憲法裁判所の決定要旨

憲法裁判所は2015年6月25日区「児童・青少年の性保護に関する法律(2011.9.15 法律第11047号で改正され、2012.12.18 法律第11572号にて全部改正される前の版)第8条第2項及び第4項中の児童・青少年利用わいせつ物のうち、「児童・青少年として認識することができる人や表現物が登場して性的行為その他を行う内容を表現すること」の部分、すなわち仮想の児童・青少年利用わいせつ物配布などを処罰する部分が罪刑法定主義の明快さの原則に違反しておらず、表現の自由を過度に制限しないため憲法に違反しないと決定した。この決定に対して上記の箇所が罪刑法定主義の明快さの原則に反しており表現の自由に対する過度の制限であるとする裁判官4人の反対意見がある。 [合憲]


□事件の概要
○2013-17
制服を着た女性が性行為をするわいせつ物を展示・上映した疑いで起訴された者が実際の児童・青少年が登場する映像がない場合にも、その配布などを処罰する旧「児童・青少年の性保護に関する法律」 (2011.9.15 法律第11047号で改正され、2012.12.18 法律第11572号で改正される前のもの)第2条第5号及び第8条第2項について違憲提請を申請し、裁判所がこれを受け入れた。

○2013-24
インターネットファイル共有サイトに制服を着た女子学生が男子学生と性行為をする性的なアニメ動画ファイルをアップロードして配布した疑いで起訴された者が同法第2条第5号及び第8条第4項において違憲提請を申請し、裁判所がこれを受け入れた。

○2013-85
インターネットのウェブサイトにアクセスして、「A uniform beautiful Girl Club」という児童・青少年として認識することができる人や表現物が登場するわいせつ物の動画をアップロードして視聴ないしダウンロードできるように公然と展示した疑いで起訴された者が、同法第2条第5号、第8条第4項において違憲提請を申請したが棄却されると、憲法裁判所法第68条第2項による憲法訴願を提起した。

□審判の対象
「児童・青少年の性保護に関する法律」(2011.9.15 法律第11047号で改正され、2012.12.18 法律第11572号にて全部改正される前の版、以下「旧児童・青少年性保護法」とする)第8条第2項及び第4項中の児童・青少年利用わいせつ物のうち、「児童・青少年に認識することができる人や表現物が登場して性的行為その他の行為を行う内容を表現すること」に関する部分(以下「審判対象条項」という。)が憲法に違反するかどうかである。

[審判対象条項]
旧児童・青少年性保護法
第8条(児童・青少年利用わいせつ物の製作・配布など)?営利を目的として児童・青少年利用わいせつ物を販売・貸与・配布したり、これらの目的で所持・運搬したり、公然と展示または上映した者は、7年以下の懲役に処する。
?児童・青少年利用わいせつ物を配布したり、公然と展示または上映した者は、3年以下の懲役又は2千万ウォン以下の罰金に処する。

【主な関連条項]
旧児童・青少年性保護法
第2条(定義)この法律で使用する用語の意味は次のとおりである。
1.~3。省略
4.「児童・青少年の性を買う行為」は、児童・青少年の性(性)を買う行為を斡旋した者又は児童・青少年を実質的に保護・監督する者などに金品やその他の財産上の利益、職務・便宜の提供などの対価を提供または約束して、次の各目のいずれかに該当する行為を児童・青少年を対象に行うか、児童・青少年に行わせることをいう。
A.性交行為
B.口腔・肛門などの身体の一部や道具を利用した類似性交行為
C.身体の全部または一部を接触・公開する行為であり、一般人の性的羞恥心や嫌悪感を引き起こす行為
D.自慰行為
5.「児童・青少年利用わいせつ物」とは、児童・青少年や児童・青少年として認識することができる人や表現物が登場して、第4号のいずれかに該当する行為をしたり、その他の性的行為を行う内容を表現するものであってフィルム・ビデオ・ゲーム、またはコンピュータやその他の通信媒体を介して画像・映像などの形になったものをいう。

