全力でネタバレします。
未来の記憶
ゼーガペインADPはテレビ版を再構成してテレビ版の前史を描いた作品である。と全体としては言えるのだが、幾つか「テレビ版の前史」の枠に嵌まりきらない要素がある。ROOP3のタンデムでリョーコが見た「未来の記憶」が代表格だろう。
ところでテレビ版のリョーコは特別なウィザード、「ガンナーの思考を先読みすることで、機体の戦闘能力を極限まで引き出す」と語られるウィッチだ。「ガンナーの幻体データとシンクロできる能力」であるとも語られる。キョウちゃんの思考ルーチンをシミュレートして一瞬先の動作を予測しているということだろう。これは、時間の尺度からはごく近い距離にある「未来の記憶」を見る能力であると言い換えることができるのではないか。
ADPに戻る。ROOP3でリョーコが見た「未来の記憶」は色即是空空即是色の花や公園の破壊された遊具などテレビ版最終決戦時の映像だ。ROOP4とゼーガペイン本編の2ループ分、合わせて15か月先という、ウィッチであることを加味しても遠い距離にある「未来の記憶」だ。
ルーパ
ルーパはADPで新規投入されたAIである。ROOP3でキョウが妹ミサキが亡くなったことを思い出した直後のシーンで「妹さんが岬に行ったので、サキに行ったので私も次に行きます」と発言して以降姿を消す。ルーパの姿を見るとキョウが精神の平衡を崩すから姿を隠しているとも思ったが、それならばキョウがオケアノスから出撃しているときは姿を現してもいいはずだ。また、オケアノスと舞浜サーバー以外でルーパの姿を見ることはないことからすれば、ルーパは舞浜サーバと何らかの関係があるのではないか。
ルーパの台詞をそのまま「先に行った」のだと捉えると、この場合の先とは何か。ルーパの出てこないROOP4ではない。テレビ版でもない。
ミサキ・シズノとソゴル・キョウ(Ver2.0.1)との出会い
ADPで描かれるミサキ・シズノとソゴル・キョウ(Ver2.0.1)との出会いのシーンはテレビ版と異なっている。ソゴル・キョウと会う気はなかったと語るテレビ版と異なり、ADPのシズノはソゴル・キョウと会うために舞浜南高校を訪れている。ADPはテレビ版の前史として構成されているが、ADPから繋がるゼーガペイン本編はテレビ版とは少し異なるテレビ版だ。
ループする世界
全く同じことが起こる世界ではないが、緩衝しなければ同じ結末に収束する世界を我々視聴者は知っている。ループする世界、舞浜サーバーだ。
デジャブ
「どこかで見たことのあるような記憶」、デジャブもテレビ版で語られた事象だ。量子サーバー内で繰り返される一学期、セレブラントに覚醒できない幻体は消えた過去を持っていないはずなのだが、何故か引き出すことができる。量子サーバ内の情報は入学式の状態にリセットするにも係わらず。セレブラントが前ループの記憶を覚えていられるのだとしたら、前ループの記憶はどこに格納されているのだろうか。テレビ版のキョウ最終バージョンはVer1系列の記憶とVer2系列の記憶両方を持っている。しかし、Ver1系列の記憶は転送時のドライ&ウェットダメージで消えてしまったのではないのか。
これらは舞浜サーバーよりも容量の大きい量子サーバーに保存されていると考えればつじつまは合う。更には、舞浜サーバーのみならずゼーガペインという物語(ADP及びテレビ版)を格納できるほどの容量を持つ量子サーバー(以下、量子サーバーB)があると考えればどうだ。ゼーガペインという物語の時間は加速し、15か月先の未来もごく近い距離となるだろう。そう、リョーコは加速された時間の中で「未来の記憶」を垣間見、ルーパは言葉通りに次のゼーガペインに行ったのだ。
髪の長い先輩
ROOP3でキョウが名前を忘れてしまった髪の長い先輩はミサキ・シズノと考えられる。しかし、ADPに出てくるキョウの初恋の相手コハクラ・ナツミは短髪だ。そしてシマとイェルはキョウが深層意識にアクセスしていると語る。
この深霜意識とは量子サーバーBに保存されている情報であり、ゼーガペインの物語というインスタンスを走らせる際には使われない情報であるという解釈が成り立つ。しかし、なぜインスタンスを作成する際にミサキ・シズノは名前と簡単な容姿の情報くらいしか残されないのか。
現実世界と異なる舞浜南高校
舞浜南高校は工科大学付属高校で研究室が3つあるはずだが、舞浜サーバーの舞浜南高校には研究室が1つしかない。フナベリは何者かの作為を疑っている。量子サーバーに手を加えられる存在として筆頭に挙げられるのはナーガだろう。
ADP ROOP3で大人達の記憶が消えたことにより、ナーガは写真から消える。ルーシェンはナーガの顔を見ているはずなのだが、消えるのである。これもナーガによる作為なのではないだろうか。ナーガの顔が知られてはいけないのである。
幻体はナーガである
最も純粋な幻体といえるイェルが最もナーガに近いのではないか。
カノウ・トオル
シマが後を託すほどの漢がただの幻体であるはずがない。オルムウィルスで大混乱の中「世界の終わりの日」を録画出来ているのもよく考えるとおかしい。フナベリと同じくナーガ関係の研究者の一人といったところか。