冴えてる彼女の育てかた?

アニメ版『冴えない彼女の育てかた』を見ていると、原作ではあまり気にならなかった要素が気になる。ほとんど知らない男子の家で一晩を過ごしたり、家族旅行を途中で打ち切って倫理君を応援するといった原作に概ねと忠実な描写に「加藤さんはなぜこれほどまでに倫理君に甘いのだろう」という違和感がつきまとう。

違和感の原因を探るため、原作とアニメ版の加藤さんの描写を比較してみよう。原作小説一巻のモノクロイラストの加藤さんは顔無し、ギャグ顔、弱い筆跡の輪郭線など可愛すぎないように描かれている。また、三巻からはここぞという場面を除いて加藤さんのイラストは出てこない。アニメ版も加藤さんの登場頻度は原作通りに英梨々や詩羽先輩に比べて低い。しかし、十分以上に可愛い加藤さんがぬるぬる動くのである(たとえ瞳にハイライトがなくなっても)。大きな違いはアニメ版第三話の二次元テイストを取り入れた加藤さんの描写だろう。原作小説では加藤さんは加藤さんと判別できない絵になっているのに対して、アニメ版ではどこから見ても加藤さんである。しかもアニメ0話で加藤さんは自らの意思で倫理君とサブヒロインズのイベントを能動的に邪魔している。そう、アニメ版の加藤さんは彼女<ヒロイン>として冴えている。

またアニメ版は原作小説ほど加藤さんがオタクからは遠い一般人という設定が強調されてはいない。そのため原作にある設定と、特に理由なく主人公に好意を寄せるという二次元属性の彼女<ヒロイン>としての行動が背馳し、後者が目立つ結果になっているのではないか。

以上の考察から単純には1.加藤さんは出さず動かさない。2.加藤さんの一般人性を強調するという対策が考えらえる。とはいえ、1.を実行すると倫理君が何故加藤さんに惚れ込むのかを説明するのが難しく、2.は物語を凝縮しなければならないアニメには不向きだろう。実はアニメ化してはいけなかったのでは? 彼女<ヒロイン>として冴えている加藤さんを素直に受け入れることができればハーレムアニメとして楽しめるように思える。原作未読の人の感想はどうなのだろう。