□決定
旧児童・青少年性保護法の「児童・青少年に認識することができる人や表現物が登場して性的行為その他の行為を行う内容を表現すること」の部分は、憲法に違反しない。

□理由の要旨
罪刑法定主義の明快さの原則に違反するかどうか
児童・青少年性保護法の立法目的や仮想の児童・青少年利用わいせつ物規制の背景、法定刑の重さなどを考慮すると、「児童・青少年に認識することができる人」は、一般の立場から外観、人格、制作の動機と経緯などを総合して見たときに、実際の児童・青少年であると誤認するのに十分な程度の人物が登場する場合を意味することであると見ることができ、「児童・青少年として認識することができる表現物」の部分も様々な性的行為を表現した媒体物の製作の動機と経緯、表現された性的行為の程度、全体的な背景やストーリー、ポルノ性などを総合して判断すると、児童・青少年を対象にした異常性欲を起こすのに十分な行為を含んでいて児童・青少年を対象にした性犯罪を誘発するおそれがある程度のものに限られると見ることができ、他の裁判官の判決や伴う補充的な解釈によって判断基準が具体化されて解決されるため、明快さの原則に違反するとはいえない。

「その他の性的行為」も対象条項の立法趣旨と法定刑の重さなどを考慮すると、児童・青少年性保護法第2条第4号で例示している「性交行為、類似性交行為、身体の全部または一部を接触・公開する一般人の性的羞恥心や嫌悪感を引き起こす行為、自慰行為」と同様に一般人にとって性的羞恥心や嫌悪感を作り出すのに十分な行為、つまり性的な行為を意味することを理解することができ、何が児童・青少年を対象とした性的な行為であることを法律で一律に定めておくことは困難であるため、「その他の性的行為」という包括的な規定形式を選んぶことは避けられない側面がある。したがって審判対象条項は罪刑法定主義の明快さの原則に違反しない。

○過剰禁止の原則に違反するかどうか
仮想の児童・青少年利用わいせつ物であっても、児童・青少年を性的対象とする表現物の持続的拡散との接触は、児童・青少年に性の歪曲された認識と異常な態度を形成するように仕向けることができ、実際に児童・青少年対象性犯罪者を相手にした調査結果などを総合すると、児童・青少年を潜在的性犯罪から保護し、児童・青少年に対する性犯罪に対して社会的警告をするためには、仮想の児童・青少年利用わいせつ物の配布等について重い刑罰とする必要がある。

また、仮想の児童・青少年利用わいせつ物は、実際の児童・青少年が登場する場合と同様に児童・青少年を対象にした異常性欲を起こすのに十分な程度のものであって、審判対象条項による処罰の対象は児童・青少年を対象にした性犯罪から児童・青少年を保護するための最小限の避けられない場合に限定され、罪質と非難可能性の面で一般的なポルノとは差があるため、審判対象条項が刑法上の頒布罪や情報通信網利用促進及び情報保護などに関する法律違反(ポルノ流布)で定められた法定刑よりも重い法定刑を定めているとしても、責任と刑罰の間に比例性を喪失していると見ることができず、児童・青少年の性保護という公益の重大さを考慮すると、法益の均衡性も満たす。したがって審判対象条項は過剰禁止原則に違反しない。

○審判対象条項は、仮想の児童・青少年利用わいせつ物と実際の児童・青少年が登場する児童・青少年利用わいせつ物の配布行為を同じ法定刑に、さらに仮想の児童・青少年利用わいせつ物も性的行為の表現程度に応じて法定刑を細分化せずに同じように規律しているが、児童・青少年に異常性欲を起こし児童・青少年を対象にした性犯罪につながる可能性があるという点で、刑罰と非難可能性の程度にほとんど差がなく、法定刑の上限だけが決まっており裁判官が法定刑の範囲内でいくらでも具体的妥当性を考慮した量刑の選択が可能であるため、審判対象条項が罰体系上のバランスを失い平等の原則に反すると見ることができない。

