シンポジウム「ポルノ被害と子どもの貧困」中里見先生

ポルノグラフィの再定義

法的にはポルノグラフィに被害者はいない。法的にはわいせつ物頒布に被害者はいない。しかし、ポルノグラフィは日本社会にあふれかえっている、商品の一群。膨大な被害者がいる。

ポルノグラフィの再定義。女性を見世物的に差別的に従属的に扱う性表現物

ポルノグラフィの被害の定義

  1. 制作被害(制作過程で生じる被害)
  2. 流通被害(流通・頒布されることによる追加的被害)
  3. 消費被害(仮定や職場でポルノ視聴、ポルノ行為を強要されること)
  4. 社会的被害 (a.不意に目撃しない権利 b.女性差別の強化)
  5. 存在被害(a.児童ポルノが存在し続けるかもという被害者の恐怖心や恥辱感の持続 b.撮影に同意していたが、後に脅迫や嫌がらせ)

社会的不平等まで考えると、社会的被害についてはおよそ被害を受けていない女性はいない。子どもも大人と同じようにポルノ被害を受けている

子どもが受けるポルノ被害防止策の現状

児童ポルノ法+各自治体の青少年健全育成条例

青少年健全育成条例「子どもの性的感情を〜」有害図書として指定。それを未成年者に売ることを禁止。ポルノ被害のうち4aだけを防ぐ極めて限定的な立法

児童ポルノ法にも限界。まる2の(i)制作被害を防ぎきれていない。(ii)流通規制が困難。中井氏は言葉を濁したけれどもXXXX(明確に作品名を発言)がインターネット上で販売されている。

バーチャル児童ポルノ

漫画・アニメ、パソコンゲームなどのバーチャルな児童ポルノが規制対象に含まれていません。子どもを性的な対象にする作品が自由に制作・販売・消費されている。そのなかには子どもを性的暴行虐待することを美化したり、ゲームにするものまで大量に生産・消費されている

そうしたバーチャルな児童ポルノの影響がバーチャルな世界にだけとどまるというのは合理性がない。現実の子どもにさまざまなポルノ被害を生んでいると思います。子どものとのセックス、子どもの性的虐待を美化し表現するようなバーチャルな児童ポルノが大量製造、大量消費されている現実が子どもに対する虐待であり、子どもの環境型ポルノ被害を生み、集団としての従属を生んでいると思います。実写の児童ポルノへの誘導というものも生みだし、子どもがポルノの制作被害を受けることを促進しているとも思います。

子どもポルノ被害を防ぐためには

発生原因を考える。大人の性の貧困が大人の性の被害を生んでいる。児童ポルノはそれが存在すること自体で子どもに被害を与えるものだ。成人ポルノというもう一つの大人向けとの密接な関係。成人ポルノというのは単に性行為を露骨に描く表現のことではありません。女性を従属的、差別的に描く作品のことです。社会で大量に消費されている性的表現がほとんどそれです。

ほとんどすべてがそれです。

成人ポルノの心臓

心臓――児童ポルノの原動力、心臓は人間の支配。権力の快楽と性の快楽を結びつけるところにある。人間の支配のエロスという心臓にとって、児童ポルノが生み出されている。なぜなら大人という子どもにとって支配的な存在が子どもという従属物を性的対象にするものだから。児童ポルノはまさに成人ポルノの極北であり、成人ポルノが極端なかたちをとったものにほかならない。

需要規制

子どもポルノの受容に対する規制が必要。自分で楽しむことを禁ずる法律がない。いわゆる先進国でロシアと日本だけだというのは皆さんご存じのとおりです。

成人ポルノを規制することが迂遠ですが児童ポルノの需要規制につながる

単純所持反対論に対する反論

  • ユーザを不当に侵害する。自分で楽しむために所持することを禁止するのは人権に反する
  • 当局による違法な捜査を可能とする

前者は本質的に人権侵害。バーチャル=美化し推奨するもの。人権とは言い難い。人権侵害に荷担し、助長する。後者はすべての犯罪捜査に言える。現実と遊離した批判だ。子どものセミヌードがほとんど取り締まられていない。警察は後ろ向きである。後者は説得力を欠く。

成人ポルノの規制

児童ポルノの背後にある最も重要な課題。表現の自由によって保護される聖域では決してない。社会的無関心によって放置された無法地帯。ポルノには構造的な人権侵害を生み出しています。ポルノ産業に対する恐怖に負けず取り組むことがそれが児童ポルノ被害を減らすことになると思っています。