非実在青少年をどこまで規制できる根拠があるか 0.1版

児童ポルノを規制すべき理由として次のものが挙げられます。

  • 1.児童虐待の成果物である
  • 2.児童ポルノ被害者のトラウマを刺激するため(PTSD
  • 3.性犯罪者が児童に児童ポルノを見せることにより児童の性的観念を変容させる恐れ


では、非実在青少年についてどこまで規制できる根拠があるのでしょうか。

1.言うまでもありませんが、実在児童を虐待して得られた成果物ではありません。この理由では規制できません。

2.類似例を考えてみましょう。連続殺人犯に襲われて辛くも命を長らえた人物Aが、連続殺人犯にも殺人を犯す理由があったのだとする小説の出版を差し止めるよう裁判所に申し立てたとします。この場合、裁判所は出版差し止めを認めることはないでしょう。
理由は3つ考えられます。

  • 2a.人物Aの最大幸福のためには出版差し止めが最適と思われますが、個人もしくは集団の利益を最大化するため言論の自由を差し止められるという規定がありません。出版物にAさんの名誉を毀損する内容が含まれているなど個別具体的にAさんの人権が侵されている場合は別となりますが、Aさんが不快であるという理由からは言論の自由を制限できません。

(ただし、出版差し止めはなくとも、PTSDの発生を以ってAさんから出版者に対する損害賠償請求は認められるかもしれません。)

  • 2b.犯人の動機は何かという真実追究権により出版者は守られているからです
  • 2c.殺人犯は許されないという公然性を脅かすものとして、それ自体が表現物であるからです

さて、これを非実在青少年に対して適用してみましょう。
2a.は同上です。
2b.作品の性質によります。ストーリー性がない作品は含まれないでしょう。
2c.も同上ですが、敢えて再度言います。18歳未満の児童に対する青少年は許されないという公然性を脅かすものとして、それ自体が表現物であるからです(もちろん、非実在青少年という言論だからこそ言えることです)

2b.は作品によっては認められないかもしれませんが、総合的に見てこの理由で規制することはできないでしょう。

3.世界の多くの国で児童ポルノ法に頒布罪が適用されている以上、児童ポルノ所持者が他人に児童ポルノを頒布することそのものが頒布罪に含まれています。児童ポルノを児童に見せることを個別で規制する必要がありません。
性犯罪者が児童に見せることにより児童性的虐待へと至る障壁を低くさせることができるものとして別途挙げられるものは擬似的な児童ポルノと言えるでしょう。擬似的な児童ポルノにはモーフィングを含むCG、非実在青少年もしくは性愛小説が含まれます(※)。また、児童ポルノではない以上、対応策としてはゾーニングのみが許されます(禁止はできません)。

※現行の児童ポルノの定義「次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」からすると、性愛小説を含めることは過大な解釈だと思います。また、性愛小説まで含めると「禁止の目的が思想の伝播または情報の流布を妨げる場合はいつでも、言論の自由が保障される」に違反する可能性が高くなります。

この場合、擬似児童ポルノ規制の方法は理念的に次の3段階があるでしょう。

3a.は実質的に単純所持禁止が含まれているためゾーニングでは対処できません。よって、3b.か3c.が法的な枠組みで対処できる内容となります。

さて、非実在青少年の場合の適用ですが、児童と性交する内容であるからと言って児童との性交を推奨しているとは限りません。言論と行為の間には境界があります。児童ポルノより概念は限定的であるべきです。
(まず、マンガが現実とイコールだと思っている子どもは存在しません。子どもがいもしないサンタクロースを信じているのは親が信じさせているからです。自分が仮面ライダーに変身できないとしても、”ここではない”どこかでは仮面ライダーは実在します。よって、児童の性的観念を変容させる可能性はCGより小さいものと考えられます。といった反論もできますが、証明できないのでここでは理由として挙げません)

ここで非実在青少年の概念を思い出してみましょう。18歳未満であると認識されるキャラクターによる性行為および性的類似行為、です。限定できる箇所は二つ。「18歳未満」か「性行為」です。

  • 3b1.13歳未満であると作品中で明示されているキャラクターによる性行為および性的類似行為を禁ずる
  • 3b2.18歳未満であると作品中で明示されているキャラクターに対し、強制的に(性行為および性的類似行為に及ぶまでに了解を得ず)性行為および性的類似行為を行うことを禁ずる
  • 3c1.性的虐待目的で児童に非実在青少年を見せることを禁ずる

3b1.3b2.ともに出版禁止ではなくゾーニングです。なぜなら、頒布が禁じられている以上、対児童に限って規制される事柄は「性犯罪者が児童ポルノを児童に見せること」であると理解するほかにないからです。
3b1.は出版倫理協会が検討しているとされているものです。3b2.は最初は嫌がっていた子どもが性的快楽を得て……という都側の説明に対する回答となります。3c1.は性的虐待目的の立証が難しいため都側は納得できないでしょうが、言論の自由を奪う危険性は最小限であるように思えます。


男女共同参画

  • 1.ポルノグラフィーは女性が発言する機会を抑圧している
  • 2.ポルノグラフィーは女性に対する暴力である。女性の人権に対する侵害である
  • 3.ポルノグラフィーは父性至上主義である

1.男女共同参画会議がポルノグラフィーを規制しようと提起できる時点で抑圧されていません。
2.ポルノグラフィーが女性に対する性暴力を描いているからといって、それが目的ではありません。何者かの利益のために言論の自由が制限されるという法理はありません。
3.ポルノグラフィーは保守主義者ほど広範のこと(妻は家事をやるべきだ、など)を伝えていません。

プラス、人権擁護法的性質を持つにもかかわらず下記のことが考慮されていないことが挙げられます。

  1. パリ原則に基づき、政府(この場合は県)から独立した委員会を組織すること
  2. 是正勧告に対する反論制度を保証すること
  3. 人権侵害の定義・対象を明確にすること