ひまチャきSS 1-1

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すがすがしい朝だ。
窓を開け、外の空気を入れる。
この俺、海上貴宏の爽やかな一日はこうして始まる。
「おはよ、貴宏。今日も新幹線通勤のサラリーマンみたいに早起きだね」
「こゆ吉こそ、飛行機通学の学生みたいに早起きじゃねーかよ」
「学生? サラリーマンだって飛行機通学なんかしないっつーのよ」
「するわっ! 全世界の学生に謝れよ、お前」
この、Dカップを超越した胸を持つ女の子は、円澤小雪。通称、こゆ吉。胸が濃すぎて胸しか印象に残らない可哀想なやつだ。
「全世界あわせても、飛行機で通学するような学生はウチのクラスの姫しかいないと思うけどなー」
「うむ、妾がどうかしたのか?」
こゆ吉の乳を押しのけて顔を出したのは、通称姫こと本宮エステリア・ディノラード。頭にあひるの形をした王冠をかぶっている変なやつだ。『この王冠の美しさは王家の者にしか分からぬようだのう』と下民(つまり俺)を見下した口調で語っていたが、全世界の王家はそろいもそろって騙されていると思う。
「姫の二の腕はどこまで伸びるかって話をしてたんだ」
「無礼な! 妾がこの美貌を維持するためにどれだけの苦労を重ねていると思っている! 節制という言葉を知らない下賤な海上貴宏の三段腹ならいざ知ら痛い痛い痛い! やめてやめてお願い!」
アイアンクローから解放してやると、姫は、ぜはぜは言いながら、涙目でこちらをキッと睨んだ。
「おのれぃ、この屈辱、百代祟って許すまじ」
と言い捨てるとダッシュで姫は逃げ出した。俺と、姫との掛け合いを横で見ていたこゆ吉は、姫が角を曲がって見えなくなるまで見届ける。飛行機通学の話に戻ろうとしたらこゆ吉と目があった。
「あたしとしてた話と全然違うじゃん。そこまでして姫をからかいたいの? 恐るべし、からかイズム」
からかイズムとはからかイズムであって、はだかイズムではない。
「一文字しかあってないっつーのよ。まあいいや、あたし行くね」
そう言うと、こゆ吉は胸をばゆんばゆん揺らして野山へかけだしていった。
「野山じゃないっ!」



手早く制服に着替えると、俺は女子寮に向かう。女子寮の玄関で靴からスリッパに履き替えていると、猫タマを見かけたので声をかけた。
「おはようございます」
「おはよう海上くん。今日もお姉さんを起こしに来たの? 毎日大変ね」
猫タマとはウチのクラスのクラス委員のあだ名であって、猫又とはちょっと違う。
「猫タマはクラス委員長なんだから、俺の姉を起こしてくれてもいいのに」
「お姉さんを起こすことと、私がクラス委員長であることは関係ありません! あと猫タマ言うな!」
猫タマが怒った。背後に猫大帝のオーラが見えるくらい怒っていたので俺はその場から逃げ出すことにする。
「ところで、猫大帝は女子寮にいていいのか? 女子寮は男子禁制だぞ」
「君が言うなニャ」
もっともだった。