的なインターネットホットラインネットワークから受け取り、優先順位付けをされた上で処理された。警察庁もしくは県警に参照されたレポートは3日以内に捜査するかどうか決められる。児童虐待物のユーザーが海外にいる場合、関係国が参照できるよう国際的なインターネットホットラインネットワークに送られる。児童虐待物が犯罪捜査の証拠であったとしても警察の認可があればインターネットサービスプロバイダは削除してもよい。

48.積極的に資金、ノウハウと技術を導入することにより、日本の情報通信技術企業がオンライン上の児童性虐待および児童性搾取と闘うことに貢献している。ビジネス部門は法執行機関や検察に関して改善の余地があると考えている。すなわち、オンライン上の児童性搾取という惨劇に対処するために、特にウェブサイトの管理者に積極的に介入すべきだというのだ。

4.ケア、回復と被害児童の社会復帰

49.特別報告者はさまざまな支援を行う性虐待および性搾取の被害児童を養う様々な種類の公共および民間機関を訪問した。しかし、対話者の全てが被害児童が利用できるシェルターや施設は非常に限られていると指摘した。また提供されるサービスは児童のニーズに適しておらず、スタッフは充分に専門的な訓練を受けていないと指摘した。性搾取の被害者はしばしば非難され非行少年として扱われる。被害者としての事情はしばしば拒否され、結果適切なサポートへのアクセスは否定される。特別者は被害児童の効果的な回復と社会復帰という目標を達成するために、被害者の早期発見と被害者への包括的なサポートを確率する必要性を強調する。

50.特別報告者は沖縄県にある二カ所の児童相談所のうち那覇市児童相談所を訪問した。児童相談所は虐待の被害児童、不安定な状況にある児童(たとえば貧困や家庭崩壊)、障碍を持つ児童、病気や問題行動を起こす児童(非行少年)に相談サービスを提供する。ホットラインや警察から連絡を受けて家庭から児童を保護することもある。性虐待(2013年は6.9%の24件)に直面した時には児童相談所は治療のために子どもに病院を紹介する。ケースワーカーと心理学者は子どもおよび家族にインタービューを行い、さまざまな支援策から最も適切な支援を行うための最終決定を行う(たとえば児童が家庭に残るか一時保護施設で預かる)。被害児童もしくは親が苦情を申し立てなければ児童相談所は警察に報告することができる。ほとんどの犯罪者が処罰を免れることが児童相談所のスタッフが直面する主な課題の一つである。

51.県レベルの児童相談所は国内の児童虐待の件数に圧倒されている。ケースワーカーは性虐待、性搾取の被害児童を支援するための十分で専門的な訓練を受けていない。スタッフを選別するシステムも存在しない。ケースワーカーの専門的な訓練の欠如は児童の信頼を得るための能力に影響を与える。結果として児童相談所の支援サービスを拒否されることもある。また、児童相談所は24時間運営ではなく週末にも対応できない。児童相談所が運営する一時シェルターはしばしば満杯である。13歳未満の児童は年長の被害児童を犠牲にすることで優先に受け入れられている。

52.特別報告者は性暴力救援センター(SACHICO)を大いに賞賛する。同センターは性暴力を受けた女性と少女のための最初のワンストップセンターとして2010年に開設された。被害者の選択と回復を支援し、被害者への即時の援助などを総合的に提供する。寄付金を受けてNPOにより運営され、スタッフには専門家や訓練を受けたボランティアが含まれる。心理的な支援、24時間のホットラインおよびスタッフの常時駐在、安全の確保と医療のフローアップを含めた24時間の緊急産婦人科医療などがサービスに含まれる。これらサービスはカウンセラー、弁護士、ケースワーカー精神科医、小児科医、法医学者、警察官、女性相談所および児童相談所がサービスを提供する。緊急対応は阪南中央病院が提供する。被害者は必要なケアに応じて関係官を紹介される。

