駐禁取り締まり委託先36法人に警察OB 14法人新規
6月1日から、民間人が駐車違反の取り締まりを始める。警察から任務を託される全国74法人に朝日新聞がアンケートしたところ、回答を寄せた法人の7割が警察の再就職先だったことがわかった。14法人は、今回の業務にあたり54人を新規採用していた。小泉内閣の「官から民へ」の掛け声とは裏腹の実情が浮かび上がった。
回答を寄せた53法人のうち、警察OBを雇用しているのは36法人。人数を回答しなかった3法人を除くと、警察OBは計334人(新規採用を含む)を数える。21法人は未回答だった。
74法人は各都道府県警の競争入札で選ばれ、全国120地区で取り締まりにあたる。警視庁管内の入札では14地区に延べ116法人が参加し、価格のほか、公平性、適正性、確実性を加味した総合評価で選ばれた。22社が殺到した地区もあった。駐車監視員は警察官に準じる「みなし公務員」として業務にあたる。
警察庁は、民間委託のねらいを「警察官を交通取り締まりから犯罪捜査へ振り向けることだ」と説明する。しかし、同庁の試算によると、捜査に振り向けられる規模は「全国で500人程度」にとどまる。
違法駐車が横行する大阪市の繁華街で取り締まりを担うのは、財団法人「大阪府交通安全協会」。200人以上の警察OBを抱える全国屈指の「警察の天下り先」だ。
府警は「協会は以前からレッカー移動やパーキングメーターの管理をしており、知識やノウハウ、信用性に優れている」と説明。協会も「全国の業者の模範となりたい」と話す。
和歌山市でも、県交通安全協会が受注した。免許更新時の講習など2億数千万円の受託業務を通じて県警とのつながりも深いが、警察OBの受け入れについては回答を拒んだ。
東京・新宿では、警備会社「ジェイ・エス・エス」が取り締まる。警察官僚出身の亀井静香衆院議員が自ら「生みの親」と公言し、設立当初、亀井氏が顧問、元警視総監が代表取締役についた。今回、新たに5人の警察OBを採用した。「交通にからむ業務なので、経験者が必要だ。幹部としてではなく、全員現場で働く」(担当者)
委託先が天下りの温床になる恐れは、道路交通法が改正された04年の国会審議で指摘されていた。当時の小野清子国家公安委員長は「警察に都合のいいところに委託できない仕組みにすることと、委託手続きの透明性を確保することが重要だ」と答弁している。
天下り批判について、警察庁は「特にコメントはない」、警視庁は「競争入札により適正に決定した」と話している。
旧日本道路公団から天下りを受け入れ、運転手派遣で年間19億円の収入を得ている、とされた日本道路興運(東京都)も含まれている。
規制緩和で生まれた業態が天下りの受け皿になる構図は、建築確認業務の民間開放でもみられた。道路関係4公団民営化推進委員だった猪瀬直樹氏は「本当に『官から民へ』が実現されているのか。問題は民営化の中身。公平性が保たれるのか、警察と業者は透明性を高め、国民に情報を公開すべきだ」と指摘した。
《民間委託後の取り締まり》 駐車監視員として登録しているのは1580人。監視員は違法駐車を見つけたら、駐車時間の長短にかかわらずカメラで撮影し、ステッカーをつける。民間委託されない地域でも、警察官が同じ方法で取り締まることになる。各警察署はホームページなどで、取り締まる路線と時間を公表している。
「各警察署はホームページなどで、取り締まる路線と時間を公表している」のであれば、Nシステムの設置場所も同じ論理で公表すべきだろう。
またしても日本から寛容さが消えていく。