メイザーズぬまきち講演会 メモ1「メイザーズぬまきち氏の自己紹介とゲームの制作について」

ほぼメモ通り、ところどころメモが読みなくて意訳している代物なので内容は不正確であることをご了承の上お読みください。

自己紹介

昨年8月ソフ倫により、成年向けPCゲームの総称を「R−18ゲーム」と呼ぶことに決定したため、この公演では「R−18ゲーム」と呼ぶ。個人的にはエロゲ、もしくは美少女ゲームが正しいと思うけれども。

コンシューマでやっていた序盤は問題プロジェクトの火消し役として働いていた。コンシューマーからPCゲームに移った当初、コンシューマーゲームのパブリッシャーは300社ほどあったが、今では常連の十数社が残るのみ。6〜7割はケータイコンテンツの下請けになり、一部がR−18ゲームに移った。

当時〜現在にかけてR−18ゲーム業界に参加したのは、エロゲ古参から独立したメーカ、コンシューマくずれ、同人上がり。同人くずれと言われるけれど、同人は別流通だから上も下もないと思っている。

ゲームデザインの方法は多摩豊先生、テキストの書き方は川本耕次先生に習った。多摩豊先生はもう亡くなられたが、川本耕次先生には長生きして頂きたい。

ゲームの制作について

いくつかCGができあがってきたら流通さんに営業開始。ニコ動の「〜をエロゲ化してみる」でわかるようにパターン化されているのもあって、オープニングは外注か片手間に作る。専業の位置づけではない。

キャラクター

キャラクターの配置にはセオリー・黄金律がある。同級生がルーツ。それを窪田正義氏が『卒業』『センチメンタルグラフティ』でキャラ比率・色合いなどパターンの法則性として発展、定義した。以降は模索がなくなり計算式に沿って配置されることが多い。ただし、メイザーズぬまきち氏は最近、パターンを外すようにしている。

レイアウト、原画

アニメーションは複数の原画家があげた原画を作画監督が統一する。一方、R−18ゲームではそれぞれのキャラクターをそれぞれの原画家が担当する。原画が花形であるということもあり、ディズニー的。

原画のやりかたは昔から変わっていない。アニメーションとほぼ同じやり方。CGの枚数が経費に直結する。メインキャラクターは5人・CG85枚が標準だったが、市場の縮小により最近は減少している。Overflowは原画に金をかけすぎている。

シナリオ

緻密、複雑なシナリオを作っては組み込みでエラーを出している。フルプライスで1.2MB〜5MBのボリュームが標準だが、これを越えるものは年に何本かでる「これは売れるしかないよねってもの」だけ。たとえば『クドわふたー』とかw

分業で複数人がシナリオを書くことも多い。一人250Kとすると、ラノベと同じように3ヶ月で1作品というペースで作成することもできる。OverflowはそれができてないからSchool Daysに3年かかった。

彩色、背景

彩色は原画についてやり方が確立しているため遅れているときは外注することもできる。ゲーム品質が彩色で決まるところがあるので彩色チーフは重要。Overflowの背景はCGで作っている。

音声収録

音声収録は反省室みたいなところに声優さんが座って、一人もくもくと電話帳のように分厚いシナリオを読んでゆくお仕事。ドラマCDなどを除いて、声優さんが一緒にしゃべることはない。Overflowはそんな有名どころを使ってないから分からないが、エロゲ声優はアニメ声優よりもうかるって本当? Overflowでは名前よりキャラクターに合っているかのオーディション重視。

組み込み

一般的にゲームエンジンには吉里吉里やNScrpiterを使う。吉里吉里は毎週出る体験版を研究することで汎用性・高機能を実現している。NScrpiterの高橋直樹氏は話を聞いていないのに正解を答えることのできるすごい方。

メイザーズぬまきち講演会 メモ2「R−18ゲームの現状と表現規制について」

R−18ゲームの現状

店舗に届く前に違法ダウンロードが出回るのもR−18ゲームの特徴。ロマンシング詐欺のときは電話がたくさんかかってきた。さぞかし儲かっているんだろうと思ったら、額面通り払った人はそんなにいなかった。海賊版を入手する人のリテラシも高まってきたようだw

近年、DL販売という形態もあるが現状では売れない。DL販売しているサイトは同人、AVも売っているが、初心者は何も知らない作品より二次同人の方を買うのではないだろうか。

R−18ゲームの作成本数は2001年から半分未満に減少、出荷本数も半分強に減少している。にも関わらず加盟会社数は2割弱しか減ってない。パイの奪い合いになっている。