53.設立以来SACHICOは23000以上の電話を受け3200回の訪問を行い、強姦や強制わいせつ、性虐待、性的「非行」や家庭内暴力の被害者983名を医療機関に導いた。被害者の9%近くが9歳未満、53%が10歳から19歳である。強姦もしくは強制わいせつの犠牲者239名は18歳未満である。おおくのケースにおいて加害者は男性で被害者と顔見知りだった。センターはとりわけ緊急避妊の処方箋と性感染症についての検査薬、証拠収集の手配、妊娠中の女性の支援、法律家やカウンセラーの紹介を提供する。センターが取り扱う性虐待の90%で犠牲者は未成年(19歳以下)でほとんどが12歳から14歳の間である。77%のケースでは加害者は家族である。42%のケースで虐待は1年から4年続いた。性虐待213件のうちたったの16件の加害者が逮捕された。加害者が懲戒処分を受け子どもが母親に預けられるか離婚を申請された例もある。児童性虐待の不処罰は主に刑事手続きを開始することを被害者が決断しなかったか被害者証言の証拠能力に関連する困難さに起因する。

54.国の危機センターネットワークは129機関が参加している。政府は危機センターの設立に関するマニュアルを発行した。大阪府は研究プログラムを支援している。ワンストップ危機センターが直面する主な課題はスタッフの訓練と支援の進展、女性産婦人科医の仕事量の増大、関連する課題への挑戦、寄付金依存の体質などである。特別報告者はまたワンストップ危機センターが女性に焦点を当てていることに注目する。児童や少女に焦点があてられたものではなく、まして少年に至ってはワンストップセンター自体が存在しない。ワンストップセンターは精神科医、カウンセラー、弁護士、警察、児童相談所やその他の関係諸機関の強力を促進する。しかし彼らは被害者のトラウマ再発を回避するために重要な手段である法医学インタービューを行っていない。

55.特別報告者はまた、性虐待と性搾取の被害児童(特に少女)に重要な支援を行うNGOを目撃した。そのような組織の一つであるCOLABOは被害少女に安全で安心な場所で信頼にもとづいた関係を提供するサポートセンターを運営している。COLABOはカウンセリング、相談、夜間パトロール、基礎的な支援と被害者を病院や児童相談所に送り届ける活動を行っている。また、一時シェルターを運営し、教育や意識啓発を行い被害少女の力を与える活動を行っている。COLABOが支援する少女の多くは「JKビジネス」や児童買春の被害者だ。専門的な施設、サービス、専門家の不足に起因して被害少女はしばしば性産業に戻ってしまう。特別報告者は回復途中の性虐待や性搾取の被害少女と会った。彼女たちは被害者はしばしば精神障害に苦しみ自傷や自殺を試みていると説明した。COLABOのような組織が支援する施設で自らの経験と感情を他の(訳注:性虐待や性搾取の)サバイバーと共有することは大人への信頼と未来への希望を取り戻す助けになる。

56.カリヨン子どもセンターは虐待や育児拒否の被害児童に長期的な支援を行う数少ない組織の一つである。社会福祉法人である同センターは男子や女子のための個室のシェルターと未成年が自律して暮らす家を二ヶ所運営している。また、家庭内虐待や家庭内非行を恐れる児童のためのシェルターだけでなく、社会的保護の隙間にいる18から19歳の児童のためのシェルターを提供している。少女の4分の3が虐待の被害者である。多くが家なき子であるか買春を通じて生計を立てている。青少年のための家はシェルターが提供する支援の第二段階である。その目的は虐待の被害者が虐待を受けた場所に戻ることを防ぐことにある。児童はヘルプラインを通じてカリヨン子どもセンターに連絡できる。弁護士が児童のケースを検証したのち、児童はシェルターに割り当てられる。児童に最初に接触した弁護士がその後の経過すべてを担当する。児童にとって最良の選択肢を探すために彼もしくは彼女は児童の言うことを聞いて家族との仲介を行う。センターに到着すると、児童は面接され、専門家による会議が処遇を決定する。そして必要があれば臨床検査が行われる(例えば、カウンセラーを呼ぶか)。刑事告発が適用される場合警察が呼ばれる。法医学インタビューも実施し、トラウマ再発を回避するために記録される。思春期の母親はシェルターで保護が受けられるよう女性相談所を紹介する。