□反対意見(裁判官パク・ハンチョル、裁判官ギムイス、裁判官のイ・ジンソン、裁判官ギムチャンジョン)
○審判対象条項の「児童・青少年に認識することができる人」の部分の意味が明確であることは多数意見に同意するが、「児童・青少年に認識することができる表現物」の部分は、実際の児童・青少年が登場すると誤認するのに十分な描写された表現物だけを意味するのか、それとも児童・青少年を性的対象に連想させる表現物であれば、単に図、漫画で表現された児童・青少年のイメージもすべてこれに該当することができるかどうかを判断することが難しいため、処罰される行為が何であるかを事前に予測することができず、その判断を法執行機関や裁判官の補足的解釈に完全に任せているため、恣意的法解釈ないし執行を招く恐れさえある。

「その他の性的行為」の部分も、2005.12 29法改正(法律第7801号)で性行為の範囲を包括的に規定しわいせつな内容を表現したものに限定されていないものに改正した旨を考慮すると、多数意見のように必ずしも性的な行為を意味すると断定しにくく、児童青少年性保護法第2条第4号で既に「身体の全部または一部を接触・公開する行為として、一般人の性的羞恥心や嫌悪感を起こす程度に達する行為」という開放的かつ包括的な規定を置いているため、通常の判断能力を持っている人の立場からは処罰の対象となる「その他の性的行為」が何を意味するのか予測しにくいため、この部分も明快原則に違反する。
たとえ「その他の性的行為」の部分の意味が不明確であると見るのは難しい場合でも、「児童・青少年に認識することができる表現物」の部分の不確実性により、垂範者、一般国民はもちろん、法執行者でさえも、審判対象条項の適用対象である仮想の児童・青少年利用わいせつ物の範囲とその限界を明確に判断することが難しいため、最終的には審判対象条項は明快さの原則に違反する。

○不明確な規範をもとに刑事罰を加えることにより、憲法上保護されるべき行為まで禁止対象に網羅し必要以上の処罰をかけることができるため、過剰禁止の原則と調和しない
児童・青少年を潜在的性犯罪から保護するための立法目的自体は公正としても仮想の児童・青少年利用わいせつ物への接触と児童・青少年を相手にする性犯罪発生の間に因果関係が明確に証明されていない。これを理由仮想の児童・青少年利用わいせつ物の場合も性的搾取を受ける一次被害法益が存在する実際の児童・青少年が登場する場合と同様の法定刑に規律することは有害性に対する漠然とした疑問があるという可能性だけで表現物の内容を広範囲に規制することは許されない。

たとえ規制する必要がある場合でも、その法定刑のレベルを考慮すると仮想の児童・青少年利用わいせつ物の場合、実際の児童・青少年がその制作過程で性的対象として利用されていないにも潜在的性犯罪の触媒になることがある理由だけで、実際の児童・青少年が登場する場合と同様に上記のように重い刑に規律することは、罰の比例性の面でも適しない。
ところが、審判対象条項において「児童・青少年に認識することができる表現物」および「その他の性的行為」の意味が先に見たように不明確で処罰範囲が広範囲になることができ、その広汎性のために保護されるべき表現行為まで処罰するとその表現を萎縮させる恐れがあるため、審判対象条項は、表現の自由に対する過度な制限と過剰罰を招く余地がある。
さらに審判対象条項で定められた法定刑のレベルや処罰対象行為の広汎性による表現の自由の制限程度と刑罰の比例性喪失の程度は非常に大きいという点で、審判対象条項は、法益の均衡性の要件も満たしていないため、審判対象条項は過剰禁止原則に違反する。

原文 http://www.ccourt.go.kr/cckhome/comn/event/eventSearchTotalInfo.do?changeEventNo=2013%ED%97%8C%EA%B0%8017&viewType=3&searchType=1