表現規制13のウソ その3 児童買春・児童ポルノ禁止法ができる前、日本は世界最大の児童ポルノ大国だった!

注)この企画は「漫画否定論13のウソ」で始めましたが、ネタが尽きたのでタイトルを変更します。
注)1999年法成立前の報道等について詳しくは児童買春・児童ポルノ禁止法制史をご参照ください(宣伝)。

1996-1997のIWFの統計をご覧ください。"Only a small proportion of reported items apparently originated in the UK (6%), with most from abroad: USA - 63%, Japan - 19%, Europe - 11%, other - 2%."(なお、上記itemsには児童ポルノ以外が15%含まれています)以上にてQ.E.D.

もう終わらせてしまってもいいのかもしれませんが、これだとなぜ「世界最大」という枕詞がついたのか理解できませんね。公式には(管見の限り)日本が世界最大の児童ポルノ大国だというデータは存在しません。

出所と思われる一つは、1996年のストックホルム会議の直後にECPAT東京宮本潤子氏が語った言葉にあります。「子ども買春問題に国際的に取り組んできたECPATによっても、今日本は、子どもへの性的虐待の永続的描写である「子どもポルノ」の供給・需要共に世界最大の、従って最悪の状況にあると警告されている」*1ただし、ストックホルム会議のECPAT資料には日本が世界最大の児童ポルノ大国であるという記載はありません。ただし、「アジアでは日本が子どもポルノの商業用製造の最も重要なセンター」「日本の子どもポルノはアジア及び世界中で販売されている。」といった記載は見られます。

出所と思われるもう一つは、1998年12月のユニセフ・グローバルフォーラムin東京におけるIntepol一般犯罪課長のラルフ・ムチュケ(Ralf Mutschke)氏の発言です。「国際刑事警察機構ICPO)の推計によると、インターネット上に流れている児童ポルノ画像の80%は日本から発信されたものだ」この発言にはバリエーションがいくつかあり、「発信」「製造」「流出元」と一定しません。おそらくこの推計はアイルランド司法省の調査ILLEGAL AND HARMFUL USE OF THE INTERNETを不正確に引いてきたものです。この調査の対象は女児かつ児童エロチカを含んだものであり、児童ポルノの統計ではありません。

さて、児童買春・児童ポルノ禁止法成立前後(1999年の12ヶ月間)のIWFの統計では" USA - 77%, Japan - 2%, Europe - 3%, other - 7%, unidentified - 7%."と日本の占める割合が急減します。2015年にもなってAmazon.co.jp児童ポルノを販売していた業者がいることと1999年法が5月成立11月施行であることを考え合わせれば、日本国内の業者の動きとしては早すぎると言えるでしょう。児童ポルノの規制がゆるい日本にサーバを立てていた海外業者が1999年中に逃げ出したと考えた方が整合性が取れるものと思われます。

*1:『婦人新報』1996年9月号