ひまチャきSS 1-7

思わぬハプニングで時間をとられたが、気を取り直してルーン先生が転校生をつれて教室に入ってきた。
1人目は長身(ねねねえより高い)の、すらりと伸びた手足が健康的な小麦色に色づいている活発さを感じさせる少女だ。
2人目はナノ子以上こゆ吉未満の背丈、ナノ子以上こゆ吉未満(たいがいはここに入る)の胸をもつ、これまた健康的な肌だがどことなくこゆ吉と同じ野生のにおいがする少女だった。どちらも美少女だ。。
浮かれたクラス中の男子が口笛を吹き、クラス中の女子がそんな男子を軽蔑した目で見守っていた。
「ヒロちゃん、ヒロちゃん」
「小声で話しても意味ないぞ、ナノ子」
ナノ子は一番前の席に座っているので、後ろを向くととっても目立つ。
「あとで入ってきた子が、ヒロちゃんが登っていた木に体当たりした子ナノです」
「本当か!?」
「自信はないのですけど……」
1人目――授業前に出逢った少女が教室を見渡している。何か探しているようだ。ぐるりと一周し、彼女の正面にいた俺の顔をみとめると驚いたような顔をした。
「卿はさきほど、猫殿を助けて頂いた恩人ではないか! こうも早くに再見できるとは考慮の外だ!」
「俺は、予想外をつくことに関しては天才と呼ばれているからな」
「それ褒め言葉じゃないよ? 貴宏」
「でも、ある意味褒め言葉なのです……」
「はっはっはっ! 善哉善哉、天才は凡人の理解が及ぶところではないと言うからな! して、卿の名前は何という?」
「名を聞く際は自分から名乗るのが礼儀だろう」
という礼儀知らずはどっちなのか分からない台詞にも彼女は怒らず、
「いや、私のしたことがとんだ手落ちであった。私の名は――」
そこで少女は背を向けて黒板に向き直ると、チョークを手にとって自分の名前を書こうとしたところで2人目の転校生にチョークをかっさらわれた。
背が低い方の転校生はそのまま、意外と達筆な文字で自身の名前を黒板に書き付ける。

天道院咲夜。

そこには、見覚えのある文字が躍っていた。