18禁の意味についてを真面目に解説する

注記(2011.06.04)

下記の記述は東京と大阪については正しい記述ですが、全国一律には通用しない話でした。何人も有害図書を未成年に販売等してはならないと規定されている県*1同人誌即売会に参加する場合、未成年に【18禁同人誌を買わないでください】と伝達することは是とせざるを得ません。

【18禁同人誌を買わないでください】を真面目に解説する

そもそも話をします。

  • 同人誌即売会の18禁はあくまで個々のサークルの自主規制である
  • 現状の運用ではサークルが図書出版を業とする者とはされていない。*2
  • 同人誌即売会もチェックをする。基本、市販の18禁本よりは厳しい基準である
  • わいせつ物は18歳以上に向けてであっても頒布が禁止

「あなたの軽率な行動が、そうやってきちんと自主規制しようとしているサークルさんを犯罪者にしてしまう恐れがあること」は煽り気味です。都条例と大阪の条例を例にとって説明しましょう。

まず都条例を見てみましょう。罰則規定である第二十五条第を見ると、九条第一項、第二項若しくは第三項が当てはまります。これらは図書類の発行業者に関する規定であり、現状の運用ではサークルは当てはまりません。また、これらはすべて対象が不健全図書となります。審議会で指定される必要があるため、新刊は絶対に対象になりません。同人誌が不健全図書指定された例は寡聞にして知らないのですが、仮に指定されたとしても、第十八条による都職員の警告を経る必要があります。更に第九条第一項については更なる免責規定があります。第二十八条の規定により、年齢確認を行っていた場合は処罰を免れる可能性があります。なお、罰則は30万以下の罰金*3です。

次に大阪の条例です。大阪は東京と違って包括指定のルールがあるため、審議会の指定を経ずして有害図書と認定される点は危険性が高いといえます。

では条文を見ていきましょう。罰則規定は第50条と第51条です。まず第50条については第14条第1項、これは東京と同じく図書類の販売を業とする者を対象としているためサークルは当てはまらず、第53条により年齢確認を行っている場合は処罰を免れる可能性があります。次に第50条(2)は第15条第3項、これも東京と同じく包装・陳列に対する府職員による勧告に従わなかった場合のケースです。最後に、第51条は資料の提出を求められるなど実に面倒というか使われ方にとっては危険な条文ですが、これも業とする者ではないサークルには当てはまりません。なお、こちらも罰則は30万(51条は10万)以下の罰金です。

【18禁同人誌を買おうと策を巡らせないでください】を真面目に解説する

「代理購入を頼むと、その本を出したサークルだけでなく18歳未満の子女に買い与えたことで代理購入者まで犯罪者にされてしまいます」は虚偽である可能性が高いです。都条例、大阪の条例ともに不健全図書(有害図書)を青少年に販売等することに対して罰則があるのは図書類の販売を業とする者だけです。

【過去に18禁本が買えたことを自慢にしないでください】を真面目に解説する

「そういった記事がお堅い人たちの目に触れ、警察が取り締まり強化に動き出したのが2007年春先。同人誌印刷業組合が少々厳しすぎともいえる自主規制の呼びかけを始めたのが2007年7月。そしてわいせつ図画の販売で同人作家が逮捕されたのが2007年8月です。」

この記述には幾らかの疑念と時系列上の間違いがあります。

まず、未成年が18禁の同人誌を買ったという自慢があったから警察が同人誌を規制しようとしたという流れがあったという記述の根拠が分かりません。2007年春先に警察が取り締まり強化に動き出した事例も残念ながら分かりません。バーチャル(ryのことでしょうか。誰か知っていたら教えてください。

次に時系列上の間違いですが、同人誌即売会連絡会のHPから引用しましょう。

7月2日、愛媛県在住のイラストレーターが「わいせつ図画頒布」容疑で取り調べを受け、引き続き、当該の自費出版本を印刷していた岡山の印刷会社に家宅捜索が入り、専門書店数社が事情聴取を受けました。8月23日にこのイラストレーターは逮捕され、9月12日に罰金30万円の略式命令を受け、同日釈放されました。(中略)7月初旬の段階でなされた「日本同人誌印刷業組合」の「成年マーク」に特化した自主規制強化は


サークルのみならず印刷会社に家宅捜索が入ったことから自衛策として同人誌印刷業組合が自主規制の呼びかけ=「成人向け表記を表紙につける、奥付に連絡先等を明記する」ことをサークルに要請したものです。この要請の内容それ自体は私も支持しますが、同人誌即売会連絡会の言うように、相手が成人であれ頒布が禁止されているわいせつ物への対策としては間違ったものと言わざるをえません。

このブログの記事では言及がありませんが、わいせつ物取り締まりであることを考えると松文館裁判の影響も大きいと思います。

あと、「大人が必死で自主規制しているのを嘲笑うかのようにかいくぐって法律を犯す18歳未満の人」は虚偽である可能性が高いですね。都条例にも大阪の条例にも18禁本を購入した青少年を罰する規定はありません。

全体の感想

このブログの記事そのものが私にとっては「間違った対策」です。18歳未満は持っている18禁本を武勇伝のように語るな? 間違っちゃいけません。18歳未満に売ってはいけない(それも自分で18禁にすると決めた!)同人誌を18歳未満に売っているサークルさんが悪いのです。このブログを書かれた方のように、各サークルがきちんとした意識を持って、身分証明書の提示を求めるべきなのです。ただし、あくまで自主規制であるため完璧を目指す必要はありません。