昨年9月末、新政治民主連合のパク·ジュソン議員が提起した指摘事項にゲーム業界は動揺した。 韓国人を対象に公式ローカライズされたゲームサービスについて分類が正しく行われていないという指摘だ。いくつかの面では穏当な言葉だった。ただし、問題になったのは、パク·ジュソン議員が言及したゲームプラットフォームが、全世界を対象にサービスされていたFacebookとSteamだったからだ。 しかし、本当に重要なのはSteamに限られる断片的な状況ではない。次世代プラットフォームが台頭して新しいトレンドが台頭しようとしている今、現在施行されているゲームレーティングシステムはますます抜け穴が大きくなっているのは仕方ないことだ。法的に対処することができる領域は限られて、「ゲーム」の領域はますます広くなるからである。 この問題以外にも合理的かつ未来志向的なゲーム環境を整えるためには、協議と共存の方策が必要な状況だ。2015年4月9日。国会議員会館第1セミナー室で行われた「ゲームレーティング制度の改善討論会」は、まさにその会話のために作られた席だった。
討論会に先立ち、ユンテヨン文化コンテンツ産業室長の祝辞が行われた。ユンテヨン室長は「私たちゲーム産業も発展的な方向に議論が行われ、良い結果をもたらすことができたら良いと思っています」とし「今日の討論会はレーティング制度のための場である。この制度は青少年の保護、そして射幸性の高いゲームの規制のために作られた。従来の独自の分類、および民間によるレーティングを実行した時期もあったが、プラットフォームの変化と産業環境の変化に応じてレーティング制度もますます変わってきている」と述べた。 ユンテヨン室長はまた、「私たちは民間が自主性を確保し、さらに良い未来のためのレーティング案を作成するためにこの場に集まった。これからも文化体育観光部はゲーム業界との疎通と発展のためにいろいろ努力する」と伝えた。 開会の挨拶と祝辞が終わった後、本格的に始まった討論会では、1時間の主題発表と1時間の議論が行われた。
テーマ発表、「ゲームトレンドに応じてゲーム審議も変わる」
1.ゲームトレンドの変化:モバイルを超えスマートTV、仮想現実に(慶熙大学ユチャンソク教授)
慶熙大学文化観光コンテンツ学科ユチャンソク教授
討論会は、慶熙大学文化観光コンテンツ学科ユチャンソク教授の主題発表で始まった。ユチャンソク教授は、最近のゲームのトレンドを説明した。世界的な競争力により韓国の発展に貢献していたゲーム産業が中国市場の台頭のために競争力を失っており、これによって大手企業が事業を縮小したり離脱する事例が頻繁に起こると述べた。 続いて彼は、ウェアラブル、クラウドなどの新規プラットフォームが台頭しながら新しい技術の開発と受け入れ速度が速くなるに応じて、このような危機がさらに深刻していると述べた。そのため現在の状況からゲーム市場の変化を中核ゲームプラットフォームの観点から整理し、ゲーム業界の現在と未来の概括を介して、中長期的な観点からゲーム産業政策に配慮できる基盤を提供しようと討論会に参加したと述べた。 コンソール、オンライン、モバイルを超えて次世代ゲームプラットフォームとして台頭しているVR(Virtual Reality:バーチャルリアリティ)とスマートTVゲーム、そしてクラウドゲームサービスについて述べ、それぞれのプラットフォームの歴史と発展、そしてその効果を順次話した。 最後に、ユチャンソク教授は、次世代ゲーム産業戦略を構築するための政策的提言として「インフラの構築」と「柔軟なレーティング制度づくり」などに言及し、討論会の序章を開いた。
2.現行ゲーム物等級分類制度の導入の背景と変遷:独自の分類制度と民間分類制度を中心に(釜山大法学専門大学院ジョソヨウン教授)
続いて釜山大法学専門大学院のジョソヨウン教授が現行ゲームレーティング制度の導入背景と変遷について話した。ジョソヨウン教授は97年、改正映画振興法に適用された映画のレーティングをはじめ、これまで導入された各界各層のレーティングのモデルとその変遷について説明した。 2003年ゲームにレーティングが適用され必要性が初めて提起された後に、専門的な公共ゲームレーティング機関が設立され、民間のレーティング制度の導入へと方向性が決められた。同時に「ゲーム産業振興中長期計画」が策定され、ゲームのレーティング制度の改善と自律レーティング制度の課題を提示した。 ジョソヨウン教授は、2006年に勃発した海の話(?)事態の後、ゲームのレーティング制度は「射幸性ゲーム」に焦点が合わせられた。当時はゲームに対する社会的懸念のため、自律的なレーティング制への移行のための社会的な議論や合意が現実的に不可能であった。以後2008-2009年、自律的なレーティング制度の必要性を再議論し、2010-2011年にその導入案を具体化し、2011年には、モバイルオープンマーケットでゲームレーティング制度を導入したと語った。 以来、2014年、ゲームコンテンツレーティング委員会が発足し、PCオンライン、コンソールゲームなどゲーム全般の分類が行われている。
