児童の人身取引、児童買春と児童ポルノに関する国連特別報告者の日本訪問における任務終了にあたっての声明*3

注意:バッシング目的、特に第三者への邪推や誹謗中傷のための利用を禁じます。

2015年10月26日東京にて

おはようございます。本日はおいで頂きありがとうございます。

2015年10月19日から26日まで私をお招き頂いた日本政府に感謝したいと思います。8日間の任務の間に私は東京、大阪、川西と那覇を訪れました。そこで私は様々な省庁と内閣府、国会議員、司法および法執行当局、川西市の児童に関するオンブズマン、ICT企業、旅行業界の代表者、日本ユニセフ協会*1の代表者、児童の権利擁護団体、学術経験者、非政府組織だけでなく、若者と会って打ち合わせを行いました。また、ワンストップの危機センターや児童シェルター、児童の避難所、児童相談所、里親家庭や青少年の家を訪問しました。

訪問前、そして訪問中にご協力頂いた日本政府に感謝いたします。私が会ったすべての人々に、私は彼らのおもてなしと、児童の性的搾取に対する戦いを強化するためのオープンで建設的な対話に従事する準備に感謝の気持ちを表明したいと思います。また、日本ユニセフ協会のサポートと支援に感謝します。

私のこの度の訪問の目的は児童虐待記録物の製造所持販売などを含む児童買春および児童の性的搾取の状況を評価することでした。この児童への惨劇を防止し絶滅させ、そしてサバイバーが包括的なケアや回復および社会への再統合へのアクセスを得るための提言を得るためです。

日本における児童の性的搾取

訪問中私は児童性的搾取を促進しいずれは児童性的搾取へ繋がる複数の形態を発見しました。複数の商業活動における児童性的搾取を促進しつながることができる広大な用語の存在は現象の程度を反映しています。児童性的虐待のよく知られた形態に関する情報とデータは別として、新しい現象をじかに知りました。女子学生の間で流行している援助交際(金銭補償のあるデート);女子校生もしくはJKビジネス、たとえばJKお散歩(高校生と歩いてデートする)、着エロ(性的で刺激的なポーズをとる7歳から12歳の小学生を描写した写真など)*2、ジュニアアイドルといった女子学生により実行されるさまざまな活動のことです。ほとんどの場合新技術によって容易になったこれらの商業活動は多種多様に存在します。多くの場合において、これらの活動は、売春や児童虐待記録物の生産への関与といった性的搾取への潜在的な準備段階です。これらは巨大なビジネスを構成しており、社会に受け入れられ許容されているようです。

政府の公式な統計によると、児童買春は減少する一方で児童虐待記録物に関連する搾取の形態は増加しています。当局は児童買春の減少を説明できていないものの、児童虐待記録物の宣伝販売購入の増加は犯人の特定を困難にする新技術が主な原因としています。昨年改正された児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下、児童買春・児童ポルノ禁止法)により、店舗のける販売はかなり改善されました。しかし、児童虐待記録物はオンラインで簡単にアクセスできます。

日本で採択された前向きな政策

昨年の児童買春・児童ポルノ禁止法改正を歓迎します。この改正は国際的な人権規範および人権基準と近に国内法をもたらし、すでに見たように前向きな結果が出ています。

利害関係者との様々な打ち合わせのなかで、児童性的搾取と戦うことに貢献する多くの優れた実践についてメモをとりました。具体的には、警視庁、愛知県警、警察庁のオンライン児童虐待記録物との戦いを強調したいと思います。

必要なリソースと専門知識の配分を通じて、とりわけサイバートロールを実施することにより、オンラインの児童虐待記録物の利用可能性を抑えることができるということを彼らは示しています。警察はまた児童を対象としたインターネットの安全な使用に関する啓発活動に関与しています。被害児童や承認を含む司法手続きの過程で採用されている児童に思いやりある対策もまた私の注意を引きました。例えば、法廷審問での被害児童に対する質問の時間を減らすためのインタビューを使うことです。

犯罪化と法執行機関および検察は現象と闘ううえで重要な要素ではありますが、私たちはサバイバーのことを忘れてはなりません。

国家にはサバイバーのケアと回復および社会復帰を確保する義務があります。この点において、ワンストップ危機センターや児童シェルター、児童相談所、里親家庭や若者の家といった児童のケアと回復を担当するさまざまな施設によりもたらされる重要なサポートと支援(例えば保護と安全、医療、精神的社会的、法的な支援)に私は感謝したいと思います。

私はまた、公共分野と民間部門との協力の重要さもまた強調したいと思います。政府、警察、そして多くのICT企業と児童虐待記録物の検出・ブロック・削除するための様々なツールに感謝したい。この点で、私はインターネットコンテンツセーフティ協会やセーファーインターネット協会やインターネットホットラインセンターの果たす役割の重要性を強調したいと思います。

ギャップと課題

このように前向きの政策が実施されてはいるのですが、訪問中に私は児童の性的搾取を効率的に根絶し防止するために日本が取り組まなければならない数々のギャップに気付きました。

調査と訴追は被害児童による告発申し立てなしではほとんど開始されません。犯罪者はしばしば被害児童を知っていることを踏まえれば、後者(被害児童)にとって告訴することは大きな負担です。警察は児童虐待記録物の製造の被害児童を特定するための困難などの課題を克服するために、この点で積極的な役割を果たす必要があります。

更に、起訴されて有罪にたどり着いた数少ないケースにおいても、執行猶予や軽い罰則(罰金など)になることがしばしばあります。これらの罰則は犯罪の重大性に見合ったものではなく、一方で被害者は汚名を着せられ非難されます。加害者が被害者の年齢を知らない場合には容疑を晴らす証拠として受け入れられています。*3