58.カリヨン子どもセンターは子どもごとのケースワーカーを指名する。ケースワーカーはその子どもに対して責任を持ち、その子どもからヒアリングを行う。ケースワーカーはその子どもと一緒に働きその子どもの最良の未来のために子どもと「一心同体」になって働く。シェルターは安全性を提供することを目的としているが(滞在期間は数週間から数ヶ月)、青年の家は長期的な住居(平均一年)を提供している。青年の家では「普通」の生活を送り、大人への信頼と自身の未来への計画を再発見する。カリヨンはまた新しいプロジェクト、子ども達が予価、文化活動、スポーツ活動に参加できる「カリヨンハウス」を始めた。特別報告者はカリヨンが運営する少女のための家「夕やけ荘」を訪問した。滞在中、少女は独立して生活できるように働き金を貯める。プロジェクトの予算の約80%は厚生労働省が供給し、残りは寄付で賄われている。

59.上記の公共機関や民間団体が提供する立派な支援にもかかわらず、特別歩国者は適切かつ専門的なケアや性虐待や性搾取の被害児童のための専門家へのアクセスが制限されていたことを指摘する。また、提供されるサポートは即時または緊急支援に焦点がおかれ、フォローアップや総合的な中長期の支援は不十分であった。また、子どもの権利の視点とジェンダーセンシティブなアプローチはケースワーカーの研修や訓練に導入されなければならない。

5.予防、能力開発と意識啓発

60.特別報告者は政府省庁、法執行機関、ビジネス部門、NGOその他の関係者が行った数々の教育や意識啓発に留意する。彼女は相補性を向上させ影響力を改善するため、これらの活動の連携を許可することを政府に奨励する。予防努力は児童、とりわけ少女に対する意識啓発、「JKビジネス」に関連した危険性について焦点を当てるべきである。長期の教育と意識啓発戦略は、たとえばジェンダーの不平等、子どもの性的商品化、子どもの性的商品化への社会的寛容といった児童の性搾取の根本原因に対処すべきでる。

61.特別報告者は省庁、法執行機関、情報通信技術企業やNGOによる新技術に関連した危険性についての学校における教育プログラムの実践への努力を歓迎する。両親や教育を行う教師のための訓練や子どもにインターネットの安全な使い方を教えるといったことも含むべきである。特別報告者は情報通信技術企業が問題への注意喚起を行う子どもにとって分かりやすい資料(リーフレットや教科書、マンガやチラシなど)に留意する。

62.特別報告者はまた、特に児童の性搾取に対抗することを目的とするNGOの予防努力を賞賛した。COLABOは人身売買業者やスカウトが少女を性産業へいざなうやり方を識別することを高校で話している。また、繁華街でスカウトを識別するか説明する夜間のウォーキングツアーを行っている。ライトハウスは児童や未成年に「JKビジネス」や「リベンジポルノ」を含む性搾取に関連した危険性の注意喚起を行うためのマンガブックレット「BLUE&Heart;HEART」を作成した。ECPATストップ子ども買春の会はNot For Sale Japanと一緒に児童性搾取の危険性を注意喚起する漫画本「陽はまた昇る」を作成した。

63.特別報告者は予防努力におけるメディア企業や広告企業の不十分な関与を指摘し、彼らが積極的に予防キャンペーンを行うよう奨励する。メディアは子どもの権利に準拠した行動規範を採用し、児童の性的な商品化やジェンダーステレオタイプに対抗するべきである。

6.子どもの参加と独立した監視

64.特別報告者は児童に影響する公共政策の設計・策定に児童の関与が欠如していることを指摘した。2001年の横浜会議のように政府が国や地方レベルで性搾取に対抗するための政策の設計・策定に児童の参加を増加させるという正の経験がある。公共の生活のなかで児童の参加を増加させるために、政府は児童を計画に参画させた経験がある子どもの権利保護NGOと強力すべきである。

65.特別報告者は始めて児童を政策策定に参画させた川西市の子どもの権利のオンブズパーソン事務所の代表者と会った。事務所は1998年に市の条例により設立され、市長に付属する機関がオンブズパーソンを指名する。事務所は広報、調停と予防を通して子どもの権利の侵害に対処することを義務づけられている。事務所はまた、カウンセリングや仲介サービスを提供し、苦情を調査し、意識啓発キャンペーンを行い、子どもの権利の保護を改善するために市政府に勧告を行う。児童との協議の大半は家族や友人、いじめ、または言葉による虐待や教師からの脅迫といった課題に関連している。