3.ゲーム物等級分類の現状と推移(ファンジェフンゲーム物等級委員会事務局長)
最後の問題提起は、ゲームレーティング委員会のファンジェフン事務局長による国内ゲーム物の分類の現状と推移の内容だった。彼は現在、韓国でゲームレーティングを担当する機関と事業者が全3種類のタイプに分かれており、2011年以前には、ゲームレーティング委員会が全体のプラットフォームと4つの年齢別レーティングのゲームレーティングを担当したと述べた。 しかし、ゲーム業界の要求と時代の流れに合わせてゲームに対する民間レーティング時代が用意されており、現在は2011年7月のゲーム法の改正で、モバイルオープンマーケットで流通するゲームのための独自の分類制度が導入されて以来、2013年5月改正法に合わせてPCオンライン、ビデオコンソールゲーム物に対する民間レーティング機関が参加して分類が行われていると述べた。
続いて彼は2012年から2014年までのゲームレーティング委員会の分類状況を一望して、2012年の総2797件、2013年は前年比37%減の1,747件、2014年は前年比40%減の1,038件になったたと述べた。ファンジェフン事務局長は、このような状況はゲーム業界のトレンドがPCオンラインゲームから自律的なレーティングを受けるモバイルゲーム市場に流れたために起こったことだとし、「民間レーティング機関が担当する領域が増え、ゲームレーティング委員会もこれに伴う事後対策に向かって業務を再構成している」と明らかにした。 そのため今はこれまでよりも各団体及び関係者たちとのコミュニケーションと教育が重要であり、民間領域でのレーティングの自浄作用と責任の付与が急がれると述べた。また、新たに浮上するプラットフォームとゲーム産業の発展に備えて未来志向的な法制度を準備するために努力しなければならないとして問題提起を終えた。
議論:市場環境の変化による分類法制度の改善の方向
指定討論:ゲーム技術と市場の環境の変化によるレーティング制度改善の方法(ガンテウク弁護士、ゲーム・文化評論家キム·サンウ博士、NHNキム·ジョンイル取締役)
ガンテウク弁護士:ゲーム産業の発展と現在、戦略などを話したが、プラットフォームの特性に応じて法制度を作らなければならないということに同意する。発表者の方々が言った改善の方向について同意し、この場に集って話をするようになったことをとても喜んでいる。 大きな枠組みでの自主規制に移行しなければならないということには同意するが、新規プラットフォームに対してどのように適用するかについては議論が必要だと考える。スマートTVはまだ距離が少し距離が遠いように見えるが、これについてもどのように法制的な制度を設けるか、VRやモバイルとの連携は切っても切れないので政策的にこれをどのように分類するかについての研究が必要だと思う。 自律的なレーティング制度を強化するとしても法制的な部分でのレーティングシステムがともに強化され、調和を成し遂げなければならないというのが私の考えである。
キム·サンウ博士:制度ではなく、文化の面で話してみよう。韓国ゲーム業界は非常に大きな危機を迎えている。内部、外部の問題にどうすることもできない状況だ。最近のトレンドの流れの変化に素早く対応できてきない。 資源、人材、企画などが全般的に弱体化している。最近10年間のゲームに関連する政策を見れば、常に、一方で振興を言いながら、一方ではゲームを規制する制度があふれ出た。文化コンテンツ産業全般について振興ではなく、抑制もしくは根幹を揺るがす制度がたくさん出てきたということである。ゲーム業界の従事者としては心理的圧迫を受けざるをえない状況が長く続いてきた。私の考えでは、文化コンテンツ産業を工業製品産業のような観点から眺めたためこのようなことが起こったようだ。