ケアと回復に関連していえば、あらゆる種類の状況におかれた被害児童を支援する重要な役割があるにも関わらず、児童相談所はこの種のカテゴリの被害児童への支援を提供する用意がありません。第二次大戦後に孤児を支援する目的として作られた児童相談所は専門的なスタッフを持たず、適切なサービスを提供することができず、市町村レベルでは存在せず、被害児童にアクセスされることもありません。

仮提言

性的搾取のサバイバーは犯罪者ではなく被害者であり、人権を持つ者として扱われ尊重されるべきです。被害児童には司法へのアクセス、ケアと回復および社会復帰への権利を含む効果的な治療および救済を受ける権利があります。

捜査官・検事・法廷による法律の効果的な実施、先を見越した捜査、(被害状況の)再現なしの児童に優しい司法手続き、そして犯罪の重大性に相応する罰則を科すことを通して日本政府は児童性的搾取の犯罪に関する刑事免責と真剣に戦うべきです。

効果的にこの惨劇に対抗するために、日本政府は設計と調整およびフォローアップの担当者を指定することで児童の性的搾取への包括的な戦略を採用する必要があります。また、人身取引や貧困および児童福祉に採用された他の既に存在する政策との相補性を確認する必要があります。このような総合的な戦略はとりわけ以下の対策を含める必要があります。

  • 性的虐待や性的搾取の被害児童にとって、優しい報告や苦情および紹介メカニズム
  • ワンストップ危機センターの増設。専門要員を雇用および訓練し、児童相談所において性的搾取の被害児童にとって専門的なサービスを提供すること。たとえば里親家庭や青少年の家といった代替施設の建設。
  • 児童の権利の視点を取り入れて、児童に影響を与えるすべての事項について効果的な協議を確保すること
  • 少女、少年、LGBTの子どもたちに必要なケアや回復の提供するためにジェンダーの視点を採用すること。障害のある子ども、子どもを持つ若い母親に必要な支援を提供すること。
  • 研究者、検察官、裁判官、ソーシャルワーカーなど被害児童を取り扱うすべての専門家のために児童の人権と被害者の識別についての意識向上と訓練
  • 児童の性的搾取の影響に関する児童や若者の意識向上と教育
  • 予防の取り組みの一巻として、需要要因だけでなくメディアや広告の役割について取り組む
  • 上記の対策に必要なリソースを割り当て、長期的に持続可能な体制を確保する

最後に、私は犯罪者への刑事免責と戦うための包括的な法的枠組みの重要性を話を強調したいと思います。児童虐待記録物の所持に罰則をかけた昨年の法改正に見られるような前向きな動きがあるにも関わらず、国の法制度には児童保護のシステムに負の影響を与える多くの抜け穴が残っています。それゆえに、私は利害関係者、特に政府と内閣に以下のことを採用または法律を改正するよう求めます。

  • 結婚承諾年齢と性交合意年齢ともども年齢を引き上げる
  • オンラインにおける児童虐待記録物の閲覧とアクセスを犯罪化する
  • JKビジネスや着エロのように、児童(特に少女がかかわる)の性の商品化を利用し、性的搾取を容易にしあるいは性的搾取につながる商業活動を禁止する。
  • 極端な児童ポルノコンテンツのマンガを禁止する

私はまた、国境を越えた組織的犯罪に対するパレルモ条約を日本が批准するよう奨励します。パレルモ条約は児童の権利条約選択議定書と同じように女性と児童の人身取引を防止・抑制し、罰するものです。加えて、人権擁護法案の採択や国家レベルの児童のためのオンブズパーソン制度の創設を強く奨めます。

最後に、私はさまざまな児童の性的搾取および児童の性の商品化に関する根源的な原因、pushとpullの要因、範囲と影響について包括的な研究を行うよう政府に奨めます。これは効果的な政策立案とマンガとアニメの話題も含めた公の討論に資するためのものです。

貧困、ジェンダー不平等、社会的寛容と刑事免責は児童の性的搾取の蔓延の根本原因の一つです。児童の性的搾取の根絶に向けた実質的な進展を行いたいのであれば日本は今すぐこれらに取り組むべきです。

結論

児童の性的搾取とジェンダー不平等と対抗するための努力を強化するために昨年児童買春・児童ポルノ禁止法を改正したことで得られた機運に基づいて日本は事を進めるべきです。この法律改正は児童の性的搾取の根絶に繋がる一歩にすぎず、そのほかの措置を伴わない限りは無力です。

日本はすでに、2001年横浜で児童の性的搾取に関する第二回世界会議をホストすることでこの惨劇との戦いへコミットメントを示しています。これから先、2020年に日本で開催されるオリンピックは、児童性的搾取の効果的な根絶を通じて、日本が児童および若者を本当に大事だと思っていることを示すための良い機会を提供してくれるでしょう。

多くの対話者が述べたように「被害者が影に生きている一方で虐待者や犯罪者は太陽の下で歩くことが出来ます」。少女を含む児童が社会の中で場所を持っていることを確認することは日本政府の責任です。

私は2016年3月にジェノバの国連人権理事会に今回の訪問の包括的な報告書を発表します。

ご清聴ありがとうございました。あなたが持つかもしれない質問に私は喜んで答えましょう。

*1:Unicefとしか書かれていないが、次の段落から日本ユニセフ協会と判断しました。

*2:本声明では"child erotica"イコール着エロです

*3:これは不正確で、最低でも事前に被害者の年齢を確認する必要があったはず児童買春罪の場合無罪