本日の読書


前田圭士『ゲームシナリオライターの仕事』

有川浩『図書館危機』


前者はシナリオの基礎を起・承・転・結に分けて説明する書籍だ。受け手側ではなく作る側の視点を徹底して意識に入れて書かれている。いかにゲームシナリオを作るかに視点を置いたこの本はとても読みやすく、下手をするとゲームシナリオを裏読みする手助けとなる危険さを持っている。わざわざこのような本を出したのはゲームの資金面・組織面での大作化が進んだ今日、人の興味を集めるためのムービーや台詞ばかり「出来がよい」作品に対する警句か。スクウェア・エニックスシナリオライターはこの本を百回は読めと言いたい。

文中で述べられていることは実に基礎的と思われることばかり。だけど、素人にはそれが出来ないんだよねえ。まず、結論から書き始めることからがとても難しい。結論が見えてないのに何故書き始められるんだ、と言われればその通り。最後にシナリオ書きになるための三箇条を。

  • 「なぜ」面白いのか?を考えるクセをつける
  • 面白いと思ったことをマメにメモにして残す
  • シナリオは偶然の産物ではなく、人間が作るものだと強く意識する


後者は図書館シリーズの第三巻。表現規制に関心を持っている人には是非読んで欲しい作品だ。政治的関心を抜きにしてもクオリティの高い作品だと思う。物語の華である図書館特殊部隊VS良化特務機関の戦闘、そこにたどり着くまでの図書館VSメディア良化委員会の政治的駆け引き、更には図書館内部での行政派VS原則派VS中立派の対立と、複数のレイヤーに渡って設定されている組織の対立構造が物語に深みを生んでいる。この構図の中で組織間の人間模様を描くことに止まらず、「憧れの王子様は実はあの人だった!」というベタな恋愛物語を取り入れ、主人公の周りの恋愛模様を描き、物語の緩急をつける戦闘シーンの描写にも手を抜かず、それでいて表現規制について考えさせる作品に仕上がっている。なんてマルチタスクだ。


主人公の立ち位置も憎い。全国初の女性特殊部隊員でありながら、本の分類など図書館員としての基礎知識はダメでとっくに成人しているのに子供と同じ目線でいられるような子供で戦闘員としての資質もそういうほどではない、人に誇れるのは本を守るという図書館員としての想いと早さなら誰にも負けない足だけです、という愛嬌ある設定だ。だからこそ感情移入ができるし、完璧型の手塚や柴崎のキャラクターを立たせることができる。


図書館シリーズが何故面白いかを自分なりに説明してみようとしたが、難しいねこりゃ


あとは周防正行それでもボクはやってない』を読んだ。映画の副読本。ただそれだけ。