冷蔵庫を作るのと同じ線上で見たらぢうだっただろう? 世界的に韓国のゲーム業界の地位は高い。しかし「麻薬」言及事件(訳注。<中毒予防管理と治療のための法律案>のことだと思われる。詳しくは弊ブログの過去記事を参考。)は対外的な雰囲気にも悪影響を及ぼしたところが少なくない。韓国は長い間ゲーム大国であり世界市場の注目を集めていたけれど、新しい文化の研究がなされるよりも、常識に反する規制が非常に多く提案された。文化は可能性が高く、冷蔵庫を売ってすぐにお金を稼ぐこととは異なっている。また、非常に長い間その影響を及ぼす。付加的なコンテンツも数多く生産されることも文化の力である。このため国家レベルでさらに力を与えなければならない。 私が推測するに、時期ごとにその時期を代表するメディアがあった。かつては本であり、また、かつてはTVであった。ゲームは今の時点で最も具体的に文化を表現する一種のジャンルと見ることができる。重要なのは若者がこのような文化に最もよく適応し馴染んでいることである。それでもゲームを取り巻く現実は厳しい。 大きな視点では「シャットダウン制」も文化の権利の侵害だ。文化は何かを伝えることだ。ゲームは文化的言語と見られ、これを妨害することは表現を防ぐものである。言葉を発せなくなるということだ。これが何の問題も起こさないとは考えられない。究極的には対話を通じた共生を妨げ、業界の状況を悪化させ果ては業界をなくすのと変わらない。 ゲーム好きなユーザーとして二つの事例を挙げたいと思う。一つは「ブリザード社」の事例、1つは、「ドーター2」の事例だ。二つの事例で言いたいことは一つだ。ブリザード社の事例では、自分たちの世界観を長い長い蓄積してきたし、これを素材に多文化政策を広げたのである。ウォークラフトとスタークラフトなどの文化コードの開始は、マニアックなジャンルであるTCGへと発展しHearthstoneとなった。このようなことが可能なのは、自分たちが始めた事柄を続けて整えてきた結果だ。次に「ドーター2」の話をしてみよう。ドーター2の特徴の一つは放送システムを内在化させたことだ。これによりゲームがスポーツに進む道を作り出した。現在のゲームは世界であり、生活であり、また社会であると同時にスポーツだ。「所詮はゲーム」ではない。このような状況を政府は理解せず、国内ゲーム業界も理解していなかったようだ。
NHNキム·ジョンイル取締役: VRの話が印象深かった。機器として認識していてもプラットフォームであるという認識はしていなかったようだ。私はスマートTVとクラウドの話をしたいと思う。私は「ファミリー·デバイス」という点に焦点を合わせたい。コンソールゲームにもある程度の類似性があるが、家族が一緒に楽しむことができる装置であること、その点に集中することだ。 まず、ゲーム利用者の年齢認証方式が今より緩和されるべきである。放送は青少年有害評価であっても時間を集中すれば青少年が障壁なしで視聴することができる。もし、ある若者が午前1時にTVに流れる放送を見たときにその放送事業者に刑事罰を課すことはないだろう。ところが、もし青少年がインターネットを介してこのようなコンテンツに遭遇した場合は刑事罰を受けることになる。 私たちが知っているオンラインとモバイル環境での認証方式は完全ではなく、事業者に大きな責任を与えている。もしスマートTVシステムに厳格な認証方式を必要とする場合、さらにコンテンツプロバイダにも責任を押し付けた場合、スマートTVシステムは軌道に乗るまでに多くの難関を経なければならない。ゲームも放送と同じレベルで認証が緩和されなければならないと考える。 第二に、スマートTVにも独自のレーティング制度が整備されるべきだと思う。現行法上は独自の分類がしにくくなっているが、プラットフォームの活性化のために果敢に変更する必要がある。 第三に、コンテンツの中立性が確保されなければならない。例えば、アダルトコンテンツが「家族機器」という理由でスマートTVでは放送不可されることがあってはならず、合理的理由がない場合はコンテンツの中立性は担保すべきだ。さらに審議ポリシーと基準が正しく整備された場合はスマートTVプラットフォームも活性化することができるだろう。 新しいプラットフォームの話をしてみよう。ジョソヨウン教授とファンジェフン事務局長の問題提起に関連して、独自のレーティング制度の改善について話したい。