66.特別報告者は川西市の子どものオンブズパーソンや、県や県首都レベルの他の子どもの権利監視カウンセリング組織の仕事を賞賛する(パラグラフ26を参照)。彼女らは児童の性虐待と性搾取に対抗するための意識啓発キャンペーンを実施し、惨劇から児童を保護することに貢献した成功した取り組みについて共有する際の調整を改善することを症例する。しかし、特別報告者は地域レベルの子どものオンブズパーソンは子どもの権利のための国家的オンブズマンや国内人権機関の役割を果たすことはできないことを注意する。その結果、特別報告官は人権保護法の採択を優先し、子どもの権利を含めた人権保護のための監視と広報を担当する国家的人権機関を設立することを政府に促す。このような機関はとりわけ、国家規制や政策が国際的な子どもの権利規範(影響がある公共問題に関して子どもが意見を聴かれ政策策定に参加することも含む)に準拠しているか監視する。

7.企業の社会的責任と国境を越えた協力
67.特別報告者はオンライン上の児童性虐待や児童性搾取に対抗するため情報通信技術産業が2011年に採択した防止および保護手段を賞賛する。旅行観光セクターはまた、旅行・観光における性搾取から児童を保護するための行動規範のような海外で日本人が行う児童買春ツアーに対抗する自主的な施策を実施している。特別報告者はビジネス部門(メディアや広告企業、エンターテイメント産業、マンガやアニメの出版社)の関係者を国際子どもの人権基準に準拠した行動規範の採用を通して児童の性搾取との闘いに積極的に参加させることを政府に奨励する。また、ビジネス部門は政府やNGOと協力して、児童を暴力や虐待、搾取から保護するための意識啓発キャンペーンや予防プログラムに従事すべきだ。
68.日本は積極的に児童の性搾取に対抗するために地域や国境を越えた取り組みに関与している。2001年の横浜会議の主催国を勤めたことに加え、参加国があらゆる形態の性搾取から児童や未成年を保護するための堅牢な枠組みを確立することを約束した2008年のリオ会議参加している。さらに近年では、日本は2014年ウランバートルで開催された児童の権利に関する第三回アジア子どもの人権フォーラムに参加している。フォーラムの成果宣言では、とりわけ、児童虐待を含めたあらゆる形態の子どもに対する暴力の防止および禁止のための政策、法律、啓発活動やその他の措置の策定や実施を加速させることを参加国が呼びかけた。

69.警察庁は東南アジアにおける児童の商業的性搾取に関する研究者の年次会議を開催している。そこでは地域の法執行機関の代表者が児童を性搾取から保護するための取り組みの情報を交換している。人の密輸、人身売買、国境を越えた犯罪に関するバリ・プロセスの積極的な貢献者として、日本は2013年4月2日にバリで開かれた人の密輸、人身売買、国境を越えた犯罪に関する第五回地域閣僚会議に参加した。G8のメンバーとして日本は国際的な児童性搾取データベースに資金を提供している。また、アジア太平洋経済協力機構の枠組みの中で、オンライン上の児童の性搾取への取り組みや、より安全なインターネット環境を醸成する取り組みについて活発的に活動している。

70.また、日本は他国と刑事事件の犯人引き渡しや刑事共助協定を締結している。2010年から2014年にかけて法執行機関は域外管轄権の原則に基づいて、児童の性搾取容疑に関連して4件を起訴に関与した。警察庁は証拠収集や被害者の特定、海外の犠牲者とのアクセスという困難に直面しながらも海外で児童性搾取を冒した国民を逮捕するよう勤めている。また、警察庁は国際児童性搾取データベースへの情報共有、司法援助要求を認めることといった独自の献身的な協力を通じてInterpolと協働している。

IV.結論と勧告(訳注:Advance Edited Versionのため原文ではIIIとなっている)

A.結論

71.児童買春と児童買春に関係する人身取引、児童搾取と児童ポルノと対抗する日本政府は、2001年の横浜会議の時から比べてかなりの進歩を遂げている。児童の性搾取に取り組むことを目的とした立法改正や政策を採用してきた。特に、情報通信技術部門の取り組みを通じてオンライン上の性搾取に取り組む上で重要な知識と専門性を発揮している。他の国でも日本と同じことを行うべきよい活動である。統合的な即時支援と、性虐待や性搾取を含む性犯罪被害の女性や少女への支援を提供するワンストップ機器センターもまた他国に広げるべきよい活動である。

