表現規制13のウソ その1 児童の権利条約選択議定書は非実在青少年を禁止している!

昔からよくあるウソの一つが、「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」(Optional Protocol to the Convention on the Rights of the Child on the sale of children,child prostitution and child pornography)が児童のキャラクターが性的な行為を行う漫画・アニメなどを禁止しているという解釈です。

まずは、本議定書における児童ポルノの定義を原文および外務省訳で確認しましょう。

Article 2(c) Child pornography means any representation, by whatever means, of a child engaged in real or simulated explicit sexual activities or any representation of the sexual parts of a child for primarily sexual purposes. 原文

第二条(c)「児童ポルノ」とは、現実の若しくは擬似のあからさまな性的な行為を行う児童のあらゆる表現(手段のいかんを問わない。)又は主として性的な目的のための児童の身体の性的な部位のあらゆる表現をいう。 外務省訳(※)リンク先pdf

非実在青少年が禁止されているという方の解釈は疑似の(simulated)かつ手段のいかんを問わない(by whatever means)のだから、実在しない児童の描写も禁止されているというものです。これは本当でしょうか。

まず、疑似の(simulated)について、米国の判決(United States v. Williams)から補助線を引きます。

And “simulated” sexual intercourse is not sexual intercourse that is merely suggested, but rather sexual intercourse that is explicitly portrayed, even though (through camera tricks or otherwise) it may not actually have occurred.

そして、"疑似の"性交とは、単に性交を示唆したというよりも、(カメラのトリックなどで)実際には行為をしていないとしても性交をしているようにあからさまに描写されていることである。

つまり、選択議定書の対象は「実際に性交をしていると明らかにわかる描写」若しくは「実際には性交をしていないのだけれど、性交をしているように見える描写」です。

次に、児童(child)の定義についてですが、これは実在児童が対象であると解されます(警察学論集第57巻8号 島戸純「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律」について」P113)。よって、漫画などで描かれる実在しないキャラクターは本選択定義書の範囲外です。

結論

「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」は非実在青少年を禁止していない。


漫画は選択議定書の対象外であるという認識は少なくとも2004年の児童虐待児童ポルノ法改正時から示されていますが、2013年になっても規制派は相変わらずに国際人権法(選択議定書)では禁止の対象であると言い続けています(週刊金曜日 2013.3.22(936号) P63)。このようなウソも百編言えば本当になるといった言論活動は歴史修正主義以外の何者でもないため、いい加減に止めて頂きたいものです。