プラットフォームの特性によって独自の分類ができるように制度を拡大しなければならない。ギャンブルやポルノなどがあまりにも簡単にさらされる可能性がある恐れがある場合もある。しかし、現在の有数のゲームプラットフォームは、コンテンツプロバイダにサービスの中断、代金の支払い留保などの強力な法的装置を用意している。 さらに権限の責任を与えるほど「透明化」に進まなければならない。プラットフォームの影響力が大きくなると、プラットフォームの法令遵守への期待が高まり、プラットフォーム自体が強力な監視システムを作ることになる。しかし、これは個人情報の侵害になる可能性がある。すべての手順と規制は透明に行われなければならず、その過程を利用者に明確に公示しなければならない。
総合討論:未来のレーティング制度をどのように作っていくのだろうか?(司会者:公立大学法学科ファンスンフム教授)
ファンスンフム教授:今後も新たなプラットフォームが生じ技術が発展される場合、継続してこのような席が用意されるべきか? すべてを合わせた法制度が用意されることはないだろうか?という疑問がある。 もう一つは、海外のゲームがレーティングを受けなくても、オンラインからスライドさせることができている現状についてどのように対処すべきかである。二つの問題について話をしてみたい。
ユチャンソク教授:確率型アイテムに対する規制は前から存在してきた。最近、中国のモバイルゲームを熱心に研究していたが、驚くのが、ゲーム内のビジネスモデルが国内ゲームよりも5年程度は先に進んでいることだ。それは、不合理な試みが非常に多かったためである。レベルの高いキャラクターを作成して販売するなど、様々な実験を介してビジネスモデルをが作られたのだ。「規制」はこのような考えを防ぐ。社会ではなく、文化の概念でアクセスすることが適切ではないだろうか?最近よく聞く言葉の一つが、政府には政策があり、民間には対策があるという言葉だ。規制が強くても逃げ角は多く、このような状況が事業者を不法行為を促している。法現実が乖離した状況を継続して考慮する必要があるか?現実と一致する法的解決策を見つけることが合うのではないかと思う。
ジョソヨウン教授:ゲームについて法学者たちが興味を持っていないときに最初に関心を持って研究した人がファンスンフム教授である。当時ファンスンフム先生がおっしゃっていた言葉が現在の状況と似ている。自律レーティングの方向に進んでいる現在、法規制の副作用がよくあらわれているが、レーティング管理が事後管理システムに進んだ場合は、事後管理システムの整備が明確になされなければならないと考える。 ただし、現在の状況はあまりにも矛盾する部分が多いので、継続的にコミュニケーションと議論を続け、共存することができる方案を作成すべきだと考えている。
ファンジェフン事務局長:いろいろ考えていた。ゲームレーティング委員会で決めたことが事業者には規制として認識されることがあるが、私たちの目的は利用者を保護し、産業を振興させるためのものである。私たちが規制の原則と方向を決めるとき、事業者の論理と矛盾する部分が非常に多い。研究結果から、利用者が適切に利用できるようにしても、事業者との意見乖離は避けられない。奇妙なことは、事業者と利用者の間にも対立と協力が起こるということである。私たちが目指しているのは、最終的にはゲームを利用する子供を持つ親たちに法律と制度について正しく認識させ、理解させることである。お互いの見解を理解したとき、規制を受ける事業者との摩擦も同じ文脈で終息させることができないだろうか。
キム·ジョンイル取締役:新しいプラットフォームが出てくることに緊張しすぎているのではないかと思う。ゲームのレーティングのための政策自体に心的圧迫を感じているからではないだろうか?消費者保護の観点から考えると、大きくは無理なく行われるようで、より幅広く考えようとしたらむしろ足を引っ張るのではないと思うこともある。
ギムジョンドゥク代表: 大規模な事業者に関連した話はたくさん出てきたが、インディーズゲームや小規模事業者についての議論が進んでいない部分は残念だ。実際にも多くの困難を経験している部分である。今後は、これらについての議論も十分に進ませたい。
ファンジョンフム教授:小規模なゲームの流通についても議論されるべき部分であることは明らかである。今後もこのような席が開かれれば、必ずインディおよび小規模開発者の仕事のための議論も進めていこう。