P2Pは個人的には止められないと思っている。トラフィックを見る限り、影響がないとは言わないが皆が言うほど大きくはないのではないか。オンライン認証はプロテクトとしては効果が高いが、売り上げは変わらない。認証会社に支払う費用を考えると儲からないこともある。個人認証の概念はよいが、今の形では意味がない。海外では、追加コンテンツをダウンロードする権利をソフト本体1つに対して1回だけ有効にするワンタイムチケット制がある。中古対策として、ダウンロードする権利を10ドルで売ることもある。

海外からのバッシングについて

エロ本を見るとムラムラして犯罪に走るという考えは思い込み、嘘。2007年のアメリカで科学的に検証され、否定されている。インタラクティブメディアによって、人間がどう反応するかという実験。そのため、アメリカではゲーム有害論の影響力は小さくなっている。だからか、ゲーム有害論で有名なアンダーソン教授が今年「最後の実験」を行うと予告。保守派から金が出ている。

昨日のニューヨークタイムズハーバード大学の教授がこんなことを言っていた。

Q.不況なのに犯罪が減っているのは何故? A.ゲームでフラストレーションを発散しているからです。

ゲームをやると人を殺すとか言っているのはイギリスと日本だけだ。「見たくない人には見せない」「有害ではない」ということを主張してゆく必要がある。東大総長の濱田教授も言っている。「結局のところ、稟議は国民にどれだけ理解、支持されるかという事実が大事」

レイプレイ騒動

【イギリス】ゲームバッシングで有名なヴァズ議員が議会で「強姦ゲームがある!」と発言。「そんなもんはない!」と反論される。実際、無かったのでアマゾンのマーケットプレイスで中古の日本のゲーム『レイプレイ』を入手。「あるぜ!」と主張するが正規流通品ではないため、ゲーム規制派の議長を含め全員スルー。

アメリカ】非実在NGOをでっちあげて蓄財していた議員をイクオリティ・ナウがたたきつけてレイプレイをAmazonから削除させた。ガーディアン紙に「ポルノは世相を映す物で、隠しても意味がないよ」という記事を出されて沈静化した。

【日本】ヴァズ議員の公金横領のニュースが伝わる一日前に読売新聞が取り上げる。海外の動きをよくわかってないソフ倫が自主規制。美少女ゲームというのもアレなのでR−18ゲームと呼称することに決定する。

【インド】Time of Indiaで取り上げられる。インドと倫理観が違う日本のゲームをミャンマー人が勝手に翻訳して持ち込んだ。ミャンマー人けしからん。後半はインターネット禁止論。

青少年に有害?

去年、ガーディアン紙が「ゲームで影響受けるなんてありえないよ」という記事を掲載。イクオリティ・ナウのジャクリーン・ハントが反論するも、その反論記事が空前のバッシングを受ける。

どんなに有害な内容であっても、親の態度によって反応が怒る。(見るのやめよう、となる)というカルフォルニア大の実験。

法政大学の越智教授が海外の研究を紹介している。エロいものを見ると犯罪が抑止されるという飽和療法。カルフォルニアバーモンド大のマーシャル教授の研究によると、通常の性犯罪者の再犯率は32%。飽和療法を実施した性犯罪者の再犯率は14%。特に、ペドフェリアに対しては効果があり、再犯率は3%。去勢した人の再犯率が15%なのだから、その効果のほどが見て取れる。

海外からの圧力、という話がある場合はオリジナルソースを見るようにする。害はないんだよ、といういことを皆に言っていく。皆が害がないという共通認識を持てば変わる。

メイザーズぬまきち講演会 メモ3「昼間たかし氏と吉田正高氏のコメント」

昼間たかし

昨日公開の『おやすみアンモナイト』の脚本を書いたのでみんな見て。映画といえば、シネコンが8割で、インディーズは残りの2割で勝負しないといけない。認知すら難しい。わかりやすい映画ばかりになっている。

近年は産業論、市場論の研究が進んできた。経産省の報告書ではデジタルコンテンツ産業を20兆まで拡大するため海外展開!ということになっているがR−18ゲームには関係ないしPCゲームは海外で売れてない。

ひぐらしのフランス語版が出たけど、全くやっている人がいないように見える。家庭用ゲームを除いて、オタク文化は日本のみはやっているニッチ産業。海外でもオタク文化がうけてる?そんなことはない。過去北米でアニメDVDブームがあったが、既に市場崩壊。海外での売り方を考える必要がある。

吉田正高

デジタル化により、制作環境が劇的に変化している。その分、学生に教えるべき内容の要求水準が高くなっている。教養をなくせばいい、という話ではない。英語の小文字を書けない人が来たり、やる気を出させるのに1年かかったり。

後編に続く。