大阪府 青少年を性的対象として扱う図書類の実態調査結果について

twitterでは冷静な議論ができているとの評価をされているこの調査結果、いささか気になる点がある。性的表現の定義がないこと。図書類を恣意的に選定しているにもかかわらず「対象図書類100冊のうち、性的表現のある図書類は55冊」という表現がされていることの二つだ。
何故気になるのかというと、20年前の有害コミック問題の「燃料」となった東京都の生活文化局婦人青少年部婦人計画科が発表したレポート「性の商品化に関する研究」と似ているところがあるからだ。

一、性的表現の定義がないこと
20年前の「性の商品化に関する研究」では「キス」「抱擁」「ベッド描写のみ」が性的表現に含まれていた。翻って、今回の実態調査結果では性的表現の定義が現段階で提示された資料には含まれていない。ただし、次項の結果を見る限りでは東京都の定義による性交および性交類似行為と遠くない定義だと思われる。

二、図書類の恣意的な選定
20年前の「性の商品化に関する研究」では総サンプル数1221本のうち成人男性向けが809本であり、そのうち性的表現が含まれるコマは全体の約半数であった。ところが、報道では成人男性向けが三分の二を占めるという点が抜け落ちていたため、すべての漫画の半分に性的表現が含まれているという誤解を受けることとなった。
翻って今回の実態調査では[http://www.pref.osaka.jp/hodo/attach/hodo-04303_7.pdf:title=図書類の選定方法[pdf]]にあるように雑協から55冊、その他ビデオ類も含めた45本から選ばれており、そのうち性的表現が含まれる作品は55冊である。またしても報道が(朝日新聞だったら泣き笑う)漫画の半数に性的表現が含まれている!と言い出しかねないので、詳しく中身を見ていこう。

今回の調査対象のうち、55本は雑協の雑誌類を、残る45本は雑協に含まれていない雑誌出版社の雑誌類である。まず、雑協の55本はランダム抽出ではなく「性表現を含んでいる可能性があるものを中心に」選定されていることに注意したい。
また、その他の45本のうち成年向け雑誌(5冊)、成年向けビデオ(5冊)は性表現が含まれていると考えてまず間違いはないだろう。同人誌(10冊)をとらのあななどの専門店で購入した場合、半数(5冊?)は成年向けと考えていいだろう。家庭用・パソコンゲームソフト(9冊)のうち、パソコンゲームソフトと家庭用が半々と考えると、ほぼ半分が成年向け(5冊?)。単行本(10冊)だが、雑協に属していない出版社が発行していることに注目すべき。単純に半数(5冊?)は成年向けとしておこう。
ここまででの数字を足すと少なくとも5+5+5?+5?+5?=25冊程度が成年向けと考えられる。実態調査結果で性的表現があるとされた55冊のうち30冊については既に有害図書類に指定されているという記述とも整合する(足りない分は、雑協にCOMIC快楽天ワニマガジン社Tech Gianエンターブレイン電撃姫アスキー・メディアワークスがいることから補完せよ)。つまり、性的表現があるとされた55冊のうち30冊は成年向け作品を選んできたので性的表現を含んでいる。

となると、残り70冊は成年向けではない雑誌類である。このうち有害図書類に該当するものは9冊であるが、大阪府で毎月10冊前後の有害図書指定をを受けているレディースコミックのことだと思われる。

結論としては、有害図書指定されるのは成年向け作品とレディースコミックであるという、まぁそうだよねぇという結論。

参考資料
創出版 「有害」コミック問題を考える P208〜P223