ひまちゃきSS 1-5

結論から話すと、猫は無事だった。とナノ子が言っていた。というのも、俺が頭を打って気絶している最中に猫は逃げ出してしまったので、どうなったのか俺は分からないからだ。俺が覚えているのは、俺が目を覚ますやどアップで飛び込んできた女の子の顔で、
「誠にかたじけない。感謝の念は万の言葉を尽くしても語り尽くせるものではないが、やんぬるかな、私は職員室から呼び出しをかけられている。一宿一飯の恩義を忘れてはならぬという、また相見えることがあらばこの恩は必ず返させて頂くことを約束しよう」
と早口でまくしたてたと思えば、返事する間もなく立ち去ってしまったことだけが記憶に残っている。
ちなみに木に体当たりした人影の方は、気絶した俺に注意が向いたために確認する余裕がなかったらしい。くそう、今度会ったら「や、やめて、そんなことされたらお嫁に行けなくなっちゃう」と叫ばせる。

うぃーっすと、気のいいクラスメイトと挨拶を交わしながら席に着いた。
「ヒロ海上、頭ハ大丈夫カ」
とマジぽんが言った。
「いや、その言い方は誤解されるだろ」
「まるでヒロくんの成績が悪いみたいナノです」
「ソンナツモリデハナカッタ……」
いや、ありがたいけどね。
「まてよ、一部始終を目撃したのか?」
「アア、木カラ落チテ痛ソウダッタ」
一縷の望みを見つけた気持ちだ。
「もしかして、俺が登っていた木に体当たりした犯人の顔を見てないか?」
「ワカラナイ……僕ハ駄目ダ」
がっくりと手を地に付けてマジぽんが落ちこんだ。
「それはそれとしてじゃ。年中バカなことばかり考えておるのに、どうして海上貴宏は常に学年トップなのじゃ? 妾はそこが不思議でたまらん」
「年中鯖なことを考えているよりはましだ」
「意味分からんっ!」
姫がキれた。
「にゅふふ……ヒロちゃんの頭の回転が速いってことナノです」
「早すぎて常識から遠ざかっていはいないかの?」
「否定できないよなー」
なんて朝に相応しい馬鹿話をしているうちに、ルーン先生がHRしに教室へやってきた。