72.しかし、オンライン上もしくはオフラインでの児童性搾取は未だ日本において大きな懸念がある。新技術が児童虐待物を増殖させ、児童虐待物に対抗するための取り組みに関する進歩は少女の買春のような他の形態の性搾取との焦点のズレが生じてきている。とりわけ児童の性的商品化とジェンダーステレオタイプ児童の性搾取を促進または繋がる活動や傾向を引き起こした。また、これらの活動は社会的に容認され通常は罰を免れている。

73.日本は2014年に児童買春・児童ポルノ禁止法を改正した勢いに乗り、あらゆる形態の児童性搾取とジェンダー不平等に対抗する取り組みを進化させるべきだ。法改正は児童性搾取を根絶する上での重要な第一歩だが、総合的な対策に付随させ強化しなければ役に立たない。今後訪れる2020年の東京オリンピックは日本が児童の性搾取に対抗し根絶する主導権を握るためのまたとない機会である。

B.勧告

74.日本がその成果を固め、残る課題を克服し、性搾取の惨劇から効果的に児童を確実に保護するために特別報告者は次のことを日本政府に勧告する。

(a)児童の性搾取に対する包括的戦略を強化発展させる。これには戦略を管理する担当者の氏名、調整とフォローアップ、既存の計画や政策と相補性を確保することが含まれる。
(b)上記の戦略を効果的に実施するため必要な資源を割り当て、戦略の設計・実施・評価に児童や未成年が参加することを確保する。戦略は次の(i)から(vi)に取り組むべきである。(i)あらゆる形態の性搾取から児童を保護し、予防し、禁じるための明快で包括的な法的枠組みを確立する。特に女子の結婚承諾年齢と性交承諾年齢を18歳に引き上げる。児童性虐待の定義を拡大する。(ii)児童や主に児童児童として描かれた人であり、露骨で性的な活動に従事している仮想画像や仮想表現、および、主に性的な目的による児童の性器の表現物の製造、頒布、普及、提供、販売、アクセス、所持を犯罪化する(訳注:やや記述が異なるが Directive 2011/92/EU. http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/ LexUriServ.do?uri=OJ:L:2011:335:0001:0014:EN:PDF を参照していると思われる)。 (iii)児童虐待物の閲覧およびアクセスの犯罪化。(iv)「JKサービス」や児童エロチカのような児童の性搾取を促進または繋がる商業活動の禁止。(v)人権保護に関する法案を採択すること。とりわけ国内人権機関と独立した子どもの権利擁護組織を設立すること。(vi)国境を越えた犯罪と人身取引を防止、抑止、処罰するための国連条約および通信手順に関する児童の権利条約選択議定書を批准すること。

(c)児童の性搾取を根絶するための効果的な予防保護措置を通知するため、信頼性の高い最新でデータで主因、プッシュ&プルファクター、児童を性搾取へいざなう商業活動の範囲・形態・影響を含む包括的で経験主義的な研究を行う。

(d)性虐待や性搾取の被害児童のための、子どもの権利と被害児童に必要な専門性を訓練したスタッフが支援する、児童が使いやすい報告・苦情、紹介メカニズムの確立。

(e)加害者と被害児の説明責任を確保するため、買春やポルノを含めたオンラインおよびオフラインの児童の性搾取に関連した捜査、起訴、制裁の取り組みを強化する。特に以下の(i)から(iii)について取り組むべきである。(i)子どもの権利の視点を取り入れた上で、性搾取に関連する犯罪を識別し、被害児童を検出し、被害児童を治療するための法執行機関の訓練と意識啓発を強化する。(ii)児童が使いやすい司法手続き、また、裁判前後で被害児童および証人の保護を確保するための手段を講じる。(iii)児童の性搾取に関係する犯罪を確立された刑法に従い制裁を効果的に適用・実施する。すなわち、不処罰と闘うために不可欠な手段としての犯罪に対する不処罰の回避である。

