CEDAWに提出されたNGO Reportのうちポルノ被害と性暴力を考える会執筆箇所(パラグラフ7のみ) 原文はohchr(PDF)を参照

パラグラフ7
女性に対する暴力「マンガとポルノグラフィにおける性暴力への対策」

女性に対する暴力に関する委員会の一般的勧告19に従い、少女や女性に対するレイプや性暴力を含むビデオゲームやマンガの販売を禁止しそれらの製造者の意識を高めるための方策を示してください。また、女性を性暴力の対象とするものだけでなく女性を性的商業画像の描写の対象とするポルノビデオの大量生産・頒布・使用に対処する方策を示してください。

[現在の状況]

# ポルノ的なマンガ、アニメやゲームにおける性暴力描写

女性や少女に対する強姦や性暴力を描くアニメ、ゲームやマンガは刑法におけるわいせつ以外のいかなる法的制限はなく、広く頒布されている。
地方公共団体は青少年保護条例を独自に持っており、「有害図書」の未成年への販売を禁じている。これらの条例は店舗に「有害図書」とその他の商品を区分けして販売することを定めている。しかし、コンビニでは、性的に露骨な雑誌とその他の雑誌との区分けは事実上、同じ棚でわずか10cm高のプラスチックパネルで分けられているにすぎない。事実上、コンビニにおいては、ほとんど子どもから何も隠せてはいない上に子どもの目線の高さに展示されている。このように、日本における性的に露骨な書籍の販売状況はかなりひどいと言える。

性差別的な内容で知られるコンピューターゲーム『レイプレイ』はもはや市場では販売されていないが、似通ったゲームがいまだに広く販売されている。これらのゲームでプレイヤーは女性を辱める程度を競っている。このような現状の下で、そうしたゲームの制作者は(訳注:そうしたゲームが)どれだけ女性を貶めるかといったことは気付いていない。そうしたゲームの販売禁止に反対する人々は、クリエイターには「表現の自由」がありそうしたコンテンツは「キャラクターはフィクションであるから無害である」と主張する。これらの意見が販売禁止を難しくしている。

#実在女性が出演するポルノグラフィの問題

加えて、女性が専ら性暴力の対象となるポルノグラフィの大量生産、頒布、消費について何ら法的制限がない。ポルノ産業をモニタリングし命令する政府官庁はない。公式の研究はない。ポルノ産業は規制を受けておらず制御不能である。
ポルノグラフィ撮影中の女性に対する性暴力を認めた判決がある。加害者は強姦、暴行容疑で有罪になり、主犯は投獄された。しかし、制作されたDVDはいまだ合法であり頒布され続けている。被害女性をサポートするNGOは過去二年の間に100以上の電話相談を受けている。これらの電話によって実際の状況が明らかにされた。次のような明らかに重大な問題がある。

#契約における問題

ポルノグラフィの被害者をサポートするNGOは契約書のコピーを入手している。実在女性が出演する日本のポルノ産業では、性的な方法で女性を使用する権利はエージェント会社によって保持され、その権利は映画制作会社に販売される。映画制作会社はポルノグラフィを作成する際に女性を虐待する。したがって、実在女性が出演して製造されるポルノグラフィは性的人身取引の一形態とみなされるべきである。
ポルノグラフィに出演する女性は労働に対する限られた支払いを除いていかなる権利も許されていない。それゆえに、エージェント会社と映画制作会社は巨大な利益を上げている。このようにポルノ産業は搾取構造に基づいている。
契約書は女性にあらゆる法理的な権利、たとえば出演した「製品」の著作権、を放棄するように求める条項を含んでいる。たとえ映画会社が画像や映画を繰り返し用いたとしても女性は追加支払いを受けることはできない。製品の主な出演者であるにも関わらず彼女らはほとんどすべての権利を放棄させられる。その代わりに不当な義務を負う。

#性交もしくは肛門性交の問題

日本のいて、ほとんどのポルノグラフィ(セックスしているふりをした以前とは異なり)は実際に男女が性交している。それゆえ、女性はポルノグラフィ制作の途中で売春に巻き込まれたといえる。契約では一度撮影が終われば、映画制作会社は女性が感染病にかかったり撮影の結果妊娠したとしても責任を負わないと記載されている。

#詐欺と脅迫

多くの若い女性(未成年を含む)は詐欺と脅迫によってポルノグラフィに出演するよう強制されている。このような状況の一つの原因は、定常的に新鮮で若い女性を必要とするサイバーポルノ(インターネットポルノグラフィ)の普及である。需要は莫大であり、不本意な女性を誘惑することなしに満たすことはできない。エージェント会社は最初は、知人に気付かれることはない、仕事を選ぶことができる、よく知られた芸能人の経歴はポルノグラフィ俳優から始まったんだといって(訳注:不本意な女性を)騙す。女性が断ると、エージェントは極めて莫大なペナルティを支払う必要がある、両親にポルノグラフィに出演したことをばらすぞと脅迫する。こういった脅迫はオレオレ詐欺(高齢者を欺くことでお金をだまし取る日本でよく使われる詐欺テクニック)とかなり似ている。一見、女性は承諾しているようにみえるため、女性が被った害について不平を言うことは難しい。

#アダルトビデオの出演を拒否した女性に損害賠償を主張する事例

最近、法廷はこの現状における画期的な決定をした。ある映画制作会社は、会社が任意に決定した「残り9作品」への出演を断った女性を訴えた。映画制作会社は9作品の撮影に支障が生じたことから246万円を請求した。法廷は「ポルノグラフィに性交その他の行為が含まれているからといって自身の意思に反してポルノグラフィに従事させることは許されない」と宣言した。この裁判所の決定はペナルティで脅して撮影に同意させられようとしている女性達にとって大きな希望となるだろう。
女性差別撤廃条約はポルノグラフィーがジェンダーステレオタイプを強化し女性(特に少女)の自己尊厳を傷つけることを指摘している。言い換えれば、ポルノグラフィが男性の暴力と男性支配的な性的役割分担を押しつけることを重要視している。インターネットの普及はより重要となった。今日、ポルノグラフィの大量生産、大量頒布、大量消費が可能となり、状況は悪化している。

[提言]

1.制作会社側は女性が出演を断った場合にはペナルティを支払うよう脅迫することにより女性をポルノに出演させるため女性に強い身体的精神的圧力を加えている。それゆえ、政府はたとえ契約があったとしてもこのような行為は女性の意思に反しており加害者により重度の刑罰を加える必要があることを認識する必要がある。女性の権利が侵害された場合には、政府は彼女たちの主張を受け入れ、制作者に製品の流通を停止する責任を負わせるべきである。
2.ポルノ産業によって被害を受けている女性がいることは明らかである。これらの事実はNGOの救援活動によって明らかになった。政府はポルノグラフィに出演した女性に対する性暴力の被害者の実態を調べるために公式の調査を行う必要がある。
3.法廷で実害が証明された場合、DVDなどの「製品」の頒布と販売を制限する。
4.ポルノ産業の実像は不明である。したがってポルノ業界の実態を把握するための調査が行われるべきである。
5.仮想のキャラクターが登場するマンガやゲームの場合においても、女性と子どもに屈辱を与えることを目的としているのであれば、ヘイトスピーチの一種と見なすべきである。政府はそれらの製品を画像的な(訳注:ヘイト)表現や性暴力として規制し禁止することを検討する必要がある。