(f)性虐待と性搾取の被害児童のための包括的で権利に基づく児童中心のケアや社会復帰プログラムの確率。特に次の(i)から(vi)が必要である。(i)高品質で統合されたケアを支援を提供するワンストップ危機センターの数・資金・支援を増加させる。また、例えばホットラインの可用性や24時間のスタッフ常駐を確保するなどして、性虐待と性搾取の被害児童に焦点を向ける。(ii)児童相談所、ワンストップ統合サポートセンター、性搾取の被害児童のニーズにあったサービスを提供する関連機関のスタッフの選抜と技術の改善。そしてシェルターや福祉施設への配置に代わるものを提供する。(例えば、里親や青少年の家)(iii)とりわけ児童相談所、ワンストップ統合サポートセンター、法執行機関、弁護士、医療機関、学校、自治体間の効果的な意見交換と協調を確保するための手段を確立する。そしてNGO児童保護組織との連携を強化する。(iv)性虐待と性搾取の被害児童をリハビリや社会統合するため、経過観察を行う長期間のプログラムにより投資する。(v)子どもの権利の視点を採用し、ヒアリングの際に子どもの権利を確保し、少女・少年・LGBTの児童のためのケアと回復を提供する上でジェンダーアプローチを採用する。(vi)被害児童のケアと支援を提供する公私の機関の仕事を評価し監視する。

(g)ビジネス部門(情報通信技術企業、メディア企業、広告企業、エンターテイメント企業)やNGOと連携し、児童や若者の関与の下に包括的な予防的措置を取る。特に、次の(i)から(iv)が重要である。(i)生徒、両親、教師、介護者を対象にした新技術にまつわる危険性と安全なインターネットの使い方に関する教育プログラムと意識啓発キャンペーンを強化する。(ii)児童の性搾取の影響や形態、児童や若者が利用可能な予防保護手段について児童や若者を対象にした意識啓発キャンペーンを行う。(iii)男女差別に対抗するための効果的な手段として少年少女、男女を対象にした長期的な教育プログラムを実施する。(iv)需要要因に対処する。需要要因とはすなわち、予防措置の一環として児童に対する性犯罪を犯した加害者や仲介者である。

(h)児童の性搾取の需要の促進者になったり鳴り続けていないように必要な措置を取るよう民間部門に奨励する。

(i)国境を越えたビジネス部門の協力と関与を通して児童の搾取という惨劇への世界的な連携した反響の確率に貢献する。例えば、オンライン上の児童の性搾取に取り組む知識と経験を共有したり、国境を越えた法執行機関やビジネス部門の協力を強化する。

原文はohchrを参照

*1:According to statistics provided by the Government of Japan, in 2014 there were 1,130 girl victims of sexual exploitation as compared to 82 boy victims.

*2:See also U.S. Department of State, Trafficking in Persons Report, July 2015, p.198.

*3:See U.S. Department of State, “Country Reports on Human Rights Practices for 2014: Japan”, Bureau of Democracy, Human Rights and Labor.

*4:U.S. Department of State, Trafficking in Persons Report (see footnote 2).

*5:See United Nations Office on Drugs and Crime, Global Report on Trafficking in Persons 2014 (New York, United Nations, 2014), p. 79.

*6:U.S. Department of State, Trafficking in Persons Report (see footnote 2).

*7:In July 2015, the Cabinet Office launched an awareness-raising campaign to promote the sound upbringing of children. The campaign included a poster by the National Police Agency calling upon school-aged girls to promise not to contribute to child pornography and prostitution.

*8:See Optional Protocol to the Convention on the Rights of the Child on the sale of children, child prostitution and child pornography, art. 2(c); Council of Europe Convention on Cybercrime, art. 9.2 c; Council of Europe Convention on the Protection of Children against Sexual Exploitation and Sexual Abuse, art. 20.2; and A/HRC/12/23, para. 124 (b) (iii).

*9:Organization of American States, Council of Europe Convention on Cybercrime, explanatory report, para. 102.

*10:Julia Hörnle, “Countering the dangers of online pornography – shrewd regulation of lewd content?” European Journal of Law and Technology, vol. 2, No. 1 ( 2011), p.15. See also Alisdair A. Gillespie, Child Pornography: Law and Policy (Abingdon, Oxon, Routledge-Cavendish, 2011), pp.100-116.

*11:The number of cases referred for prosecution in relation to child prostitution decreased from 954 in 2010 to 661 in 2014, while child pornography cases referred for prosecution increased from 1,342 to 1,828 over the same period.